青木ポンチさんの日記
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2012
12月
19
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放射能時代を生き抜く道しるべ――「暗闇の発酵食堂」
自民党・安部ゾンビ政権の復権という結果への脱力、無念、落胆から一夜明け、今は逆に背筋を正す思いでいる。 放射能時代を生きる私たちにとって、その問題を「なるべく先送り、またはなかったことにする」国民的合意に達してしまったことで、僕たち自身が変わらざるを得なくなった。政府に反核、脱原発が期待できない以上、「自分の身は自分で守る」ほかないからだ。 これからの日本社会は、否応なく「放射能へのスタン...
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2012
10月
25
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検索型ドキュメンタリー『モンサントの不自然な食べもの』
遺伝子組み換え問題に切り込んだ作品として話題の『モンサントの不自然な食べもの』。 本来は最重要である本作のテーマ、メッセージの部分はふれずに、ドキュメンタリーとしての手法に着目したい。 本作は、私が知るかぎりでは初となる「検索ドキュメンタリー」だ。 「モンサント」という、悪名高きアメリカの巨大食品会社がある。→遺伝子組み換え食品で世界の胃袋を牛耳るという、グローバル戦略で弱者から搾取しま...
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2012
9月
25
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アリに触発された10人の男たち 『フェイシング・アリ』
モハメド・アリほど、存命中から多くの伝記映画になったスポーツ選手もいないだろう。 もちろん「最も偉大なスポーツ選手」ということに加え、マルコムXにも匹敵する「最も偉大な黒人ヒーロー」という面があるからこそ、だが。 本作はドキュメンタリーですが、アリ本人ではなく「アリと闘った10人のボクサーたち」がアリを語るという、証言方式で進んでいく。 アリほど偉大なボクサーだからこそ効果的な手法だが、...
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2012
9月
03
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無言の世間、野宿者の沈黙 『渋谷ブランニューデイズ』
渋谷の宮下公園、109、そして区役所。いつも通り過ぎる路傍で生活している人々がいる。 私と彼らは何が同じで、何が違うのか。年々、我彼の差は見えなくなっている。生まれながらの野宿者なんて、ごくわずか。彼らは、ほんのちょっぴり不器用で不運なだけの、ありふれた人々なのだ。 彼らはとても謙虚だ。世間に目立たぬよう迷惑をかけぬよう、声をひそめて生きている。映画の主役の宮沢さんのように、声高に自己主張...
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2012
6月
19
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2011年春、たしかに列島は沈黙していなかった
3.11から1年あまり。この間、かつてないほどの「震災」関連映画が生み出され、「原発」関連映画が世に放たれた。 その中には、2011年の日本でしか撮りえない、時代の空気を濃縮した作品も少なくない。 『沈黙しない春』は、まさにそういった作品。この国でかつてないほどの「反原発デモ」といううねりが自然発生的に沸き起こり、結果、浜岡原発停止という政治的判断にまで行き着いた、稀有な1か月半の運動の記...
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2012
6月
12
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「幸せ」という言葉に込められたもの
ブラジル・リオのスラム街に生きる“貧困層”の日常を綴ったドキュメンタリー『私は幸せ』。日本人とレバノン人のハーフという新鋭・梅若ソラヤ監督の作品だ。 同じ街の「海側」(=中産~富裕層)と「山側」(=貧困層)で、住む階層が分かれているという実態に、世界有数の(建前)平等社会・日本とはかけ離れた“可視化された差別”を痛感させられる(日本でもかすかにある「海側=庶民街、山側=高級住宅街」という区分...
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2012
5月
03
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内部被ばくと向き合う医師たちの声を聞いて
発生後1年以上が経ち、福島原発事故は第2ステージに突入したと言える。収束しない炉心溶融はむろん最大の問題だが、静かに蝕みつつある「内部被ばく」の問題とも向き合わざるをえない。 『内部被ばくを生き抜く』は、イラク戦争以来、国内外の内部被ばく問題を追い続けてきた「被曝映像作家」鎌仲ひとみ監督が、3.11後の専門医たちの証言をつなぎ合わせた、「福島原発事故による内部被ばく状況の検証映画」だ。 ...
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2012
4月
15
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『核と傷』について、さらに思うこと
クロスレビューを書きましたが、さらに思うことを。 僕が恐ろしく思うことは、2点あります。 まず、肥田舜太郎氏らがいなくなってしまうこと。 つらすぎる過去に対して、直接体験者以外は「深刻に考えすぎないようにしよう」という心理が働きます。もちろん、四六時ちゅう被害者意識を持ち続ける必要はありませんが、直接体験者がいなくなることは、「つらい体験」を一気に「歴史的なできごと」へと棚上げしてし...
北の大地にて、踊る大衆院選 『ムネオイズム2.0』
政治は舞台であり、政治家は役者である。 なかでも選挙は、最高に絵になる舞台と言えよう。 「史上初!? 衆院選ドキュメンタリー映画」と銘打たれた『ムネオイズム2.0』。 これまた最も役者的な政治家・鈴木宗男が主役である。 彼がまみれた数々の疑惑について。自民党的政治について。ロシア外交について。 映画は政治家・宗男について多くは語らない。ただひたすら“選挙屋”としての彼の一挙手一投...
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2012
3月
19
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『核の傷:肥田舜太郎医師と内部被曝』クロスレビュー:原子力、その厄介なるもの
戦後67年。戦争当時を知る関係者は減る一方です。 とりわけ、広島・長崎の被爆状況を知る医療関係者となると、ほぼ「この方」しかいないとされます。 肥田舜太郎。御年95歳。 軍医時代に広島で被爆した肥田氏は、その後60年以上にわたり、被爆者治療に献身。しかし、その内部被爆の実情が世に伝えられたのは、ようやく1970年代に入ってからだそうです。 そして、戦後66年経ったわが国で起きた、福島原...
映画監督と自治会長の思いが、日本を変える一石に
その時、その場所でこそ成立する表現、効果を発揮する表現というものがあります。とりわけドキュメンタリー映画は、その時代、社会と切り離しては存在しないものです。 『立入禁止区域』はまさしくそんな映画です。 率直に言えば、粗い映像、仰々しい音楽、煩雑な編集など、映画の完成度としては荒削り感は否めません。佐藤監督自身、「作品を撮るつもりではなく、とにかく故郷・双葉町のありのままをカメラに収めた...
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2012
2月
15
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市民運動の本気度が試される時
3.11から間もなく一年。その間、さまざまな論者がさまざまな形で脱原発・自然エルネギー推進を訴えてきました。そもそも大同団結した国民的ムーブメントの起きにくい日本ですが、原発事故からやや時間を置いたことで、やっと「アンチ」に終始しない、政策創造的な試みという第二ステージへ、一段昇ることができた気がします。 その中でも、メンバー的・ポリシー的に注目すべき「グリーンアクティブ」の旗揚げ。中沢新一...
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2011
6月
26
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『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』クロスレビュー:ストリートを跋扈する「たけし軍団」
バンクシーについてはもちろん、ストリートアートについても予備知識のない状態で見たほうが、より脳が揺さぶられるはず。知識ゼロの状態で臨めば、映し出される映像すべてに目をくらまされ、そして、「こうなるだろうな」と予想したことがことごとくスカされ、気付けばバンクシーの仕掛けた罠、いや、イタズラにまんまと乗せられ、“ブレインウォッシュ”されることは間違いない。 そう、この映画は、映画と、アートと、時代と...
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