映画『二重生活』より
カンヌ国際映画祭ある視点部門のオープニング作品として上映され、会場を驚きの渦に巻き込んだ、ロウ・イエ監督の新作『二重生活』が2015年1月下旬より公開される。
“愛と孤独に揺れる心”を描き続けてきた映画界の詩人ロウ・イエが、中国大手コミニュティサイトに投稿された夫の浮気に苦しむ女性の話をヒントに作り上げた本作は、第65回カンヌ国際映画祭ある視点部門のオープニング作品として上映その複雑で予測できない人間模様と、時に笑いを誘うほどの大胆な展開で会場を驚きの渦に巻き込み、熱狂的に支持された。
ロウ・イエは2006年に中国ではタブーとなる天安門事件を描いた『天安門、恋人たち』を発表し、本国で5年間の映画製作禁止令を受けるも、禁止処分の最中も作品を発表。多くの話題をよぶ。禁令が解けた2011年に、再び中国本土に戻り撮影されたのがこの『二重生活』だ。
現代中国社会のダブルスタンダードや、一人っ子政策の弊害という問題をも浮き彫りにしつつも、激しい感情のぶつかり合いをロウ・イエ作品独特の漂うようなカメラワークで描いた、一流のエンタテインメント作品となっている。
ロウ・イエ監督は、『パープル・バタフライ』(2002年)以来のミステリーに取り組んだ理由を次のように語っている。
「ミステリーとはいろんな受け止め方ができるものだからね。作家が伝えたいことをしっかり描きながらも、検閲に対応しやすいんだ。もちろんそれが一番というわけではないけれど。実は、初めからミステリーにしようと思ったわけではないんだ。二稿目か三稿目で、現代中国社会を描くにはミステリーがふさわしいんじゃないかと思って、すこしずつその方向になっていった。映画とはそもそも、検閲にとっては『やっかいなこと』を語るものだからね。人の想いや社会の『やっかいなこと』を反映してしまうのが映画なんだと理解してほしいよ」
さらにロウ・イエ監督は、「中国には『政治も二重』という側面がある。中国という社会が昔からずっと二つの顔を持っているから、人々は『二重』であることに馴れているんだよ」と、現代中国の問題を反映した物語であることを明かしている。
(※2014年春、「夫婦のどちらかが一人っ子の場合は二人目の出産を認める」として、中国都市部より順次、一人っ子政策の緩和が開始された)
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「人間を描きたいならセックスは避けられない、時代を描くのに人間を避けることもできない」
『パリ、ただよう花』ロウ・イエ監督インタビュー(2013-11-21)
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『スプリング・フィーバー』インタビュー:
ロウ・イエ監督と脚本家メイ・フォンがえぐり出す〈愛の不自由と政治の不自由〉(2010-11-01)
http://www.webdice.jp/dice/detail/4039/
映画『二重生活』
2015年1月下旬より、
新宿K's cinema、渋谷アップリンクほか
全国順次公開
監督・脚本:ロウ・イエ
脚本:メイ・フォン、ユ・ファン
撮影:ツアン・チアン
編集:シモン・ジャケ
音楽:ペイマン・ヤズダニアン
出演:ハオ・レイ、チン・ハオ、チー・シー、ズー・フォン、ジョウ・イエワン、チャン・ファンユアン、チュー・イン
配給・宣伝:アップリンク
原題:Mystery(浮城謎事)
2012年/中国、フランス/98分/1:1.85/DCP
公式HP:http://www.uplink.co.jp/nijyuu/