▲ルシール・アザリロヴィック監督『Evolution』より
スペインで開催されていた第63回サン・セバスティアン国際映画祭が9月26日閉幕、受賞結果が発表された。
最高作品賞となるゴールデン・シェル賞には、アイスランドのルナー・ルナーソン監督の『Sparrows』が輝いた。『Sparrows』は、レイキャヴィクの母親のもとから、父親の住むアイスランドの田舎へ引っ越しをした16歳の少年をめぐる物語。ルナーソン監督はこれまで『2バーズ』が2009年の第4回札幌国際短編映画祭で上映され、最優秀監督賞を受賞している。また、シルバー・シェル最優秀監督賞には、『The White Knights(Les chevaliers blancs)』を出品したベルギーのヨアキム・ラフォス監督が受賞した。
▲ルナー・ルナーソン監督『Sparrows』より
そして審査員特別賞には、『エコール』(2004年)のルシール・アザリロヴィック監督の11年ぶりとなる新作『Evolution』が選ばれた。今作は最優秀撮影賞にあたる審査員賞も受賞し、本年度2冠となっている。『Evolution』は、女性と少年のみが住む人里離れた島が舞台。母親と暮らす10歳の主人公ニコラが、海を見下ろす病院と島に隠された秘密を探ろうとする物語だ。
▲ルシール・アザリロヴィック監督『Evolution』より
海外メディアでの評価も高く、「無垢で美しくハイブリッド。クローネンバーグの初期の身体恐怖、カール・テオドア・ドライヤーの精神的な輪郭の断片を髣髴とさせる」(PLAYLIST)「魅惑的で危険な誘惑を持つ、クローネンバーグ的おとぎ話」(CINEVUE)「H.P.ラヴクラフトやH.R.ギーガーの頭の中の様なゼラチン状の悪夢だ」(HOLLYWOOD REPORTER)「『エコール』から11年。『Evolution』でルシール・アザリロヴィックの作家そして監督としての才能がさらに進化したことが証明された」(TWITCH)「全てのショットが不気味な美しさの驚異に満ちている。ルシール・アザリロヴィック監督は、ルイス・キャロル、グリム兄弟、アンデルセンの死体を掘り起こしたものをグロテスクな映画彫刻として一つにまとめ、さらに彼女自身の進歩的な光沢が追加された」(LITTLE WHITE LIES)などと評されている。
日本からは、是枝裕和監督の『海街diary』が観客賞を受賞、オフィス北野が製作に関わっているジャ・ジャンクー監督『Mountains May Depart(山河故人)』がヨーロッパ映画を対象とした観客賞を受賞した。
その他、主な受賞結果は以下の通り。
■ゴールデン・シェル賞(最優秀作品賞)
ルナー・ルナーソン監督『Sparrows』
■審査員特別賞
ルシール・アザリロヴィック監督『Evolution』
■シルバー・シェル賞(最優秀監督賞)
ヨアキム・ラフォス監督『The White Knights(Les chevaliers blancs)』
■シルバー・シェル賞(最優秀女優賞)
ヨルダンカ・アリオサ『ザ・キング・オブ・ハバナ』
■シルバー・シェル賞(最優秀男優賞)
リカルド・ダリン、ハビエル・カマラ『Truman』
■審査員賞(最優秀撮影賞)
マニュ・ダコッセ『Evolution』
■審査員賞(最優秀脚本賞)
アルノー・ラリユー、ジャン=マリー・ラリユー『21 Nights with Pattie(Vingt et une nuits avec Pattie / 21 nuits avec Pattie)』
■審査員スペシャル・メンション
フェデリコ・ベイロー監督『The Apostate(El apostata)』
■観客賞
是枝裕和監督『海街diary』
■ヨーロッパ映画観客賞
ジャ・ジャンクー監督『Mountains May Depart(Shan He Gu Ren / 山河故人)』
【サン・セバスティアン国際映画祭公式サイト】
http://www.sansebastianfestival.com/