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2016-06-27 23:55


「イレイザーヘッド」の影響も「エコール」監督新作

「イレイザーヘッド」の影響も「エコール」監督新作
映画『エヴォリューション』より © LES FILMS DU WORSO・ NOODLES PRODUCTION・VOLCANO FILMS・EVO FILMS A.I.E. ・SCOPE PICTURES・LEFT FIELD VENTURES / DEPOT LEGAL 2015

2004年に公開され、カルト的な人気を博したガールズムービーの金字塔『エコール』の監督であり、ギャスパー・ノエの公私にわたるパートナーとしても知られるルシール・アザリロヴィックが最新作『エヴォリューション』を携えて、今回のフランス映画祭2016のために10年ぶりの来日を果たした。美しくも妖しい少女の世界を描いた前作とかわり、外界から隔絶された孤島で生きる少年の不安定な心理を圧倒的な映像美で描いた今作は、2015年サン・セバスチャン国際映画祭やトロント国際映画祭で上映されるや否や「初期クローネンバーグを思わせる!」「ルイス・キャロル、グリム兄弟、アンデルセンの死体を掘り起こした」等大きな反響を巻き起こし、このたびは待望の日本上映となった。

有楽町朝日ホールにて開催されたフランス映画祭2016で、6月27日(月)14:00よりジャパンプレミア。上映後、ルシール・アザリロヴィック監督が登場し、舞台挨拶を行った。

ルシール・アザリロヴィック監督

今作について、ルシール監督は「『エコール』よりも前から構想はあったので、ずいぶんと長いあいだ企画をあたためていた。一番最初にあったイメージは病院と少年、そして少年と母親の関係性を描くことです。『エヴォリューション』があったからこそ『エコール』があったとも言えます。また、デジタルで撮影した映画ですが、テクスチャー(触覚)にこだわり、あまり鮮明には撮りたくなかった。衣装なども"性的"ではない官能性を意識している」と語った。

映画『エヴォリューション』より © LES FILMS DU WORSO・ NOODLES PRODUCTION・VOLCANO FILMS・EVO FILMS A.I.E. ・SCOPE PICTURES・LEFT FIELD VENTURES / DEPOT LEGAL 2015
映画『エヴォリューション』より © LES FILMS DU WORSO・ NOODLES PRODUCTION・VOLCANO FILMS・EVO FILMS A.I.E. ・SCOPE PICTURES・LEFT FIELD VENTURES / DEPOT LEGAL 2015

客席からの「この作品が直接影響を受けている作品は?」という質問に対しては、「とくに直接影響を受けた映画はないが、太陽が燦々と照っている田舎の村で怖いことが起こるという話は『ザ・チャイルド』(※1976年に制作されたスペインのホラー映画。スペインのとある孤島を舞台に、ある日突然子供たちが大人を惨殺し始めるという内容)、あとはデヴィッド・リンチの『イレイザーヘッド』の影響はあるかもしれません。また、『エヴォリューション』は言葉の映画というよりはシュルレアリスティックな無意識を描いているので、チェコのヤン・シュヴァンクマイエルやユライ・ヘルツ(※ヤン・シュヴァンクマエイルとは学生時代からの親友で、チェコ・ヌーヴェルバーグを担う一人)の影響なども挙げられるかもしれません」と答えた。

また、「理屈ではなく、感じる映画だと思いました」という感想を受けて、「たしかにそのとおりです。もし理屈があるとすれば、それはあくまで抽象的な意味であって、"夢"の理屈で構築されている作品です。私はこの映画が、感覚的、有機的、精神的な映画であって欲しい」と発言。

映画『エヴォリューション』より © LES FILMS DU WORSO・ NOODLES PRODUCTION・VOLCANO FILMS・EVO FILMS A.I.E. ・SCOPE PICTURES・LEFT FIELD VENTURES / DEPOT LEGAL 2015
映画『エヴォリューション』より © LES FILMS DU WORSO・ NOODLES PRODUCTION・VOLCANO FILMS・EVO FILMS A.I.E. ・SCOPE PICTURES・LEFT FIELD VENTURES / DEPOT LEGAL 2015

最後、「これまでのルシール監督の作品(『ミミ』や『エコール』)が一貫して子供の視線から描かれている理由は?」という質問に対し、「10歳から15歳くらいの子供は感受性が発達していて創造力が豊かです。まだ大人に従わなければならない時期だけれども、何か内に秘めた強い感情を持っている。わたしはそういう子供の気持ちというのを表現したかったのです」と答えたルシール監督は、作中に登場する赤いヒトデをモチーフにしたブローチを胸に、チャーミングな笑顔で一礼すると大きな拍手とともに会場をあとにした。




映画『エヴォリューション』ポスター

映画『エヴォリューション』
2016年11月、渋谷アップリンク、新宿シネマカリテほか全国順次公開

少年と女性しかいない、人里離れた島に母親と暮らす10歳の二コラ。その島ではすべての少年が奇妙な医療行為の対象となっている。「なにかがおかしい」と異変に気付き始めたニコラは、夜半に出かける母親の後をつける。そこで母親がほかの女性たちと海辺でする「ある行為」を目撃し、秘密を探ろうとしたのが悪夢の始まりだった。“エヴォリューション(進化)”とは何なのか……?

脚本&監督:ルシール・アザリロヴィック
プロデューサー:シルヴィー・ピアラ、ブノア・カノン
撮影監督:マニュ・ダコッセ
美術監督:ライラ・コレット
出演:マックス・ブラバン、ロクサーヌ・デュラン、ジュリー=マリー・パルマンティエほか
配給:アップリンク
2015年/フランス/81分/フランス語/カラー/スコープサイズ/DCP

▼映画『エヴォリューション』海外版予告編

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