映画『サンタ』より
東京・国立近代美術館フィルムセンターで6月21日まで開催されていた映画祭「EUフィルムデーズ2015」で、6月18日、リトアニア映画『サンタ』が上映、マリュス・イヴァシュケヴィチュス監督が登壇した。
「EUフィルムデーズ」は、欧州連合(EU)加盟国大使館・文化機関が提供する各国の作品を一堂に上映する映画祭。リトアニア映画『サンタ』のイヴァシュケヴィチュス監督は、1973年リトアニア生まれの42歳で、1996年に短編小説を書き、小説家としてデビューした。その後、長編小説2本とエッセイを書き、1998年以降は脚本を10本以上発表。中にはイタリアやフランス、ロシアで上演されている脚本もあり、劇作家としても活躍。一方で、1999年に短編ドキュメンタリー映画を発表して以後、映画の面白さに目覚め、2013年『サンタ』で初めて長編映画に挑戦した。
2015年6月18日・国立近代美術館フィルムセンターにて、『サンタ』マリュス・イヴァシュケヴィチュス監督
『サンタ』は、リトアニアの首都ヴィリニュスに住むシングルマザーのインガが、7歳の息子を連れてフィンランドのラップランドを訪れるところから始まる、現代のおとぎ話とも言うべき物語。「インガが日ごろ暮しているヴィリニュスとラップランドは、1,500キロ離れていて、気候にも差があります。撮影地は、映画の舞台にもなっているラップランドのロヴァニエミです。サンタクロースたちが暮らす村とされる、ラップランドの観光地・サンタクロース村で実際に撮影しました。撮影許可を得るのは大変でしたが、最終的には納得してもらいました。物語のなかで子どもに聞かせる『物語』に登場する山奥は、気温はマイナス30度の山で、厳しい条件においても撮影を続けました」
映画『サンタ』より
イヴァシュケヴィチュス監督は続けて、撮影時のエピソードとして「白夜やトナカイは自分たちにとってもエキゾチックで、特別なものです。映画の中でサンタに関する看板などが出てきますが、この映画のために置いたのではなく、もともとそこにあったものを使用しました」と語った。
また、物語に登場する「冬戦争」についても次のように歴史的背景を解説した。「日本人の間ではあまり知られていないようですが、1939年から1940年の間にかけてソ連軍がフィンランドに侵攻した戦争で、軍事力では20から30倍の差があったにもかかわらず、フィンランドが勝利しています。リトアニア等の周辺諸国が次々とソ連に侵略され、フィンランドも同じ運命を辿ると思われていたところ、自国を守り通したことは、リトアニア人にとって、大きな意味を持つようになりました。インガの息子ヴィンツィスが、不治と言われる病気と闘う、つまり小さなものが大きなものに立ち向かうことのメタファーとなっているのです」
「EUフィルムデーズ2015」はこの後、京都の京都文化博物館に会場を移し7月1日(水)から7月12日(日)まで開催。『サンタ』は7月5日(日)13時30分より上映される。
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映画『サンタ』
シングルマザーのインガは、7歳の息子を連れて訪れたラップランドでとある出逢いに遭遇する。やがて親子で同地に引っ越すが、話は複雑な方向へ……。人生が突き付けてくる難題を乗り越えるには、愛と希望、そしておとぎ話を信じる力もまた必要だというメッセージが込められている。
監督:マリュス・イヴァシュケヴィチュス
原題/英語タイトル:Santa
2014年/99分/リトアニア/英語(日本語字幕)/DCP
EUフィルムデーズ2015
京都:2015年7月1日(水)~7月12日(日)
会場:京都府京都文化博物館
京都府京都市中京区三条高倉 [地図を表示]
お問い合わせ:075-222-0888
EUフィルムデーズ2015公式サイト:
http://eufilmdays.jp/
京都府京都文化博物館公式サイト:
http://www.bunpaku.or.jp/exhi_film/schedule/