先月末、米国の14歳の少年が、政府の書類にデフォルトで使われている書体Times New Romanを、それより細いGaramondに変えるだけで、数百万ドルのインク代節約になると米政府に提言し話題になった。
http://www.cnn.co.jp/usa/35045853-3.html
このニュースと同時期の3月29日に、英国の広告代理店グレイ社と大型文具チェーン店のライマン社が共同で、インク使用量が従来のセリフ書体(Arial、Times New Roman、Georgia、Verdana等)より3割少なく印刷できるという、環境に優しいフリーフォントの提供を始めた。
◆Ryman Eco - The world's most beautiful sustainable font
http://www.rymaneco.co.uk/
“ライマン・エコ”というこのフォントのデザインを手がけたのは、モノタイプ社(Times New Roman、Gill Sans、Arialなどを送り出した老舗フォントメーカー)の書体デザイナー、ダン・ラティガン氏。ライマン・エコは数本の線でできており、ディスプレイ・サイズでは線の溝が見えるが、10~8ptになるとインクのにじみで普通のセリフ書体になる。また、GaramondやCentury Gothicなどのの細いフォントが、6pt以下になったときに読みづらくなるのに比べ、小さな文字でも視認性が下がらないよう設計されている。
グレイ社のチーフ・クリエイティブ・オフィサー、ニルス・レオナード氏は、オランダのSPRANQ社が2008年にリリースしたエコフォント(http://www.ecofont.com )などの先駆例に比べ、ライマン・エコはインク使用量がはるかに少なく(全世界で採用されれば年間1500万バレルの石油の節約になるという)、またデザイン面においても勝っていると述べている。そして、印刷物そのものを減らさなければエコにはならないという批判に対し、「われわれが試みたのは、人々が消費を減らすことについて考えるきっかけになるような、実験的で建設的なツールを創ること」と語っている。
◆英国“CreativeReview”の記事
http://www.creativereview.co.uk/cr-blog/2014/april/ryman-eco