映画『ラッキー』トークイベントに登壇した戌井昭人氏(右)と佐々木誠氏(左)
ハリー・ディーン・スタントンの最後の主演作『ラッキー』の公開初日イベントが17日、新宿シネマカリテにて行なわれ、 劇作家の戌井昭人氏と映画監督の佐々木誠氏が登壇。愛される俳優 ハリー・ディーン・スタントンについてそれぞれの思いを熱く語った。
本作は、自由で堅物で一匹狼、90歳の頑固じいさんラッキーとちょっと風変わりな街の人々の交流を描いた物語。『パリ、テキサス』『レポマン』『エイリアン』など200本以上の作品に出演したハリー・ディーン・スタントンの人生になぞらえて描いたラブレターともいえる作品。
かねてよりハリー・ディーン・スタントンの大ファンを公言している戌井氏は、本作の感想を聞かれると「昔からいろんな映画で観ていたハリーが全部いる、というような映画でしたね。まるでこれまでの彼の役柄がドキュメンタリーだったかのような。端々にいろんなキャラクターが見え隠れしていた。90歳でこんな映画が制作されたなんてすごいことですよ。撮影だって、こんな喉乾きそうな場所で……それに、デヴィッド・リンチも印象的でしたよね、いつもリンチが人にやらせているような役を自分が演じている」と答え、「ところで、最初にハリーを認識したのってどの作品でした?僕は『レポマン』だったんですけど」と佐々木氏に質問。
佐々木氏は「僕は『パリ、テキサス』ですね。あのころ既に50歳半ばだったんですよね。遅咲きでしたけど、とにかく名作にたくさん出演している。『エイリアン』や『暴力脱獄』『断絶』……『エイリアン』では実は最初にエイリアンに殺された歴史的人物なんですよね!それに、船長役だったトム・スケリットとこの映画で40年ぶりくらいに共演してるんです。それがあの重要な会話のシーンかと思うと、映画ファン的にはたまらないですね……!」と、これまでの作品を踏まえたスタン愛を披露。
映画『ラッキー』より
続けて「メジャーからインディーズ、本当に幅広い作品に出ている。とにかく、みんなに愛されていたんでしょうね。しかしこの映画、戌井さんの作品の世界観と通じるところがありますよね」と佐々木氏が話すと、戌井氏は「ハリーはガンガンいく感じじゃないところがいいですよね、“さびれてる”かっこよさ。『レポマン』は実はエミリオ・エステベス目的で観たんですが、そこでハリーを知って、“おじさんでもかっこいい人っているんだ”と思いましたね。役者役者してなくて……それに、ハリーが表紙を飾る昔の『SWITCH』(1989年12月号)インタビューでこの映画と全く同じこと言ってるんですよね。”孤独と一人は違う”、と」と述べた。
映画『ラッキー』より
最後に佐々木氏は「これが最後の主演作なんですよね。映画人生の集大成が、これまでに自分が演じたキャラクターや、自分の発言や行動、死生観を反映させた、まさに人生の集大成でもあると。それって奇跡みたいなものですよね。ラストカットでのハリーの表情にはとてもグッときましたね」と本作を絶賛し、締めくくった。
映画『ラッキー』は 新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか絶賛公開中。
映画『ラッキー』
新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷、
ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
神など信じずに生きてきた90歳のラッキーは、今日もひとりで住むアパートで目を覚まし、コーヒーを飲みタバコをふかす。いつものバーでブラッディ・マリアを飲み、馴染み客たちと過ごす。そんな毎日の中でふと、人生の終わりが近づいていることを思い知らされた彼は、「死」について考え始める。子供の頃怖かった暗闇、去っていった100歳の亀、“エサ”として売られるコオロギ――小さな町の、風変わりな人々との会話の中で、ラッキーは「それ」を悟っていく。
監督:ジョン・キャロル・リンチ(『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』出演)
出演:ハリー・ディーン・スタントン(『パリ、テキサス』『レポマン』『ツイン・ピークス The Return』)、デヴィッド・リンチ(『インランド・エンパイア』『ツイン・ピークス』監督)、ロン・リビングストン(『セックス・アンド・ザ・シティ』)、エド・ベグリー・ジュニア、トム・スケリット、べス・グラント、ジェイムズ・ダレン、バリー・シャバカ・ヘンリー
配給・宣伝:アップリンク
2017年/アメリカ/88分/英語/1:2.35/5.1ch/DCP
▼映画『ラッキー』予告編
映画『パリ、テキサス』
アップリンク渋谷にて3月30日(金)まで上映
84年度カンヌ国際映画祭パルムドール賞受賞、ロードムービーの最高傑作!
荒野の果てに何があるのか――トラヴィスは歩き続ける。84年度カンヌ国際映画祭パルムドール賞受賞、ロードムービーの最高傑作!記憶を失い、荒野をひとり彷徨う男トラヴィス。4年間失踪し続けた理由とは?息子との絆を取り戻し妻への愛を貫く男が夢見た、”パリ、テキサス”。音楽をライ・クーダー、撮影はロビー・ミュラーが担当、ヴェンダース監督の代表作。84年度カンヌ国際映画祭パルムドール賞受賞。
監督:ヴィム・ヴェンダース
脚本:サム・シェパード
撮影:ロビー・ミュラー
音楽:ライ・クーダー
出演:ハリー・ディーン・スタントン、ナスターシャ・キンスキー、ハンター・カーソン、ディーン・ストックウェル
1984年/フランス・西ドイツ/146分