『ピンク・フラミンゴ』のジョン・ウォーターズ監督が選ぶ2017年の映画ベスト10が、アメリカのアート誌「ARTFORUM」12月号の恒例企画として発表された。
1位はエドガー・ライト監督の『ベイビー・ドライバー』。主演のアンセル・エルゴートと『サタデーナイト・フィーバー』でスターとなった若きジョン・トラボルタをだぶらせながら、「1億ドルを稼いだ、ポップコーンがぴったりのスリラーであり、アートフィルムであり、メカマニアのクラシックだ」と絶賛している。
2位となったのは『I, Olga Hepnarová』。「チェーンスモーカーでレズビアンの22歳の女の子が主人公、実話をもとにしたヒプノティックなモノクロのドキュメンタリー・ドラマ」、1973年のプラハを舞台に、チェコの最後の女性死刑囚オルガ・ヘプナロヴァーを描く作品だ。
5位にランクインしたのは、『キャロル』のトッド・ヘインズ監督が児童書作家ブライアン・セルズニックの原作を映画化した『ワンダーストラック』(2018年4月 日本公開)。聴覚障害を持つ少女と少年の交流を、白黒サイレントと音声つきカラーを織り交ぜ描く作品だが、「シネフィルの子供たちへのIQテスト。もしこの映画が好きなら“おりこうさん”、嫌いだったら“おバカさん”だね」と形容。
また。日本でも今年1月に公開された『エリザのために』は6位。「ベルイマンの強さと“ヘテロセクシャルな”ファスビンダーのユーモアを持ち合わせている」とルーマニアのクリスティアン・ムンジウ監督の才能を評価している。
8位の19世紀後半の英国を舞台にした不倫劇『Lady Macbeth』(原題)については、「『ゲット・アウト』の合わせ鏡のような作品?確かにこの映画では白人のリベラルが勝つんだ。悪意に満ちた面白さを持つ、この十年で最も意地の悪い映画だ」とウォーターズ監督らしい皮肉を込めたコメントを寄せている。
10位は、革の服や口ひげをモチーフにした作風でゲイ・カルチャーのアイコンと呼ばれるフィンランド人のアーティスト、トウコ・ラークソネンの伝記映画『トム・オブ・フィンランド』。ウォーターズ監督は今作がアカデミー賞の外国語映画賞のフィンランド代表に選ばれていることにも触れ、「これを“愛国的ペニスの進歩(patriotic penis progress)”と呼ぼう。受賞してほしい」と書いている。
その他にも、昨年の東京国際映画祭で上映された『ノクトラマ/夜行少年たち』、バリー・レヴィンソン監督が手がけ、ロバート・デニーロとミシェル・フェイファーが出演するHBOのTVドラマ『嘘の天才~史上最大の金融詐欺~』、ウディ・アレン監督の新作『Wonder Wheel』などがセレクトされている。
トップ10のランキングは以下の通り。
【ジョン・ウォーターズ監督が選ぶ2017年映画ベスト10】
1位『ベイビー・ドライバー』
エドガー・ライト監督
※2017年8月 日本公開
2位『I, Olga Hepnarová』(原題)
Tomáš Weinreb & Petr Kazda監督
※日本未公開
3位『The Strange Ones』(原題)
ローレン・ウルクスタイン&クリストファー・ラドクリフ監督
※日本未公開
4位『ノクトラマ/夜行少年たち』
ベルトラン・ボネロ監督
※2016年 東京国際映画祭で上映
5位『ワンダーストラック』
トッド・ヘインズ監督
※2018年4月 日本公開
6位『エリザのために』
クリスティアン・ムンジウ監督
※2017年1月 日本公開
7位『嘘の天才~史上最大の金融詐欺~』
バリー・レヴィンソン監督
※HBO TVシリーズ 日本ではスターチャンネルにて放映
8位『Lady Macbeth』(原題)
ウィリアム・オールドロイド監督
※日本未公開
9位『Wonder Wheel』(原題)
ウディ・アレン監督
※日本未公開
10位『トム・オブ・フィンランド』
ドメ・カルコスキ監督
※「トーキョーノーザンライツフェスティバル 2018」で上映
【ARTFORUM】
FILM: BEST OF 2017 John Waters