2008-09-16

War Dance このエントリーを含むはてなブックマーク 

御好意で試写を見せて頂いた「War Dance」
ウガンダの「全国音楽大会」
(子供の音楽オリンピック。日本での甲子園のようなものだろうか)」
に出場し、優勝する事を夢見て練習に励むパトンゴの難民キャンプの子供達。
練習シーンの間に、悲惨な過去を本人の淡々としたtalkで映像紹介。

ウガンダは1971年から9年間、独裁者による恐怖政治が敷かれ
度重なるクーデター等で国情が混乱し、
反政府軍と政府軍との闘いとなっている。
反政府軍は子供達を拉致して少年兵にする。
夜間に、安全を求めて教会や学校で宿泊する子供達を連行していく。
日中、畑で拉致される事もある。
少年は親殺しを強要させられ、少女は慰安婦になる事すらある。

反政府軍は北部で活動しており、
安全になった南部と北部の経済格差は広がるばかり。
もともと豊かな大地で農耕を営み、
アフリカにあっては比較的、暮らしやすい場である筈が
反政府軍から政府軍に守られなければ
暮らしていけない紛争地域がウガンダ北部だ。

「全国音楽大会」は、首都カンパラのナショナルテアターで毎年開催され
舞踊、器楽、聖歌合唱の部門に分かれて3日間かけて審査される。
部門別に創作や古典もあり、部族の名誉と誇りをかけて競われるのだ。
20,000校を越す学校が参加を賭ける。
映画では説明されていなかったので不明だが(私の記憶違いかもしれないが)
本選会が全国大会なのだろうか?
ともあれ、3部門で競わねばならない。

紛争地域である北部からの参加は初めてという事で
最初から注目を集める彼ら。
電気も水道もない難民キャンプから、トラックに箱詰めされて
軍に護衛されながら、2日間かけて
首都カンパラに到着した彼らは、都会に目が点。
南部の子供達からは裏切り者呼ばわりもされ
パトンゴの子供達は、傷心、コンプレックス、緊張、
責任感、プレッシャーと戦い、
見事、全パフォーマンスをやってのけるのだ。

映画では3人の子供がクローズアップされている。

ドミニク(14)は木琴の名手、過去に人殺しを強要され罪責感にさいなまされる。
誘拐された兄の消息と、何故、子供を誘拐するのかを軍人に質問した。
「家庭では子供が多い方がいい。軍も同じだ」

ローズ(13)は繊細な声の持ち主。音楽が支えだ。
反政府軍に両親を殺害され、鍋の中に入っていた遺体を見せられた。
キャンプでは叔母の元に身を寄せているが、継子のような辛い扱いを受けている。

ナンシー(14)は父親が殺害され、母親は誘拐された。
親が子供達を庇って殺害された事にトラウマを抱えている。
運良く母親は解放されたが、生活の為、別々に暮らす事を余儀なくされている。
弟妹の面倒を見ながら、ダンスの練習に励む。

2人の音楽の専門家が命を賭して、難民キャンプに到着。
そして2週間の猛特訓が始まる。

結果、器楽最優秀賞ではドミニクが受賞、新しい木琴が贈られ、
彼は学校に寄贈した。後進の教育をも引き受けている。
そして、舞踊のトラディショナル部門で彼らは最優勝賞を受賞。
自信と誇りと生き甲斐を見出した凝縮した1週間。
夢と希望を抱いて、文字通り一生懸命な彼らは
ウガンダの明るい未来を担う子供達だ。

国連からキャンプへの支援物資は1ヶ月に1度。
プライバシーがない茅葺屋根の粗末な家。
電気も水道もない生活。
心のケアが為されていない現状。
けれど、彼らは自分の手で未来を掴む事を知った。

楽器も衣装も手作りで素朴なものだった。
木琴は木と釘と紐で作ったシンプルな作りで、強打する度に外れそうになる。
勿論、木の撥で叩いて音を出すが、マレットが棒切れのようにも見える。
カリンバも素朴な作りだし、竪琴だって木と紐と釘で作られている。
何かの大きな実の殻や、リコーダー、パンフルート、
太鼓はさすがに皮を張ったものだったけど、小さい物。
衣装はユーズド、羽飾りやアクセサリーは手作り、
女の子のスカートは本番前の朝に水を振って手でプリーツを付けたり。
黒い肌に鮮やかな色が映えて綺麗だった。

印象的だったシーンは2つ。

声のトーンを常に落として大人のように話をしていた
ナンシーが、母親と一緒に父親の墓参に行った時の事。
お墓の泥の十字架に突如、突っ伏して自分を責め、大声で大泣きするシーン。

3人の少年達が軍にバレないように早朝、湖に泳ぎに行くシーン。
まだまだヤンチャで、悪ふざけもしたい年頃だ。

どちらも一瞬、子供の素の顔だった。
でも、短時間でその場から切り上げないと身の危険があるから
すぐに自分をコントロールしなければならない…
感情を殺さなければならない…

ウガンダが自立する日は、そう遠くないだろう。
06年には反政府軍と政府軍との和平交渉が始まり、停戦に合意。
国内避難民は徐々に故郷へ帰還している。
現在、国連他の支援団体は人道支援から自立への開発援助へと
移行期を迎えている。
生き地獄を通過した彼らは、柔軟な姿勢と、たゆみない努力で
「未来のウガンダを作っていくのは自分達」と深く心に刻み、歩んでいる。

一方で、シロアリの巣のような日本に未来はあるのだろうか。

世界で何が起こっているのか正確に知る事、
そして自分なりのアクションを起こす事。
常に今を生きる。
さまざまな事を考えさせられた映画だった。

War Dance 11/1~東京都写真美術館
http://www.wardance-movie.com/
テラの活動「ウガンダ北部の現状」
http://www.terra-r.jp/katsudo/uganda_genjo.pdf
ウガンダ駐在員の独り言「子供兵士と小型武器」
http://blog.livedoor.jp/childsoldiers/archives/cat_10006683.html

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gondwana

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