岸川真『フリーの教科書―生き延びるための読書』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4860420578/tsreclin-22
一見ブックガイドのようだが、そこはひねくれ者の著者のこと。自伝エッセイとも私小説ともつかない多義的な面白さでグイグイ読ませる。
いや、書いてあることは面白いじゃすまされない悲惨なものだ。血が滲み、背筋が凍るような話も多い。しかし、著者の「利口になるな。馬鹿になれ」という言葉が絶えず根底に流れており、それが不思議なほどさわやかな味わいを醸し出している。
坂口安吾「堕落論」の章では涙がポロポロ、シモーヌ・ウェイユあたりで軽い戦慄が走り、最後はすっと力が抜ける。
フリーターや派遣がことさら問題視される現代へのカウンター的な一冊だ。