骰子の眼

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東京都 渋谷区

2018-12-21 19:10


88歳のユダヤ人仕立て屋はブエノスから故郷ポーランドを目指す『家へ帰ろう』

ホロコーストを経験した祖父がモデル、家族が封印した「ポーランド」を再定義する
88歳のユダヤ人仕立て屋はブエノスから故郷ポーランドを目指す『家へ帰ろう』
映画『家へ帰ろう』 © 2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A

ホロコーストを生き抜いたユダヤ人の老仕立て屋の旅を描く映画『家(うち)へ帰ろう』が12月22日(土)より公開。webDICEではパブロ・ソラルス監督のインタビューを掲載する。

主人公はアルゼンチンに住む88歳の仕立て屋アブラハム。第2次世界大戦時、ユダヤ人である自分をナチスの手から救ってくれた友人との約束、自分が仕立てたスーツを手渡すために、70年ぶりにポーランドへ訪れるために一人旅を計画する。しかし、途中、ホテルの女主人に宿代を値切ろうとしたり、列車の乗り継ぎにドイツを経由することを頑なに拒むなど、頑固なアブラハムは行く先々で出会う人々を翻弄しながら旅を続けていく。アトム・エゴヤン監督の『手紙は憶えている』などこれまでも戦争の記憶をテーマにした作品は少なくないが、この『家へ帰ろう』「変態ジジイ」と呼ばれるほどきれいな女性には決まって声をかけるアブラハムのバイタリティなどコメディの要素を多分に盛り込んでいる。そのユーモアがあるからこそ、ナチスによる虐殺、「死の行進」を目の当たりして以来、自分で見たものを信じ続けるアブラハムの使命感がより胸を打つ。劇中何度も登場する「この目で見た」という言葉には、自らの祖父から聞いたエピソードから着想を得たというソラルス監督の戦争の記憶を伝えなければならないという切実な思いが込められている。


「戦争体験を乗り越えるには、痛みを切り離し、忘れなければ生きていけません。子どもに聞かせるには悲しい話ですし。だから劇中、アブラハムが自分のストーリーを誰かに伝えるに至ったのは、とても大切なことだと思っています」(パブロ・ソラルス監督)


祖父が「ポーランド」を語りたがらなかったことがきっかけ

──この映画は、監督が小さい頃におじいさまから聞いたエピソードがヒントになっているとうかがいました。そのエピソードを具体的に教えていただけますか?

私の祖父はポーランドで生まれ、6歳の時にアルゼンチンに移住し、祖父の父の後を継いでアルゼンチンでも仕立屋をしていました。私が、5、6歳の時、祖父はポーランド人だと聞いたのですが、なぜか家庭では一切その話題にならない。ある時、私は、祖父の家で食事をしている時にふと「ポーランド人なの?」と聞いたのです。すごく緊迫した空気が流れ、沈黙が続き、祖父に睨まれました。その空気は、今でも覚えています。悪いことをしたような罪悪感にかられながら、祖父の前では「ポーランド」と言ってはいけないのだと理解しました。

映画『家へ帰ろう』 パブロ・ソラルス監督 © 2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A
映画『家へ帰ろう』パブロ・ソラルス監督 © 2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A

本作を作るにあたり、どこからインスピレーションを得たのかと問われれば、このように答えています。一言でいうと、「沈黙」。「ポーランド」という言葉をなぜ祖父が聞きたくなかったのか、理由を知ることができない期間が長く続いた。「沈黙」が続いたんです。祖父は苦悩を語らず、両親は祖父の苦悩をあまり知らなかったので、誰も私に語ってくれる人はいなかった。祖父はそのことを一言も話さず、残念ながら90年代に死去しました。23~25歳の時に、私が演劇から映画に方向転換したのを、祖父はすごく喜んでくれました。祖父はずっと映画が好きで、僕を応援してくれていたので、本当はぜひ、この作品を見てほしかった。10代になるとポーランドという国や文化に対して少しずつ興味が出てきて自分で調べるようになり、祖父とは違う視点で見られるようになってきました。祖父にとってポーランドはただ苦痛な場所だったのかもしれません。祖父のポーランド観には、理解できても共感はできない部分もありました。でも、私は知識を深めていくうちに、祖父とは違って、ポーランドという国を身近に感じるようになっていきました。

──結局、ご家族が、おじいさまから直接ポーランドの話を聞く機会はありましたか?

ありませんでした。両親も、祖父母がポーランドでどんな生活をしてきたのか知りません。興味がなかったというのもありますが、祖父の苦悩、苦痛は怒りを生み出し、怒りを感じると苦悩、苦痛を隠そうとするという悪循環で、家族の中で話題に挙がることがなかったからです。戦争体験を乗り越えるには、痛みを切り離し、忘れなければ生きていけません。子どもに聞かせるには悲しい話ですし。だから劇中、アブラハムが自分のストーリーを誰かに伝えるに至ったのは、とても大切なことだと思っています。

父方の祖父は亡くなりましたが、ポーランド人ではないけれどユダヤ人である母方の祖父は95歳で健在です。「ドイツの地を踏みたくない」というアブラハムのエピソードは彼の言葉をヒントにしています。彼は、この映画の公開日に観に行ってくれました。それからは毎週日曜日に劇場へ足を運び、劇場の方やロビーに出てきた観客に、「これは僕の孫の作品なんだ」と自慢気に話していたようです(笑)。「もしドイツでこの作品が公開されるなら、是非ドイツに行って観たい」とも言ってくれました。

映画『家へ帰ろう』 © 2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A
映画『家へ帰ろう』 © 2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A

──父方、母方、両方のおじいさまがインスピレーションを与えてくれたのですね?

父もモデルになっています。90年代、僕がメキシコで演劇の仕事をしている時に、訪ねてきた父と皆でメキシコ屈指のアートの町、サン・ミゲル・デ・アジェンデに行ったんです。父はホテルのスタッフに、「来年の夏、40人のツアーを連れてくるからディスカウントしてくれ」と値切りました。本当に父は旅行業を営んでいました。アブラハムがスペインのホテルで同じ行動を取るシーンは、それをヒントにしています。

──家族総動員ですね。

そこがユダヤ人っぽいところです。

──ユダヤ人ぽいと言えば、孫娘のエピソードも意識的に描いていますよね?

アブラハムと一緒に写真を撮るなら、iPhoneを買ってあげると、物で孫娘の気持ちを引こうとします。彼女も祖父と駆け引きをする。あのシーンは、愛情を持ちながらも、金に執着するユダヤ人的な感覚を描いています。子どもの時に週一回、食事をしに来た祖父母が、いつも両親に見えないところでお小遣いをくれた。そういうところもアイデアのひとつになっています。

「あなたがブニュエルになれるとは思わない」と言われた

──アブラハム役を演じたミゲル・アンヘル・ソラは、長い時間かけて特殊な老けメイクをしてあの役を演じられたそうですね。本来の彼の写真を見て驚きました。もちろん、メイクだけでなく、彼自身の演技が素晴らしかったのですが。

はい。メイクはほんの一部であって、キーは彼の声やしゃべり方、アクセントなどでした。彼は映画の中で、実際とは異なるアクセントのスペイン語で話しています。それらすべてを完璧にこなす彼を演出するのは、天才にアドバイスしているような気分でした。

映画『家へ帰ろう』 © 2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A
映画『家へ帰ろう』アブラハム役のミゲル・アンヘル・ソラ © 2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A

──ミゲル・アンヘル・ソラをキャスティングされた経緯は?

キャスティングを考えた時に、役よりも若い人を選ぼうとしていたため、60代で探していましたが、彼は最初から第一候補でした。幼い頃から私は、彼の演技をテレビで観てきましたが、信念を持って役に挑むところがなにより素晴らしいと感じていました。彼は役者としてちょっと気難しい部分もありますが、素晴らしい人間性の持ち主。よりよい世界を創り出したいという思いを抱きながら演じており、そんなところをリスペクトしてきました。彼に脚本を送った時は、決して信心深いほうではありませんが、祈りました。彼が脚本を気に入り、続いてアンヘラ・モリーナやほかの役者も素晴らしい人々が集まってくれた。彼が引き受けてくれたのは、本当にラッキーだと思っています。

──マドリッドの宿の女主人でアブラハムを助けるマリア役を演じたアンヘラ・モリーナが、『欲望のあいまいな対象』(1977/ルイス・ブニュエル監督)で、キャロル・ブーケと二人一役を演じたコンチータは、とても印象的でした。

スペインにキャスティングに行った際、ミゲル・アンヘル・ソラと同じように脚本を気に入り、引き受けてくれたことを光栄に思っています。彼女はスペインの大スターなので、まさかと思いました。それも主演じゃないのに。

映画『家へ帰ろう』 © 2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A
映画『家へ帰ろう』マリア役のアンヘラ・モリーナ(中央) © 2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A

撮影初日、午前の撮影が終わったところでアシスタントディレクターが、「アンヘラが近くのバーで怒って泣いている」と私を迎えに来ました。バーに行ってアンヘラに理由を聞くと、「ミゲルはちゃんと顔が映っているのに、私は頭しか映っていない。もう午後は出演したくない」と言われてしまいました。私はアンヘラに、「これまであなたは100本以上の映画に出演してきましたが、僕はまだ2本目。午後は必ず顔を写すので、ぜひ出演してほしい」と言って、「一日の終わりにもう一度話し合ってなにか問題があれば解決していきましょう」と提案しました。

アンヘラに、「今までに組んだ監督で誰が一番やりやすかったか?」と聞くと、「ブニュエル」と答えました。「毎日、撮影が始まる前に、どういう画が欲しいか明確に説明してくれた。1テイクで撮り終え、撮影後は満面の笑みでOKと言ってくれた」。それがやりやすかったんだそうです。「僕もそうします」と答えたら、「いや、それは信じられない。あなたがブニュエルになれるとは思わない」と言われてしまった(笑)。「彼は台詞を完璧に覚えて来ないと受け付けてくれないの」と彼女が続けたので、「じゃあ、僕の脚本をもう一度見直して、台詞をちゃんと覚えてきてくれますか?」と提案したのです。その日の午前中に撮ったシーンは、ちょっとセリフが曖昧だったので。「そうしてくれたら、欲しい絵を明確に説明し、1テイクで、笑顔でOKを出します」と。それでも彼女は「信じられない」と言っていましたが、翌朝5時45分にホテルの下に食堂に行ったら、彼女は脚本を広げ、自分の台詞に線を引いて一生懸命覚えていました。スタンバイしている時に、アンヘラがアシスタントディレクターを呼んで、再び私と話したいと言ってきました。彼女のもとに行くと、「時々なんだけど、ブニュエルも2テイクでOKの時があったわ」と。

──撮影期間は全部でどれくらいだったのですか?

8週間。最初はブエノスアイレス、スペインが4週間、ポーランドが2週間でパリが1日ですね。

──アブラハムがパリの駅で、ドイツを通らないようにポーランドへ行く切符を買おうとするシーン。切符販売窓口の係員が、英語で話しかけても、スペイン語で話しかけても「分からない」と答えるのが、とてもフランスっぽいと思いました。

やはり、そう思いますか(笑)? 第二次大戦中、フランスはドイツに侵略されており、アメリカはその解放を手助けしましたが、その際のフランス人は「英語を話せ」みたいのが気に食わなくて英語が嫌いだと聞いています。いまも英語が好きじゃないのは、当時の歴史的記憶が継続しているのだと思います。

──それぞれの国で撮影に苦労した点、撮りやすかった点を教えてください。

パリで撮影する時、駅での撮影許可を取っていたのですが、テロの影響でそれが後に却下されてしまったのには苦労しました。またアブラハムがドイツの地を踏まないよう並べた服の上を歩くシーンは、映画の中ではドイツという設定ですが、当初、ポーランドのウッチ駅で撮影する予定でした。でも、ウッチは、駅自体がまだオープンすらしてない、とてもモダンな新しい建物だったのです。仕方なく、あのシーンはワルシャワ駅で撮りました。ただ、東京のような都会の駅なので、いろいろな音が鳴って、撮影は苦労しました。

映画『家へ帰ろう』 © 2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A
映画『家へ帰ろう』 © 2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A

3人の女性がアブラハムを導く理由

──旅の途中でアブラハムは、所持金を失ったアブラハムに親身に接するぶっきらぼうなホテルのオーナー、ドイツを毛嫌いする彼を辛抱強く支えようとするドイツ人の人類学者、病院の仕事を超えて助力してくれる看護師と、3人の女性と出会います。なぜ3人の女性がアブラハムを導くという設定にされたのでしょう?

即興で書き上げて、特に深く考えず、想像の中で浮かんできたことを文字に起こしました。それをあとで読み返して、また新たに降りてきたことを上書きするか、そのまま受け入れるかという2パターンに分かれるのですが、今回は3人とも最初に書いた人物像をそのまま演じてもらいました。撮影に入る前に反対意見もあって、なんで女性3人なんだ? 同じシチュエーションの繰り返しじゃないか。2人男性にして1人女性にしよう、など様々な意見がありました。しかし、自分への直感を信じて、3人の女性にしました。

映画『家へ帰ろう』 © 2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A
映画『家へ帰ろう』 © 2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A

──マドリッドに離れて住むアブラハムの末娘の腕には、ホロコースト時代のもののような刺青がありました。これにはどんな意図があるのでしょうか?

彼女のキャラクターは、「リア王」のオフェーリアに基づいて設計されています。リア王は3人の娘に、いかに自分を愛しているかを言葉にさせますが、末娘だけはどうしてもそれを言わず、王の怒りを買って、ほぼ勘当状態で疎遠になってしまいます。彼女も同じ。アブラハムのお気に入りの娘だったのに、言葉で表現しないことによって、愛がないものと受け止められてしまう。彼女のあのタトゥーは、父親への一番強い愛情の証明です。他の娘が、言葉でいくら「愛してる」と言ってもそれが本心かは分からない。でも末っ子の入れたタトゥーはすべてを物語っています。実際、ホロコーストの生存者、もしくは亡くなった方の子孫の間で、その時の番号をタトゥーとして入れることが広まっているようです。

映画『家へ帰ろう』 © 2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A
映画『家へ帰ろう』 © 2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A

祖父の生まれた場所ウッチで撮影、スタッフ・キャストと思いを共有

──アブラハムは、痛めている足を「ツーレス」と呼び、パートナーのように話しかけます。「ツーレス」とはどういう意味なのでしょう?

イディッシュ語で、「プロブレム(問題)」という意味があります。ドイツにいてもオランダにいてもハンガリーにいてもポーランドにいても、ユダヤ人は当時イディッシュ語を話していました。ドイツ語とロシア語とポーランド語が混ざったような言語で、国に関わらず、ユダヤ人が皆、同じ言語が話せることを目的に、ユダヤ人学校ではどこでも習うことができました。今はイスラエルを中心にヘブル語がオフィシャルとして扱われているので、イディッシュ語は消えつつあります。当時、演劇や音楽、文学で使われ、祖父母も使っていた美しい言語が消えつつあるのは、とても悲しい現実だと思っています。イディッシュ語を習った僕の両親も、子どもたちに聞かれたくない話はイディッシュ語で話していたそうです。

映画『家へ帰ろう』 © 2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A
映画『家へ帰ろう』 © 2016 HERNÁNDEZ y FERNÁNDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A

──ポーランドで最後に訪ねる建物は、実際におじいさまと関係のある場所なのでしょうか?

ええ。祖父が生まれ育った地域です。実際にウッチの市役所に行って祖父の住んでいた家を調べ、割り出してもらった場所です。撮影した家は、実際に祖父が住んでいた家ではありませんが、見た目は同じだし、同じ建築家の手掛けた建物ですし、あのブロックに住んでいたのは事実なので、私としては祖父の家と同じくらい感慨深く思っています。スクリーン上に祖父の生まれた場所を映し出すというのは、私にとって、とても意味のあることでした。よりエキゾチックな景観の街で撮影してもよかったのですが、祖父の出身地であるウッチで撮影することにこだわりました。役者にも撮影スタッフにも自分が感じていることを話し、共有してもらいました。それはスクリーンを通し、観客にも伝えたかったこと。そういう意味でもあの場所は大切なのです。

(オフィシャル・インタビューより)



パブロ・ソラルス(Pablo Solarz) プロフィール

1969年12月9日生まれ。ブエノスアイレスの演劇学校を卒業後、舞台俳優に。舞台演出も手がけた後、アメリカで映画作りを学び脚本家として活躍後、05年に短編映画『El Loro』(未)で監督デビュー。2011年に長編初監督作品『Juntos para Siempre』(未)を発表。本作は長編2本目となる。




映画『家へ帰ろう』
2018年12月22日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開

監督・脚本:パブロ・ソラルス
音楽:フェデリコ・フシド
撮影:フアン・カルロス・ゴメス
出演:ミゲル・アンヘル・ソラ、アンヘラ・モリーナ、オルガ・ボラズ、ユリア・ベアホルト、マルティン・ピロヤンスキー、ナタリア・ベルベケ
2017年/スペイン・アルゼンチン/スペイン語/カラー/スコープサイズ/5.1ch/93分/原題:EL ULTIMO TRAJE/
英題:The Last Suit
配給:彩プロ

公式サイト


▼映画『家へ帰ろう』予告編

キーワード:

パブロ・ソラルス


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