学生時代のチェ・ゲバラが南米大陸を縦断した実話を描いた映画「モーターサイクル・ダイアリーズ」を見終わったとき、この続きがもし映画化されたりしたなら、絶対に見なくてはならないと思った。圧政や病に苦しむ人々をいたわる純粋な心をもったチェ・ゲバラが、どのようにして革命家の道を歩んだのか、それをスクリーンから体感したいと思い続けていたのだが、今年、それがついに現実のものになったことだけで、とても喜ばしいと感じながら試写会場に入った。
「チェ28歳の革命」そのものは期待どおりの素晴らしい出来だった。だが、最初は脳裏に「モーターサイクル・ダイアリーズ」を描きながら見るのかと思っていたら、映画を見ている最中、ずっと気になっていたのは、昨年公開された若松孝二監督の「連合赤軍、あさま山荘への道程」だった。それはなぜかというと、両作とも同じ革命を志していた者たちを描いた作品なのに、主人公たちから発せられるセリフがまるで違うのである。
「チェ28歳...」の中で、チェは「革命を成功させるには愛が必要だ」と語り、当時アメリカで批判されたスターリン主義など思想めいた話はほとんど出てこなかった。ところが「連合赤軍...」では、愛という言葉は登場人物の中からほとんど出てこず、革命の指導者たちからは「思想」めいた話しか出てこなかった。「愛」はとても抽象的な言葉だが人の心に訴えるものがある。「思想の話」は具体的だが理解されなければ人を同意させることも共感も呼ばない。これは子どもの頃から学ぶことができる環境にあったかどうか、という教育環境の違いは当然あるのだが、言葉ひとつが人の心を動かせることができるのかどうか、両作を見た人ならそれを痛烈に感じるかもしれない。
そして今回の「チェ」の連作は、革命家の人生や革命の意味を思うだけでなく、アメリカ型資本主義が信じられなくなった現代へのメッセージがあるように私は感じている。それは作品の内容が革命を肯定するものではなく、金やモノではなく人に目を向くことが国家は一番大事にするべきであることを、主人公のチェ・ゲバラの言葉や行動から訴えかけているからだ。「モーターサイクル...」や「連合赤軍...」とともに見ると、チェの訴えはさらに深いものになるだろう。メッセージ性ある映画の奥深さを、次の「チェ39歳別れの手紙」からもさらに体感したいと思う。