女優オリヴィア・ワイルドが長編監督デビューを果たした映画『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』が8月21日(金)より公開。webDICEではオリヴィア・ワイルド監督のインタビューを掲載する。
アメリカの青春映画で定番のテーマとなるスクールカースト(クラス内のヒエラルキー)だが、この作品でワイルド監督は、エイミーとモリーの「バディ」的関係を中心に、彼女たちが落ちこぼれではなく、成績優秀な優等生2人が勉強のために犠牲にしてきた時間を取り戻すために卒業パーティーで大騒ぎしようとする、という設定にすることにより、思春期の普遍的な感情を新たな視点で捉えている。また、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのミュージック・ビデオの監督を手掛けた経験があるワイルド監督だけに、バラエティに富んだ音楽の使い方にも要注目だ。
「40年前に⾼校⽣だった⼈にも⾃分の⾼校⽣活を思い出してほしいの。『⾼校⽣活は⼈⽣における特別な時間だ。なぜならその時間はすぐに過ぎてしまうから』って。⾼校⽣活の⼀瞬⼀瞬やそこで築く⼈間関係には⼤きな意義があるのよ」(オリヴィア・ワイルド監督)
▼オリヴィア・ワイルド監督インタビュー映像
⾼校⽣活は命がけ
──この作品のインスピレーションはどこから?
⼥⼦⾼⽣が主⼈公のガールズ・ムービーにするつもりは⽑頭なかった。脚本を読んで最初に思ったのは、⾼校⽣活は命がけだったということ。⾼校⽣の時は、学校⽣活が⽣きるか死ぬかの世界に感じるもの。私はこの映画を、パワフルなアクション映画の監督と同じアプローチで作りたかった。固い絆で結ばれたコンビが命がけで事件を追う刑事バディもの、『ビバリーヒルズ・コップ』(84)や『トレーニング デイ』(01)、『リーサル・ウェポン』(87)のような作品、全然違うキャラクターの刑事同⼠が厳しい状況の中で⽀え合い補い合うような、何があろうと助け合う刑事2⼈組が出てくる作品のように感じてほしかったの。
映画『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』オリヴィア・ワイルド監督 © 2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.
──主人公である親友同士、モリーとエイミーというキャラクターについては?
この映画は、ダサい⼥の⼦2⼈がイケてるクラスメートを真似しておしゃれしたり、⼈気のある男の⼦を彼⽒にしようとする話じゃないし、異性を射⽌めることや空気を読むことばかり頑張る⼥の⼦の友情を描いた物語でもない。⼤⼈になる過程で、多くの少年少⼥はこの頃に初めて親密な友情関係を築く。その友情は強い絆で結ばれ、みんなこう思い返すのよ。「あの友情が今の私を形作り、⼈間関係の基礎を築いたのかもしれない」ってね。
映画『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』© 2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.
彼⼥たちは⼀旦別れてお互いを⾃由にする必要がある。エイミーとモリーはまるで2⼈で1⼈のように⼀緒にいたけれど、離れてそれぞれの道を進む時が来たのよ。この⼀夜の騒動は、彼⼥たちの⼈⽣においてとても貴重で楽しくて、ワクワクするような冒険の時間なの。
この映画を観て、⾃分が相⼿をどのように⾒ているか、いかに彼らや⾃分⾃⾝のことさえも偏った⾒⽅をしているかということに気づいて欲しい。今よりもう少し相⼿にシンパシーを抱き、彼らの複雑さを認められるようになるきっかけにしてほしい。今まさに⾼校に通っている⼈にも、40年前に⾼校⽣だった⼈にも⾃分の⾼校⽣活を思い出してほしいの。「⾼校⽣活は⼈⽣における特別な時間だ。なぜならその時間はすぐに過ぎてしまうから」って。⾼校⽣活の⼀瞬⼀瞬やそこで築く⼈間関係には⼤きな意義があるのよ。
映画『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』© 2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.
ダサい⼥の⼦とイケてる男の⼦という固定観念を壊す
──キャスティングについて教えてください。
学園もの映画だと、ダサい⼥の⼦とイケてる男の⼦が出てくるという固定観念がある。でも、私はそれとは違う要素を持つ⼈たちを求めていて、キャスティング・ディレクターのアリソン・ジョーンズはその特定の資質を持った役者をリストアップしてくれた。すでに有名な俳優は誰もいなかった。若い彼らはそれぞれのキャラクターを既存の型とは違う観点から⾒て、フレッシュな個性を⾒せるチャンスをものにしようとしていた。これこそが私が求めていたキャスティングよ。
──フェミニストで、すでにカミングアウト済のエイミー役にケイトリン・デヴァーを起用した理由は?
ずっと彼⼥のファンだったの。『ショート・ターム』は衝撃的だったし、『ステイ・コネクテッド~つながりたい僕らの世界』の彼⼥は最⾼だった。ケイトリンは何か特別なものを持っている。エイミーと同じく、彼⼥も内側に弱い部分を持っている。⾒事な笑いの間のセンスと鋭いウィットと⼀緒にね。
映画『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』© 2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.
──モリー役のビーニー・フェルドスタインは?
ビーニーには⽣まれ持った思いやりがあり、演じるキャラクターを輝かせる⼒を内に秘めているの。彼⼥が作り上げたタフなモリーの奥深くには、傷つきやすい⼀⾯を感じることができる。モリーはとても愛情深い⼈間だけれど、どう表していいかが分からない。なぜなら、彼⼥は⾃分には愛される価値がないと思っているから。
──ジュラシック5、アラニス・モリセット、ライなどバラエティに富んだアーティストの楽曲を用いた音楽について教えてください。
⾃分の感情を発⾒し、⾃分を表現する⽅法を知る⻘春時代の⾳楽体験を反映したものにしたかったので、幅のある選曲が必要だった。このプレイリストには、私たちの映画の規模では使えないような⾼額の権利料がかかる曲が何曲か⼊っている。でも、通常の交渉ではなく、⼈間らしい場所でアーティスト間の⼈間同⼠のやりとりをするよう⼼がけたことで、レーベルや⾦額といったものから離れることができた。「私たちが信じるものに参加したい⼈はどうぞ、どうやってみんなで⼒を合わせて完成させようか?」といったやりとりになっていったの。
映画『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』© 2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.
映画を監督し、そこに⾳楽をつける経験は、映画が作られる前からその曲を作っていたアーティストたちとのちょっと変わった交流になった。彼らミュージシャンのDNAも映画の中に現れているように思えて、とても誇らしい気分よ。私は彼らのことをコラボレーターだと思っていて、映画業界によくある映画にパワーをもたらすために恣意的に楽曲を使うのとは違う。この物語を形作るために、アーティストと協働する機会だと思っていたわ。
(オフィシャル・インタビューより)
オリヴィア・ワイルド(Olivia Wilde)
1984年、アメリカ、ニューヨーク州出身。プロデューサー兼ジャーナリストの母と、ハーパーズ・マガジンなどに携わるジャーナリストの父の間に生まれる。2004年『ガール・ネクスト・ドア』でスクリーンデビュー。「The OC」(03-07)、「Dr.HOUSE」(07)などのドラマシリーズで人気を博す。映画、TVドラマへの出演とともに、ドキュメンタリー映画の制作、短編映画、MVの監督としても活躍。さらに、バラク・オバマの大統領選の若手俳優による選挙支援団体への参加や、ハイチの復興支援、フェミニスト活動など、多才な能力を多方面で発揮している。2019年サウス・バイ・サウス・ウエスト(SXSW)の映画部門で、プレミア上映された長編初監督となる本作は、批評家、観客から絶賛され、ハリウッド映画賞ブレイクスルー監督賞など数々の賞を受賞。一気に監督としてブレイクを果たした。
映画『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』© 2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.
映画『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』
8月21日 (金)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督:オリヴィア・ワイルド
製作:アダム・マッケイ、ウィル・フェレル
出演:ビーニー・フェルドスタイン、ケイトリン・デヴァー
配給:ロングライド
2019年/アメリカ/英語/102分