2008-12-31

カフカ的不条理のコメディとしての表現--『罪とか罰とか』 このエントリーを含むはてなブックマーク 

これまで正統派女優としてキャリアを築いてきた、注目の16歳・成海璃子がコメディに初挑戦。そのメガホンを取るのは、演劇界で有名なケラリーノ・サンドロヴィッチである。はたして、「23歳の売れないグラビアアイドル」という役はどうなんだろう、鼻血を垂らさせてどうするんだ…と非常に心配だったが、成海璃子は体当たり演技を見せている。基本的には受動的・巻き込まれ型の役だが、端々で見せる表情にコメディエンヌとしての資質を存分に発揮していた。また一日警察署長のコスプレは、璃子ファンには最高♪

成海璃子演じるB級グラビアアイドルのアヤメ(成海璃子)は、久々の雑誌掲載が天地逆になっていたことにショックを受け、持ち金がないのにその雑誌をコンビニで万引きしてしまう。そこから、なぜか一日警察署長をやる羽目になり、刑事として働く元恋人・春樹(永山絢斗)に再会する。この春樹は以前より、愛する対象を殺してしまうという習性があり、しかしいまだに逮捕歴なし。この日の朝も恋人を殺してきたところだった。

ハチャメチャな設定・人々を時間軸をずらしつつ描き、だんだん収束していくというストーリー。 映画という枠に無理に当てはめず、舞台の要素をそのまま持ち込んだようなこの作品は、新鮮であり、会場は爆笑の渦だった。不条理の中にも理があり、正義がある。ラストは、西部劇のようなすっきりした幕引きであった。

ただし、私としては、舞台的テンションについていけない箇所も一部あったことは確か。登場人物が叫ぶシーンは、同じ空気を共有していないと受け入れにくいのではないか。その部分に少し距離を感じた。それも、主人公アヤメの心のモヤモヤと同期した演出なのかもしれない。 素直に笑ったモノ勝ちだろう。

豪華な脇役陣も要注目。特に、アヤメの同僚グラビアアイドルを演じる安藤サクラは、アヤメの想像に水着姿でたびたび登場する。彼女は、憎まれ役にぴったりの個性を放っている。

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