イントロダクション
今年5月、カンヌ国際映画祭の監督週間で特別上映作品として上映された『ストーンズ・イン・エグザイル~「メイン・ストリートのならず者」の真実』。ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、チャーリー・ワッツがエグゼクティブ・プロデューサーに名を連ねる本作は、後にストーンズの最高傑作と称されるダブル・アルバム『メイン・ストリートのならず者』の録音風景が、残された写真とホーム・ムービーそして本人たちのナレーションによって構成されたドキュメンタリー作品だ。
1971年ローリング・ストーンズはイギリスから生活の拠点を南仏コートダジュールへ移した。その理由が税金逃れといういささかロック・ミュージシャンとしては格好の悪いことだったが、収入の93%と言う税率は本人たちにとっては切実な問題だった。そのコートダジュールにストーンズは、録音機材を設置したトレーラーを持ち込み、ゴシック建築のヴィラの地下をレコーディング・スタジオとして録音を始めたのだった。春から夏へかけての9ヵ月ほどの期間、別荘にはメンバー以外にも様々な人物が常に滞在する状況でその生活模様は、当時のキース・リチャーズの恋人だったアニタ・パレンバーグによると「セックス、ドラッグ&ロックンロール。正しくは、ロックンロール、ドラッグ&セックスだったわ」。
ミックから直接電話を受けて「ストーンズのドキュメンタリーを撮ってくれないか」と依頼された『スコット・ウォーカー 30世紀の男』で知られるスティーヴン・キジャック監督には、ストーンズの未公開のアーカイブにアクセスする権利が与えられた。キジャック監督は、その膨大な写真とフッテージを精査し、コートダジュールでの秘められた録音風景をまるでその場に立ち会ったかのように構成していった。そこにはキースとアニタがくつろぐ姿や、ミックとビアンカのサントロペでの結婚式、キースとミックのブルースセッション、そしてまさにローリング・ストーンズの"ロックンロール"が生まれる瞬間が映し出されているのだった。
その別荘での録音を終え、音源はアメリカに移され、ロスアンジェルスのスタジオでミックスが行われ、ロバート・フランクの写真がカバーとなったダブル・アルバムとして1972年にリリースされた。映画ではその後に行われた全米ツアー『レディース・アンド・ジェントルメン』の模様が、ドラッグシーンにより封印されている『コックサッカー・ブルース』からのフッテージを使いクライマックスとなっている。
ストーンズは時代を映し出す指標なんだ。
当時は、ラブ・アンド・ピース、ヒッピー、アシッドそんな時代だった。
コッポラは『地獄の黙示録』を撮っていた。
“60年代”はもう機能してなかったので、体制を吹き飛ばすか逃げるしかなかった。
── ドン・ウォズ(ローリング・ストーンズ / プロデューサー)
監督:スティーヴン・キジャック
エグゼクティブ・プロデューサー:ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、チャーリー・ワッツ
出演:ミック・ジャガー、キース・リチャーズ、チャーリー・ワッツ、ビル・ワイマン、ミック・テイラー、ロニー・ウッド、ボビー・キーズ、アニタ・パレンバーグ、ジミー・ミラー、アンディ・ジョンズ、ドミニク・ターレ、マーティン・スコセッシ、ジャック・ホワイト、ドン・ウォズ、カレブ・フォロウィル、ベニチオ・デル・トロ、ウィル・アイ・アム、シェリル・クロウ 他
提供:株式会社ヤマハミュージックアンドビジュアルズ
配給:アップリンク
アメリカ・イギリス/2010年/61分/カラー/ドルビー・デジタル・ステレオ