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2016-11-26 20:55


フィルメックス コンペ最高賞は「よみがえりの樹」

フィルメックス コンペ最高賞は「よみがえりの樹」

11月27日まで開催されている「第17回東京フィルメックス」の授賞式が11月26日、東京・有楽町朝日ホールで行われ、中国のチャン・ハンイ監督の『よみがえりの樹』がコンペティション部門の「最優秀作品賞」に輝いた。

『よみがえりの樹』は、中国陜西省の山間の村を舞台に、亡くなった女性の魂が息子に憑依するという設定の物語。審査員長のトニー・レインズ氏(映画評論家・映画祭プログラマー)を中心とした審査員団は、『よみがえりの樹』の受賞理由について「映画監督になる前はサッカー選手になりたかったという監督の、オリジナリティーあふれる初の長編映画。中国の片田舎でゆっくりと、しかし痛みを伴いながら村が消えていくという現実を捉えています - しかもそれをセンチメンタルにはさせず、安易なノスタルジーに浸る事もなく淡々と描き出しています。その手法も、男女の性別を超えるという驚くべき展開で。どの場面も強く記憶に焼き付けられます」とコメントしている。

「審査員特別賞」に選ばれたのは、スリランカのサンジーワ・プシュパクマーラ監督『バーニング・バード』。80年代、内戦中のスリランカの村で、密告により民兵に夫を拉致殺害された主婦が、一家を養うために体を売ることを余儀なくされながらも、家族を守ろうと苦心する姿を描いている。スリランカの女性が置かれた過酷な状況を体現した主演のAnoma Janadariの存在感が強く印象に残る作品だ。審査員団は受賞理由のなかで、「本作品は、1980年代後半の残虐な内戦で負った痛みに対する痛烈な叫びです。夫と義母を失い、それでも力を絞り家族を守ろうと苦戦し、挙句の果てに子供たちからの敬意を失ってしまった、とある女性の視点から描かれています。過去に起きた、ほとんど世間でとりあげられることのなかった出来事ではありますが、現代社会において、むしろ切迫した、今日的に意味のあることとして描かれています」と絶賛している。

また、「スペシャルメンション」と、来場した観客の投票によって選ばれる「観客賞」は、韓国のユン・ガウン監督の『私たち(仮題)』が受賞した。10歳の少女の日常と友情を捉えたこの作品がスペシャルメンションに選ばれた理由を、審査員団は「とても繊細且つシンプルな手法で、子ども達のストーリーを語り気持ちを表現しています。特にクローズアップの子ども達の表情は、多くを語り、我々の心を打ちます。今後が楽しみな若い女性映画監督を激励する意味で、『私たち』をスペシャルメンションと致しました」と発表している。

そして「東京学生映画祭」が審査員の選任から賞の決定まで運営する「学生審査員賞」は、マニラのストリート・チルドレンを描いたフィリピンのエドゥアルド・ロイ・Jr監督の『普通の家族』が受賞。審査員の竹中貞人さん(大阪芸術大学卒)、かつりかさん(慶應義塾大学卒)、十河和也(明治大学)さんは受賞理由のなかで「普通ってなんだ。生きてればつきまとう、普通という概念。しかし、この映画を通して、それが主観的でしかないということに気付かされた。愛や、親が子を想う気持ちは万人共通。生まれ育った環境が何であれ、誰もが共通に持つ感情が描かれており、一番世界観にのめり込むことができた。なおかつ、問題提起が含まれるエンターテイメントとしての重要性を感じせられる作品だった。この素敵な映画を通して、自分の中にある普通というものを、改めて考えていただきたい。“ 普通” ってなんだ」と評価している。

[写真:『よみがえりの樹』]



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■東京フィルメックス公式サイト:http://filmex.net/

▼『よみがえりの樹』予告編

▼バーニング・バード』予告編

▼『私たち』予告編

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