ポール・ニューマンの死に際して、各誌紙やワイドショーでその功績が讃えられているが、監督としても非凡な才能をもっていたことはあまり語られていない。
夫人のジョアン・ウッドワードを主演に起用した監督デビュー作『レーチェル レーチェル』(68)は、田舎町で鬱屈とした日常をおくる独身女性教師の心情をデリケートに描いた佳作で、その年のニューヨーク批評家賞監督賞を受賞している(アカデミー作品賞にもノミネートされた)。
『ハリー&サン』(84)は、ブルーカラーの父親と作家をめざす息子の断絶と和解を描いた小品で、後年の俳優としての代表作『ノーバディーズ・フール』(94)に通じるきめ細やかなヒューマンドラマだった。
そのほかにも、『オレゴン大森林 わが緑の大地』(71)『遠い追憶の日々』(80)といった作品を監督しており、いずれも地味な作風ながら、観る者の心にそっと風を吹き込んでくれるような作品ばかりである。
この機会に広く再見されることを望む。