骰子の眼

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東京都 渋谷区

2019-11-25 18:00


S・ヨハンソン×A・ドライバーの離婚劇『マリッジ・ストーリー』はラブストーリーだ

アップリンク渋谷・吉祥寺ほかにて11月29日(金)より上映
S・ヨハンソン×A・ドライバーの離婚劇『マリッジ・ストーリー』はラブストーリーだ
映画『マリッジ・ストーリー』

ノア・バームバックが監督を務め、スカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライバーが共演するNetflix映画『マリッジ・ストーリー』が、12月6日(金)からの配信に先駆け、11月29日(金)からアップリンク渋谷アップリンク吉祥寺ほかにて日本劇場公開される。

webDICEでは『マリッジ・ストーリー』の劇場公開にあたり、アメリカのメディアに掲載された情報やバームバック監督の発言から、作品の魅力についてまとめた。

ラブストーリーを作る方法を探していた

『マリッジ・ストーリー』は、ニューヨーク出身の舞台演出家チャーリーとロサンゼルス出身の女優ニコルが離婚プロセスに戸惑い、息子ヘンリーの親としてこれからどうすべきか苦悩しながら生きていく姿を、リアルで辛辣ながら思いやりあふれる視点で描くドラマだ。バームバック監督は現在50歳。この物語が生まれたきっかけについて、次のように語っている。

「ラブストーリーを作る方法を探していた。新しい方法を見つけたいと思っていた。それがコンセプトだった。離婚についての物語を描くことで、結婚について伝えることができると感じた。ラブストーリーの概念から生まれたんだ」(ノア・バームバック監督)

【Awards Daily】Interview: Noah Baumbach Breaks Down Marriage Story

映画『マリッジ・ストーリー』
映画『マリッジ・ストーリー』

チャーリーとニコルそしてヘンリーは当初ニューヨークに住んでいたものの、離婚の危機に瀕し、ニコルは息子を連れて母の住むロサンゼルスに戻ることになる。バームバック監督も離婚の経験がある。女優のジェニファー・ジェイソン・リーと2005年に結婚し男児をもうけたが、2013年に離婚している。現在のパートナーは女優/映画監督のグレタ・ガーウィグで、2019年3月に彼女との間に、男児をもうけた。しかし、この物語は自身の経験を反映したものではないとバームバック監督は強調する。

「ジェニファーは私がこの作品に取り掛かっていることは知っていたけれど、ふたりで映画について特に話はしなかった。これは私たち自身の結婚の物語ではない。ジェニファーはこの物語を映画として楽しんだ。チャーリーとニコルの離婚の物語だからだ。私の離婚や彼女の離婚について語ろうとすることすらしなかった。確かに、私の離婚の経験は、子供のころ両親が離婚した経験と同様、影響を及ぼしたけれど、同時に私は友人たちにも目を向けた。多くの友人が離婚しているからね。正式にインタビューし、私に心を開いてもらい、彼らと彼女らが言いたいことをより詳しく聞くことにしたんだ」(ノア・バームバック監督)

【Esquire】Noah Baumbach On Making A Love Story About Divorce

映画『マリッジ・ストーリー』
映画『マリッジ・ストーリー』

「作家のフィリップ・ロスの言葉に『何かを書き始めるとき、2つの現実という石をこすって想像力を掻き立てる』というのがある。これは、個人的なストーリーテラーが個人的なストーリーを語る方法の素晴らしい解説だ。もちろん、この映画でも私は自分の経験を生かしている。私はこれまでのすべての映画でそうしてきたし、すべての映画で『この映画は実体験に基づいているのですか?』という質問を受けた。作品を成功させるかどうかは、想像力、そして実体験をどう変容させるかにこそかかっているんだ」(ノア・バームバック監督)

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映画『マリッジ・ストーリー』
映画『マリッジ・ストーリー』

ベルイマンの『仮面/ペルソナ』を参考に

この作品はコダックの35ミリ・フィルムで撮影されている。ニコルとチャーリーがニューヨークとロサンゼルスを行き来するという設定に合わせて、バームバック監督は撮影監督のロビー・ライアン、そして衣装デザイナーのマーク・ブリッジスと綿密な計画を立てたという。

「ニューヨークとロサンゼルスとでは、自然光の具合がまったく違う。 ロサンゼルスで撮影された映画はひと目で判別できるくらい、 ロサンゼルスの光は独特なんだ。だから、ロビー・ライアンとマーク・ブリッジスとで早い段階で決めたのは、2つの都市で同じカラーパレットを使うということだった。そうすればそれぞれの街の特徴が出るから。色あせた赤レンガや、濃い灰色のコンクリート、点々とした緑の木々、そして時には白い漆喰の壁やスペイン風のタイルのように見えたりもする、あるいは鮮やかな青や緑の時もある、色んなニューヨークの空。 ロサンゼルスのピンク色は心が躍る。現実の環境に忠実に撮影することができた」(ノア・バームバック監督)

【Awards Daily】Interview: Noah Baumbach Breaks Down Marriage Story

映画『マリッジ・ストーリー』
映画『マリッジ・ストーリー』

バームバック監督は、ニコルとチャーリーの葛藤をふたりのクローズアップの多用により捉えていく。

「私たちはアスペクト比を狭めることにした。通常の映画は、1.85:1またはワイドスクリーンで撮影するが、この作品は1.66:1だ。本当に素晴らしかった。物語のなかで、ニコルとチャーリーは自分自身の物語を制御できなくなり、ある時点から弁護士が間に入ることで、ふたりは言葉を交わすことができなくなる。アダムとスカーレットを素晴らしい表情だけで、ふたりの隠された生活の、すべての言葉とセリフについて語ることができると思った。ロビーと私で事前に観た映画にイングマール・ベルイマンの『仮面/ペルソナ』(1966年)がある。あの作品の、クローズアップをどう発揮させふたりのキャラクターを繋げるか、という手法が大好きなんだ」(ノア・バームバック監督)

【Awards Daily】Interview: Noah Baumbach Breaks Down Marriage Story

映画『マリッジ・ストーリー』
映画『マリッジ・ストーリー』
映画『マリッジ・ストーリー』
映画『マリッジ・ストーリー』

1台の35ミリフィルムによる撮影では、新しいフィルムのマガジンの交換に5分を要する。フィルムでの撮影は俳優への演出方法や現場のムードにも影響を与えたようだ。

「カメラがダメになったり、スカーレットがセリフを忘れてしまったりなど何かがうまくいかなかった場合、フィルムは使い物にならなくなってしまう。撮影終盤は興奮して神経質になったが、そのマガジンの交換の時間を使って僕はスカーレットにアドバイスして、彼女は演技の調整を行い、シーンの最初からやり直すことができた」(ノア・バームバック監督)

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エドガー・ライト監督も絶賛

ノア・バームバック監督の『マリッジ・ストーリー』は、とてもきめ細かく繊細で、素晴らしいユーモアと言いようのない悲しさの熟練のブレンドだ。こんなに笑わせてくれて、そして深い心の痛みを覚える映画を僕は知らない。でもそれこそが人生じゃないか?今年のベストの一本だ。(エドガー・ライト監督


ロッテン・トマトのレビューより

映画『マリッジ・ストーリー』
映画『マリッジ・ストーリー』

ノア・バームバックは、俳優たちが命を吹き込む台本で鋭く深い感情を描くことのできる脚本家で監督だ。絶頂期にあり、個人的な表現の強力な伝達手段として映画を再発見する。(G. Allen Johnson/San Francisco Chronicle)

この映画には、関係が壊れてしまったけれど、まだ子供のためにそしてお互いのためにベストを尽くそうとするふたりのキャラクターへの、破壊的な累積するパワーと公平で共感できるアプローチがある。(Matthew Thrift/Little White Lies)

『マリッジ・ストーリー』は、エモーショナルな爪痕を残す体験であり、美しく傷ついたカップルにとってはほぼ完璧なエレジーであり、『クレイマー、クレイマー』『ファニーとアレクサンデル』と並ぶ壊れた家族についての古典だ。(Justin Chang/Los Angeles Times)




映画『マリッジ・ストーリー』

映画『マリッジ・ストーリー』
11月29日(金)よりアップリンク渋谷アップリンク吉祥寺ほかにて公開

監督・脚本:ノア・バームバック
製作:デビッド・ハイマン、ノア・バームバック
出演:スカーレット・ヨハンソン、アダム・ドライバー、ローラ・ダーン
2019年/136分/アメリカ/原題:Marriage Story

▼映画『マリッジ・ストーリー』予告編

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