2009-03-09

映画「遭難フリーター」 このエントリーを含むはてなブックマーク 

生きることに遭難した彼の出口は、何処にあるのか?
岩淵弘樹・23歳。平日は製造派遣大手の日研総業からキヤノンの工場に派遣され、時給1250円での単純労働、週末は憧れの東京でフルキャストの日雇い派遣。不安定な労働環境から抜け出せない彼は、フリーターの権利を求めるデモに参加し、マスメディアの取材を受ける。しかし、テレビ画面に映し出されたのは、ただただ“不幸で貧しい若者”でしかなかった―。
大手レコード会社に就職した友人に自己責任論調の説教を受け、居酒屋でおっちゃんに「あなたは奴隷なんだよ!」と罵られる。「俺は誰に負けた?俺は誰の奴隷だ?」岩淵は、拾った自転車で夜の東京を疾走する。 
公式ページより引用

3月28日 ユーロスペースでロードショー

予告は 公式ページから。どうぞ。音でます。
http://www.sounan.info/

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関東で生活する岩淵さんの実家は仙台。両親も健在。帰ろうと思えば、帰る場所があるフリーター。
しかし刺激が足りない!という理由で、東京に惹かれている。
この映画の編集作業は仙台の実家で行っい、そのために、キャノンの仕事は辞めたそうです。 そして見事映画が完成。

現在は、WEB制作の会社で働く派遣社員。 (2009年1月現在)

「映画を見てもらうことの気持ちよさを初めて知った」と岩淵さん。賛否はどうであれ、すごく気持ちがよかったと。
確かに、NHKで取材されたときの描かれ方は、ディレクターの求めている「派遣社員」像に、演出されていたし。 そのあたりのことを映画では、NHKのディレクターにぶつけている。NHKのディレクター顔だしで、「遭難フリーター」に出演してます。すご~い。

映画を見た団塊の世代からは、怒られたそうです。
その理由は、なぜ(会社と)戦わないのか!だそうです。

日本の大学生からは、「岩淵さんのようにならないようにします」と、微妙なコメントが。
映画では、岩淵さんの大学の同級生で、正社員としてバリバリ働いている人にも取材。
戦略的に就職活動をした友人は、そこまでやっていたのか~!と、驚くと思います。(少なくとも私は驚きました)(苦笑)

渋谷でのデモにも参加した岩淵さん。
デモをやったって何も変わらないよね、という批判もあるけど、岩淵さんが紹介した、ある高齢の女性の発言は重いです。

「デモをやる目的は、何かが変わる、変わらないだけじゃない。
自分たちの主張を表現することが重要なのです」

岩淵さん、映画上映後のトークでも、すごく腰が低かったです。
きっと、映画を見た人から、嫌なこと、たくさん言われたんじゃないかなと同情しました。エールをおくる人もたくさんいると思いますけど。

私は彼はすごいと思います。
個人の問題を、映画にし、書籍にし、「社会化」してるわけだから。

個人の抱えた問題は、公に共有されなければ、彼の周りの数人にしか共有されない。
その問題が社会性をおびていても、共有されなければ、記録にも残らない。(少なくとも、搾取される側の視点での記録は)
映画という方法を選択し、赤裸々に自分の生活を描くことで、彼の問題は社会化(共有化)されるわけです。

帰る場所があるフリーターである彼のことを批判する人がいるけれど、親元離れて自立することの難しさ。それを可能にしてくれる労働環境の少ない現状こそが、問題視されるべきだと思います。

映画は賛否両論、いろいろな意見が飛び交っていますが、そうした議論のたたき台として、立派に「遭難フリーター」はなっていると思いました。

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http://yummyseaweed.seesaa.net/article/115325130.html
こっちのブログに、もうちょっと長く、映画について書いています!

キーワード:

遭難フリーター


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奥田みのり

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