この映画は、2回観ることをおすすめする。
わたしは、2回目で内容がよく把握できた。
登場人物の数が多いので1回だと関連がよくわからない。
もうひとつ、パリの地図を頭にいれて見たい。
できれば、事前に行っておきたいところである。(笑)
残念ながらわたしはパリに行ったことがない。
訪問経験があれば、より楽しめただろう。
映画の冒頭で登場するのはロラン・ヴェルヌイユ。
ビルの屋上からパリの市街を眺めている。
続いてピエール、レティシア、ジャン、ブノワ、エリーズなど主要人物が次々と映される。
そのあと、彼らの物語が展開。
最後は、タクシーで病院にむかうピエールのシーン。
タクシーの車窓を、ロランやレティシア、ブノワなどが次々と通り過ぎていく。
冒頭で紹介された人物たちが最後に又登場してしめくくられる構成になっている。
なかなかうまい構成である。
内容についてはレビューしにくい。
なぜなら私は、余命の宣告をうけたことがないから。
自分の残り時間が少ないことがわかったらどうするか想像はできる。
が、実体験ではないから本当のところはわからない。
メインキャストのピエールは、致命的な心臓病で余命いくばくもないことを知る。
その彼が、少ない望みをかけて心臓移植を待つまでの日々をどう過ごしたか。
普通の人々には何気ない日常が彼の目にはどう映るのか。
パリの市井の人々の毎日がパッチワークのように描かれつながりあっていく。
自分の命の残り時間が少ないことを知ると、目の前の景色が一変するのだろう。
そのあたりの心境が、次の言葉でよく表わされている。
『これがパリ。誰もが不満だらけで、
文句を言うのが好き。皆、幸運に気づいていない。
歩いて、恋して、口論して、遅刻して、なんという幸せ。
気軽にパリで生きられるなんて。』
しかし、この心境は万人のものではない。
元気にあふれている人ほど共感性は薄いだろう。
そういう視点でみると、ここに描かれている生活は実に平凡で平板といえなくもない。
余命宣告はうけていないが、わたしも残り時間が少なくなっているのは同じ。
『』内のセリフの、パリを東京におきかえて実感することができた。
映像も面白く、印象に残った。
ひとつめは、ピエールがみつけた昔のフィルムのシーン。
そこには、ムーラン・ルージュで踊る彼自身が映っている。
健康で元気に溢れていたときとの落差が印象づけられる。
ふたつめは、フィリップの夢のCGアニメのシーン。
兄のロランから「おまえは平凡だ」と言われて悩むフィリップ。
その悩みが面白おかしく戯画化されていて面白かった。
最後に、音楽がよかった。
何度かくりかえし流れる「シーズ・ザ・デイ」が特に印象的。
ウィルソン・ピケットの「ダンス天国」。
「ダンス天国」にあわせて踊るロランのモンキーダンスは必見である。
構成、映像、音楽ともに面白く、おすすめの一作。