映画『放射線を浴びたX年後2』より ©南海放送
1940年代から50年代にかけて行われたビキニ水爆実験の真相に迫るドキュメンタリー映画『放射線を浴びたX年後2』が、11月21日(土)よりポレポレ東中野にて公開。11月11日に、渋谷・映画美学校試写室にて特別先行試写会が実施され、伊東英朗監督と出演する川口美砂さんが登壇した。
ローカルテレビ局・愛媛の南海放送の製作により、2012年に公開された前作『放射線を浴びたX年後』は、終戦直後の1946年に始まった太平洋上でのアメリカによる核実験について、多くの漁船が、その後100回を超える実験期間中も近海で操業を続けていたという事実について、8年にわたり取材を実施。今作はそれから3年、元漁師へのインタビューなど、各地での継続取材により完成した。
映画『放射線を浴びたX年後2』先行試写会より、伊東英朗監督(右)と川口美砂さん(左)
伊東監督は「前作は200ヵ所以上で上映されましたが、観てくださった70代、80代の方に口をそろえて『第五福竜丸以外の船が被ばくしていたことを知らなかった』と言われました」と、この問題が長きにわたり秘密にされてきたことにあらためて疑問を感じたという。続けて伊東監督は、今作で描くビキニ事件と福島の原発事故とを重ねあわせ、この事実を歴史の闇の中に葬り去らせてはいけないと強調した。
「1954年の3月、第五福竜丸がクローズアップされ、様々なかたちで報道されたことで『放射能ノイローゼ』という言葉も出るほど大騒ぎになりましたが、その年の12月31日に国は安全宣言をして検査を打ち切りました。事件のことはいつの間にか忘れられて、10年後の1964年に東京オリンピックが行われました。
2011年3月に福島の事故が起こって、その年の12月に当時の民主党政権が安全宣言をしたときに、私は『第五福竜丸のときと同じだ』と思いました。同じように、事故の9年後となる2020年、東京オリンピックが開かれます。
現在、日本のテレビや新聞では福島という言葉を見なくなりました。多くの人が『そろそろこんな話ばかりだと気分も滅入ってくるし、幕引きにしたい』と考えている時期が来ていると思います。東京オリンピックとともにこの記憶は消えていってしまう。しかし、被害は決してなくならず、淡々と進行していくのです」
映画『放射線を浴びたX年後2』より ©南海放送
伊東監督は、今後も取材を続けたいと、この問題を追っていくことを力強く語った。「この事件はきちんと解明されて、日本の人をはじめ多くの人が知る必要があります。アメリカの原子力委員会は1952年、既にアメリカの本土が日本の5倍程度の汚染をしていたことを分かっていました。自分たちの国を被爆させ続けているのです。ですから、アメリカ人にもこの事実を知らせていきたい。私はこの映画を怒りで作っています。公海上で勝手に核実験を行い甚大な被害を起こしているにも関わらず、何の責任をとっていないアメリカ原子力委員会に対して謝罪を求めたいのです」
そして、今作で元漁師だった父の死の謎を追う川口美砂さんも、「2013年に室戸で前作を観るまで、第五福竜丸以外のことについては、まったく知らなかった。映画を観た時の衝撃は、今でも覚えている。知られなかったことは、なかったことになってしまう」と、“知ることの大事さ”を訴えた。
映画『放射線を浴びたX年後2』
2015年11月21日よりポレポレ東中野にて公開、
ほか全国順次公開
監督・撮影:伊東英朗
製作著作:南海放送
協力:日本テレビ系列「NNNドキュメント」
2015年/日本/86分カラー
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