今回は発売予定のDVDの中から、ヨーロッパの名門少年合唱団に関するドキュメンタリー「ヴォイス・オブ・エンジェルズ–少年合唱団の天使たち-」、そして彼らの声変わりという影の部分を描くフィクション「微熱」の2本が上映されました。
この「ヴォイス・オブ・エンジェルス」は、現在の合唱団員の練習風景と、少年合唱団成立の歴史を、交互に綴る形式をとっています。それはドキュメンタリーなのですが、彼らの美しい歌声に彩られて、ポエティック・フィルムのような雰囲気も感じられました。 天使の声。まさに、彼らの楽器のような美しい歌声は、神様から授かったものかもしれません。プロのオペラ歌手とも、少女の歌声とも違う、細い筒から作られ頭へ抜けるような響き。いつまでも聞いていたかったです。
私が暮らしていたドイツのマンション近くに小学校があり、登校時の生徒たちはキャッキャッと騒ぎ、活発に校庭で遊んでいました。その同世代の少年たちが、伝統的な制服を着て、従順に歌の練習に励む姿を見ると、現代に生きる少年とは思えません。自由時間にサッカーをする普通の少年の面も映されていましたが、私はもう少し、彼らの日常生活や、本音インタビュー、歌や宗教についてどう考えているのかを知りたかったので、その点では少し残念です。おそらく、今回上映のなかった「リジョイス」というパートに、含まれているのではないでしょうか。
また贅沢をいえば、現在の合唱団運営方式を知りたいという気持ちも残りました。これは、半年前に感じた疑問からです。私には20年越しで憧れていたドイツの某少年合唱団があり、その歌声を生で聴く機会にようやく恵まれました。しかし現在の私の目には、その合唱団がやや商業的に傾いていると見えたのです。そんな取材もあったら面白いのにと思いましたが、宗教・伝統を冒涜する内容になる恐れがあり難しいのかもしれません。
いずれにしても、この作品はぜひ音響設備の整った環境で見ることをお勧めします。私は鑑賞後、本物の歌声が聴きたくなり、コンサートを検索し始めました。