▲映画『Junction 48』より © Dig The Movie LLC 2016
イスラエル北部ガリラヤ地方のカルミエル市で、パレスチナのヒップホップ・グループDAMのターメル・ナッファール主演の映画『Junction 48』が来週上映される予定だったが、市が上映を中止すると発表したことを11月3日付のHAARETZ紙が伝えている。
イスラエル人監督ウディ・アローニによる『Junction 48』は、イスラエルからの抑圧と保守的なコミュニティに音楽で闘うパレスチナ人ヒップホップ・アーティストの物語で、今年のベルリン国際映画祭“パノラマ部門”で観客賞を、ニューヨークのトライベッカ映画祭“長編外国語作品部門”で最優秀賞を受賞している。
ローテム・ヤナイ副市長はHAARETZ紙の取材に対し、「ユダヤ人とアラブ人が共存する地域の中で、余計な緊張を生む必要はない」「国家への反動を煽るような人物が撮った映画を、市運営の施設が上映できるわけがない」と答えた。
ヤナイ副市長は、映画は観ていないが、アローニ監督についての記事は読んだという。『Junction 48』はイスラエル文化省からの助成を受けて製作されたが、レジェブ文化相が「イスラエルを中傷するこのような映画に助成金を提供すべきではなかった」と発言したことに対し、アローニ監督はベルリン映画祭での質疑応答で、イスラエルの現政権をファシストと批判した。その後、その発言が「イスラエル政府へ向けてのもので、愛する我が国に対してではない」「憎悪を広げるネタニヤフ首相とは反対に、私の映画は愛と共存を広げる」と語った。
カルミエル市では約1年前にパレスチナ人俳優で監督のムハンマド・バクリ(2002年のイスラエルによるジェニン攻撃のドキュメンタリー『ジェニン、ジェニン』などで知られ、ハニ・アブ=アサド監督『オマールの壁』主演俳優アダム・バクリの父親でもある)のドキュメンタリー映画『ザハラ』が公会堂で上映された際にも、数名の右派活動家が阻止しようとしたという。
今回の上映を主催した"Shared Society"と"Transparent Communities"いう2団体は、「カルミエル市が右派の圧力に屈し上映を禁じたことは、言論統制に手を貸したも同然あり残念に思う。脅しに負けず予定通り上映できるよう努力してもらいたい」と述べている。
本作で主演のほか共同脚本も務めたナッファールは3日の朝、市長に宛てて次のようなメッセージを送った。「カルミエル市の市長様、おはようございます。私はターメル・ナッファールといいます。国際的にも認められた映画『Junction 48』の制作者の一人です。ちょうど同時期に開催されるアラブ圏の国での上映に行くので、いずれにせよ私自身はカルミエル市での上映には参加できません。アラブの国での上映後に、何を話せばいいのか途方に暮れています。本当にカルミエル市で上映が中止になるのかを確認したいです。なぜなら、もし観客から、この映画がイスラエルでどのように受け止められているかを聞かれたら、どう答えればいいのでしょう? この映画をユダヤ人とパレスチナ人のコラボレーションの結晶として人々は観てくれているのに、カルミエル市では上映中止になったと言わなければならないのでしょうか?」
▼映画『Junction 48』予告編
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