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5月25日(日)に閉幕した第67回カンヌ国際映画祭で、長編5作目となる『Mommy』でコンペティション部門の審査員賞を受賞したグザヴィエ・ドラン監督(25歳)。今年の受賞式の中で最も感動的な瞬間だったと評判の、彼の受賞スピーチ全文訳を掲載する。
母国語のフランス語で関係者への謝辞を述べたあと、『ピアノ・レッスン』が自身の映画監督への道を決定づけたことを英語でジェーン・カンピオン審査員長に伝え、最後に同世代の映像作家たちに向けて力強いメッセージを送った。
なお、『わたしはロランス』に続くドラン監督の長編4作目『トム・アット・ザ・ファーム』は今秋日本公開予定。
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■映画『トム・アット・ザ・ファーム』
2014年10月、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷アップリンクほか、全国順次公開
https://www.facebook.com/tomatthefarm.jp
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とても緊張して興奮しているのですが、できる限りがんばって話したいと思います。
この伝説的な会場にいるというだけで圧倒されています。このような賞をいただき、審査員の皆さんには感謝の気持ちでいっぱいです。
先週以来たくさんの愛を受け取って、僕たちは愛するために、そして愛されるために映画を作っていることを、つくづく実感しています。これは『胸騒ぎの恋人』のリベンジです。
ごく手短に、関係者の方々に謝意をお伝えします。プロデューサーのナンシー・グラントさん、パトリック・ロイさん、(MK2の)カルミツ家の方々、(フランスの製作・配給会社の)ディアファナ社のスタッフ、(カナダの)Eワンフィルムズのスタッフ。欠点だらけの僕を理解してくれて、一緒に仕事をしてくれたことは、この上ない喜びでした。
僕の映画を信じて、さまざまな問題から僕を守ってくれた(カンヌ映画祭総代表の)ティエリー・フレモー氏と、(カンヌ映画祭事務局の)クリスティアン・ジュヌ氏の友情にも謝意を送ります。
俳優でありクリエイターでもある、アンヌ・ドルヴァルさん、スザンヌ・クレマンさん、アントワーヌ・オリヴィエ・パイロン君。あなたたちを尊敬し愛しています。
そして僕の家族と友人たちにも感謝します。ほかにも名前を挙げ忘れている御礼すべき方たちがたくさんいると思います。
この場をお借りして、ジェーン・カンピオン審査員長にお伝えしたいことがあります。フランス語は自分の母国語であり世界一美しい言葉だと思っていますが、皆さんに聞いていただきたいので英語で話します。
『ピアノ・レッスン』は僕が16歳のときに、義母に「何を観ればいい?」と訊いて初めて観た映画です。あれを観て僕は、魂と意志と力を持った美しい女性を──被害者や被写体ではない女性を、映画で描きたいと思ったのです。あなたの『ピアノ・レッスン』は僕の人生を決定づけた映画の1本です。今この壇上であなたの前に立っていることに深い感慨を覚えます。
それから、自分と同世代の人たちに向けて、短くお伝えしたいことがあります。僕はまだ若いですが、過去数年このクレイジーな映画ビジネスの世界にいた自分の経験から話します。
誰しも自分が好むことをする権利があるにも関わらず、あなたのやることを嫌悪し、あなたを忌み嫌う人たちもいるでしょう。でも夢を持ち続けてください。そうすることで一緒に世界を変えられるからです。人々を感動させ、笑わせ、泣かせることで、人々の意識や人生を、ゆっくり変えていくことができるのです。政治家や科学者だけでなくアーティストも世界を変えられるのです。
望むことに限界はなく、夢を抱き、挑戦し、努力し、あきらめなければ、どんなことでも実現可能なのです。僕がこの賞を受賞したことこそが、その証にほかなりません。
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★CANAL+の動画より
http://www.canalplus.fr/c-cinema/c-festival-de-cannes/pid6996-ceremonies-cannes-2014.html?vid=1076433