骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2008-10-07 17:04


なぜ人々はこんなにもフェルメールに魅せられるのか?名画『合奏』をめぐるトークショー その2

映画『消えたフェルメールを探して/絵画探偵ハロルド・スミス』9/27の公開に合わせて来日した監督、レベッカ・ドレイファス氏との 対談第2弾は、作家の有吉玉青さん!
なぜ人々はこんなにもフェルメールに魅せられるのか?名画『合奏』をめぐるトークショー その2

映画『消えたフェルメールを探して/絵画探偵ハロルド・スミス』公開に合わせて来日した監督、レベッカ・ドレイファス氏とスペシャルゲストとの対談を行いました。今回は第二弾、9/28に行われたレベッカ・ドレイファス監督×有吉玉青氏のトークの一部をご紹介します。第一弾、9/27レベッカ・ドレイファス監督×岡部昌幸氏のトーク記事もあわせてご覧ください。


9/28(日)
ゲスト:レベッカ・ドレイファス監督×有吉玉青氏(作家)

── ファースト・フェルメール

有吉:イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館に初めて行ったのは1990年。まだそのときは本物のフェルメールを見たことがなかったんです。フェルメールの『合奏』があるはずなのに、探したけどどこにもない。それで美術館の人に聞いたら「盗まれました」と。冗談かと思いましたよね。それが最初のフェルメール。会えなかったけれども。

レベッカ:その後、有吉さんがフェルメールを求めて世界中を旅するというところに非常に興味を覚えます。私は18歳のころ、イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館を初めて訪れ、とても感激しました。『合奏』と、美術館の両方にとても魅せられたんです。 私は、『合奏』がなくなってしまったから、この映画を撮ることになりました。 私たちそれぞれの「はじまり」が『合奏』だったということ。『合奏』がなくなったことが、多くの人の情熱をひきだす、感情を揺り動かすということ。私たち二人だけではなく、世界中にそのような人がいるんです。そこがとても興味深いと思いました。

── イザベラ・スチュワート・ガードナーという女性

レベッカ:美術館を作ったガードナー夫人は、フェルメールだけでなく美術品そのものに心奪われ、熱い情熱をかけてそれらを集め、この小さく心地いい美術館を作りました。そんな彼女の個性が色濃く出ているのがこの美術館です。ですからここを訪れた人はこれを作った人はいったいどんな人なんだろうと思わずにはいられないんです。

有吉:映画の中に「ガードナー夫人が生きていたら、絵はとっくにみつかっているだろう」というセリフがありましたが、本当にそうだろうと思いました。彼女は自分の子供を育てるかのようにしてこの美術館を作り上げた。子供を亡くした悲しみがあったわけですが、自分の子供のように美術品を愛したというその情熱にも非常に心を打たれました。 レベッカ:彼女はそれこそ「思い込んだら山をも動かす」というタイプの女性ですので、映画の中にも本当のことを言っているのかわからない人がたくさん出てきますが、彼女をだませる人は誰もいないんじゃないかと思います。

── フェルメールの魅力とは・・・?

有吉:よく、フェルメールの魅力はなんですかと聞かれるんですが、「一言で言えないから観てください」と言うしかありません。フェルメールは言葉を超えています。 映画の最後に出てくる学芸員のフランクの言葉。「サージェント作のガードナー婦人の肖像画から語りかけられた」。これが本当に「絵を見る」ということだと思いました。この体験が彼の人生まで決めてしまったんですね。 フェルメールの絵をただぼーっと見ていると、絵と自分が通じ合っている気がしてきます。それが絵が与えてくれる至福の時間です。

レベッカ:この美術館はまさにそういう経験をしてもらいたくて作られた美術館といっても良いと思います。それを象徴的にあらわしているのが、美術館に行くとよく絵の横にある「何年に何処で書かれたこれこれこういう作品で0」という解説をつけないように指示したという話。解説があると正直な自分の印象が阻害されてしまうので。小さなスペースで、一人で芸術作品と対峙できるというのを大事にしていたと聞きました。


ゲスト紹介

レベッカ・ドレイファス

NYに生まれ育ち、少女のころガードナー美術館で『合奏』に魅せられ、絵を見るためにボストンに通い詰める。SUNYのパーチェイス・カレッジで映画の学士号を取っており、彼女の最初の受賞長編作『Bye-Bye Babushka』は、ニューヨーク及び ロサンジェルスの批評家たちの絶賛を浴び、合衆国のPBSを含む、世界25カ国以上のテレビ局で放映された。二つの短編『The Waiting』と 『Roadblock』も、世界中で賞を受け、国内外でテレビ放映されている。現在彼女が取り組んでいるのは、ロマンチック・コメディだ。

有吉玉青

1963年東京都生まれ。作家。フェルメール作品を求めて欧米各地を訪ねる旅についてのエッセー『恋するフェルメール 36作品への旅』(白水社)のほか、『身がわり 母・有吉佐和子との日日』(新潮社 坪田譲治文学賞)、『月とシャンパン』(光文社)、『風の牧場』(講談社)など著書多数。


作品解説

消えたフェルメールを探して

一体誰が盗んだのか?フェルメールの名画『合奏』をめぐり、絵画探偵、美術収集家、美術品泥棒、フェルメール愛好家・・・それぞれの想いが交錯する美術/探偵ドキュメンタリー!

1990年に、ボストンの美術館からフェルメール作『合奏』ほか12点が盗まれた。フェルメール作品は全部で30数点と少ないため、被害総額はアメリカ美術品盗難史上最高額5億ドルにもなったという。10年以上経っても事件が解決されないことに業を煮やした監督は、美術の世界では高名な絵画探偵ハロルド・スミスとともに事件を追う。事件に関わった者として、有名な美術品泥棒、映画『ディパーテッド』のフランク・コステロ役のモデルと言われている、アイリッシュマフィアのボス、ホワイティ・バルジャー、そして米国上院議員、元大統領などの名があげられ、日本人コレクターによる依頼だという説もあったという。「合奏」に魅せられた人々と、事件の顛末、そして生涯をかけて『合奏』を追った絵画探偵ハロルド・スミスのドキュメンタリー!


『消えたフェルメールを探して / 絵画探偵ハロルド・スミス』

監督・撮影: レベッカ・ドレイファス
脚本:: シャロン・ガスキン
出演:ハロルド・スミス、グレッグ・スミス
2005年/アメリカ/83分
配給:アップリンク
字幕監修:朽木ゆり子


イベント情報

2008年10月18日(土)
上映+トークイベントあり!
開場/開映:14:00/14:30
ゲストは公式サイトにて発表いたします。

会場:アップリンク
入場料は、通常の映画料金に準じます。
一般:¥1,500/学生¥1,300/シニア¥1,000

【関連リンク】
『消えたフェルメールを探して / 絵画探偵ハロルド・スミス』公式サイト
イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館
FBIで現在も公開されている手配書

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