骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2020-09-03 15:00


オバマ絶賛!不確実な現実を生き抜くスケーターたち『行き止まりの世界に生まれて』

アカデミー賞、エミー賞のドキュメンタリー部門でWノミネート!リュー監督語る
オバマ絶賛!不確実な現実を生き抜くスケーターたち『行き止まりの世界に生まれて』
映画『行き止まりの世界に生まれて』© 2018 Minding the Gap LLC. All Rights Reserved.

2018年、第91回アカデミー賞&第71回エミー賞にWノミネートされ、オバマ大統領がその年の年間ベストに選出したドキュメンタリー映画『行き止まりの世界に生まれて』が9月4日(金)より公開。webDICEではビン・リュー監督によるメッセージを掲載する。

ビン監督は、イリノイ州ロックフォードで友人のキアー、ザックとともにスケートボードに熱中していた。当時からスケートビデオを撮り続け映画監督を志ざすビンは、スケートボード仲間、そして自身が抱える葛藤を作品にしようと記憶を手繰り寄せながら友人と家族にカメラを向け、仲間3人がそれぞれ両親からの暴力の被害者であったこと、そして「ラストベルト」と呼ばれる鉄鋼や石炭、自動車などの産業が衰退した地域の貧困や分断を描いていくと。ビン監督はインスピレーションを受けた作品として『ガンモ』『KIDS/キッズ』などを挙げているが、監督個人の過去と葛藤を掘り下げ、普遍的な問題提起へとスタイルはサラ・ポーリー監督の『物語る私たち』やヤンス・フォード監督『ストロング・アイランド』を彷彿とさせる。ビン監督は「スケートボードを通した3人の少年の友情」といった美辞麗句よりも、現実から抜け出すためにスケートボードが必要だったことを観客に突きつける。


「『ガンモ』、『ウェイキング・ライフ』、『KIDS/キッズ』、『スラッカー』といった、不確実な世界で育つことを描きながら、どこか希望があって、僕の混沌とした子ども時代を意味のあるものにしてくれた物語の数々からインスピレーションを得ました」(ビン・リュー監督)


父親の不在や確執、暴力によって広がる影響

『行き止まりの世界に生まれて』はスケートビデオとして始まり、スケートボーダーの友人たちが、自分の親との関係について語る中で、パーソナルな真実を探究していく映画へとなっていきました。

映画『行き止まりの世界に生まれて』© 2018 Minding the Gap LLC. All Rights Reserved.
映画『行き止まりの世界に生まれて』© 2018 Minding the Gap LLC. All Rights Reserved.

僕が8歳のとき、シングルマザーだった母がロックフォードに仕事を見つけ、引っ越しました。そこで母は、身体的にも精神的にも暴力をふるう男と再婚し、17年間一緒にいました。継父はすぐにかっとなり、気まぐれに暴力をふるったので、僕は世界を因果関係に欠けるものとして認識していました。13歳で、家から逃れるようにスケートボードを始めました。たくさんのアザ、骨折、苦労してできるようになった技の数々を経て、僕は自分の痛みに対してのコントロール感覚を取り戻し、物事を理解していきました。何よりも大切なのは、家にいるよりも、アウトサイダーの集団の中にいる方が何倍も幸せだと気づいたことです。僕たちは数えられないほどの時間を共にして、自分たちの家族を作り、スケートビデオを通して自分たちの現実を作っていきました。

映画『行き止まりの世界に生まれて』© 2018 Minding the Gap LLC. All Rights Reserved.
映画『行き止まりの世界に生まれて』© 2018 Minding the Gap LLC. All Rights Reserved.

20代にかけて、僕はシカゴへ引越し、教師になるべく勉強をはじめました。卒業後、僕は撮影監督組合の撮影部で働き、その傍らショートドキュメンタリーを作っていました。当時は、自分の暗い過去から逃げ切って、もう振り返る必要なんてないと感じていました。でも、無視できませんでした。多くの仲間たちが薬物の犠牲になり、刑務所行きになり、中にはそれよりもひどい場合もあることを。「Look At Me」というスケートドキュメンタリーを制作中、僕は、メンタルヘルスや人間関係、子育てのスタイルに何かしら悪影響を与えている、父親の不在や確執、父親からの暴力のパターンに気がつきました。それを次のプロジェクトのテーマにしようと決めました。

映画『行き止まりの世界に生まれて』© 2018 Minding the Gap LLC. All Rights Reserved.
映画『行き止まりの世界に生まれて』© 2018 Minding the Gap LLC. All Rights Reserved.

セントルイスからフェニックス、ポートランド、その他たくさんの場所でスケートボーダーたちを撮影する中で、1人のインタビューが突出していました。僕の故郷ロックフォード出身の16歳のアフリカ系アメリカ人の少年、キアー。彼は今まで父親との関係について話したことがなく、初めてのインタビューのときはセーターの袖をいじっていました。彼が父親の暴力について話してくれたとき、僕は胸を締め付けられました。 その後4年にわたり、キアーと、カリスマ性のある人物で、父親になろうとしている23歳のザックを追いました。『ガンモ』、『ウェイキング・ライフ』、『KIDS/キッズ』、『スラッカー』といった、不確実な世界で育つことを描きながら、どこか希望があって、僕の混沌とした子ども時代を意味のあるものにしてくれた物語の数々からインスピレーションを得ました。

映画『行き止まりの世界に生まれて』© 2018 Minding the Gap LLC. All Rights Reserved.
映画『行き止まりの世界に生まれて』© 2018 Minding the Gap LLC. All Rights Reserved.

明確になったことは、暴力と、暴力によってクモの巣のように広がる影響は、大部分で永続されてしまうということです。これらの問題は文字通りにも比喩的にも、扉の向こうに留まってしまうから。僕の願いは、『行き止まりの世界に生まれて』の中で扉を開いてくれた登場人物たちによって、同じようなことで苦労している若い人々が勇気をもらい、彼らがその状況を切り抜けられること、生きて、自分たちの物語を伝えられること、そして自分たちの力で人生を作っていけるようになることです。

(オフィシャル資料より)



ビン・リュー(Bing Liu)

1989年生まれ。8歳になるまでに、中国、アラバマ、カリフォルニア、イリノイ州ロックフォードと母親と共に移動した。10代からスケートビデオを作り、撮影、編集スキルを磨いた。19歳のとき、シカゴへと引っ越し、フリーランスのグリップ(撮影助手)として働きながら、イリノイ大学文学部で文学士号を取得、極めて優秀な成績で卒業。23歳で、国際映画撮影監督組合(International Cinematographers Guild)に入り、スパイク・リー、ウォシャウスキー姉妹の作品に携わるなど、劇映画やテレビシリーズの撮影部で働く。2018年に、『行き止まりの世界に生まれて』で監督デビュー。サンダンス映画祭ブレイクスルーフィルムメイキング賞を皮切りに国内外で59の賞を受賞し、アカデミー賞、エミー賞のドキュメンタリー部門でWノミネートの快挙を成し遂げる。米ヴァラエティ誌の「注目すべきドキュメンタリー監督10人」選出。アメリカの教育制度における人種間の不平等を検証した、スティーヴ・ジェイムス製作ミニシリーズ「America to Me」の3話を監督している。




映画『行き止まりの世界に生まれて』© 2018 Minding the Gap LLC. All Rights Reserved.

映画『行き止まりの世界に生まれて』
9月4日(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

監督・製作・撮影・編集:ビン・リュー
出演:キアー・ジョンソン、ザック・マリガン、ビン・リューほか
エグゼクティブ・プロデューサー:スティーヴ・ジェイムスほか
英題:MINDING THE GAP
配給:ビターズ・エンド
93分/アメリカ/2018年

公式サイト


▼映画『行き止まりの世界に生まれて』予告編

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