Vulnicura VR (c)Santiago Felipe
6月29日(水)、「ビョーク・デジタル」に行って見ました。
ビョークの最新VR作品を見られると言うので、期待に胸ふくらませ、東京テレポート駅から埋立地を10分ほど歩き未来科学館へ。
プレスへの公開ということで、100人ほどのメディア関係者が集っています。待合場所のテーブルの上にはiPhone 6sよりちょっと大きめのデバイスがずらっと並び、ヘッドフォンが繋がっています。説明書きも何もないので、とりあえずタッチすると曲が流れて、それに合わせたグラフィックが現れてきました。タッチしてぐるぐるすると何かが変わるのですがいまいち法則がわかりません。
説明会が始まりました。この展覧会は、すでにシドニーで行われ大好評で、東京の次はまだ発表できないが秋頃世界のどこかで行い、2年かけて12カ所で行われるといいます。同じ展示を2年かけて行うというのはVR技術の進歩からすると終わり頃には古くなっていないかとちょっと心配です。マンチェスターから来たこの展示の責任者ポール・クレイさんの質疑応答タイムとなると、会場からVRのビジネスモデルは?という鋭い質問がありました。クレイさんは、「一度に見られる客にも限りがあるし、まだビジネス・モデルはありませんね。アーティストのクリエイティビティを発揮させるメディアではありますが」という現実的な答えでした。「3つのVR作品と、ビョークのPVを鑑賞できる部屋があります、PV鑑賞は、5.1のサウンドを未来館用に7.1にしました。前のグリーンのカーペットに寝転がってみることができるので是非試してください」というコメントでした。
さて、PV展示室で寝転がってみました。こういう映画館があればなと思います。でも画質の追い込みが甘いのが気になりました。画像の黒に締まりがないのは残念です。せっかく本展用に7.1にチューニングしたのだったら、爆音とは言わないまでも、PV集なのでもっと音楽を大きく聞かせて欲しかったです。いっしょに取材に参加した編集部スタッフは映像と音楽がリップシンクしてなかったですよといっていました。僕は寝転がって天井を見ていたのでそこに気づきませんでした。
いよいよ期待のVR体験へ!入場前にきつく、「写真撮影は禁止です、後日配布する写真をお使い下さい」と言われているのでどんな会場かとわくわくします。
廊下に50人ずつ並べられ、まず7時から50番までが入場。僕は57番なので、7時半からの入場。時間が来ると、普通の事務所の裏廊下をぞろぞろと行進して最初のVR体験ルームへ。
えっ、これが最新のテクノロジーを屈指したビョークのVRを体験する部屋。。。
黒布で仕切られた会議室のような部屋にニトリで売ってそうな黒い丸椅子が50席、所狭しとランダムに並び、その上にサムソンのGear VRがヘッドフォンといっしょに置いてあります。
写真撮影禁止というのはこの展示風景を撮られたくなかったのでしょうか。最先端技術のVR、トップクリエイターの作品展示というには正直しょぼい風景です。
夏祭りの見世物小屋の雰囲気とでも言えばいいのでしょうか。
最新のVR見世物小屋と思えばそれはそれでこれがリアルで新しい風景なのかもしれません。
今年の夏祭りでGear VR10台くらい揃えたVR見世物小屋が流行りそうなきがします。「さあさあ、見てらっしゃい1回500円、お代は見てお帰りだよ」ってね。この展覧会は2,500円です。VR3回分とPV映像を見られる値段としてはちょっとお高いかもしれません。
HMD(ヘッド・マウント・ディプレイ)を触ると自動再生されると案内されました。各自椅子に座りHMDをセットし、ヘッドフォンをつけます。目の前におお、やっと会えたね、ビョークさん。画質はといえば、映画を見慣れた目からすると、ドットが粗く、リアル感に欠けます。これを「衝撃の映像」と評してるメディアもあるけど、これはYouTubeでも配信されていた映像なので、特に衝撃はありません。
曲は「Stonemilker」。アイスランドの海岸でこちらに向かってビョークが手を差し伸べながら唄います。足を上げて椅子をくるくる回し、360度の視野を体験。見渡す限り荒涼とした海岸で唄うビョーク。時々、合成で2人になったり3人になったり。でも360度なんだから90度ずつで、4人になって欲しかったですが、3人どまりです。一生懸命パフォーマンスしている彼女をくるくる回りながら、至近距離で見るこの感覚がビョークのいう「単にミュージックビデオが進化したものではなく、もっとロジカルで親密なパワーを秘めている」というアーティストと観客の新しい体験なのかと納得します。会場が狭いので、回っていると時々隣の人の膝と衝突するので注意が必要です。
映像が終わり、みんなで移動、次も同じような部屋に同じ椅子とHMDが置いてあります。勝手がわかっているので、各自HMDを装着。今度は、歯医者になった気分です。ビョークの口の中が目の前に現れます。曲は「Mouth Mantra」。なるほどVRでなければアーティストの口の中をこの距離で見ることはできない。これはまさに新鮮な新しい体験と言えるかもです。でもビョークの口の中を見ている自分を客観視するとちょっとおバカな感じもします。目の前は口ですが、くるっと回って後ろを確かめると後ろは暗闇でした。
最後は、立ってみるVR体験。会場はちょっと広くなり、黒布で仕切られています。ちょっとお化け屋敷な感じです。パソコンに2つのHTC Viveがケーブルで繋がっています。先ほどとは違いワイヤレスではないので扱いにくいです。係の人がパソコンを操作すると目の前にCGで作られた人が出てきました。人といっても粗いドットとフレームでできている人型の映像。Not Getの曲に合わせてただ歩いています。時間が経つにつれ、その人型がだんだん大きくなります。最後はドットが光り出します、花火のように。先ほどの2つのVRと違うのは、自分が前に歩くと映像の中に歩いた分入っていけることです。曲の最後の方では、人型は見上げなくてはならないほど、大きくなり、ワイヤーフレームの中に入ることができます。でも前に歩きすぎると、グリーンの格子が全面に現れます。多分これ以上前に行っても何もありませんよというサインなのでしょう。人型がビョークなのかどうかはわからないですが、想像をたくましくすればアーティストの体の中に入ることができる体験は確かに新しい体験と言えるでしょう。今まで考えたこともありません。体ごと、目の前の人の体の中に入ってしまうことなんて。
というわけで3曲のVRを体験し会場を後にしました。1階のホールでは日本民謡のセットリストが話題となったビョークのDJパーティが準備されていました。
(テキスト:浅井隆)
エントランス
Video
「Stonemilker VR」(c)Andrew Thomas Huang
「Stonemilker VR」(c)Andrew Thomas Huang
「Mouthmantra VR」(c)Jesse Kanda
「Mouthmantra VR」(c)Jesse Kanda
「Not Get VR」(c)JREWIND VR
「Not Get VR」(c)JREWIND VR
Biophillia
(c)Santiago Felipe
Cinema
(c)Santiago Felipe
Björk Digital ―音楽のVR・18日間の実験
2016年6月29日(水)から7月18日(月・祝)
開催日時:2016年6月29日(水)~7月18日(月・祝)午前10時~午後5時
※ただし金土日祝[7月1日(金)~3日(日)、8日(金)~10日(日)、15日(金)~18日(月・祝)]は午後10時まで開催
休館日:2016年7月5日(火)、12日(火)
会場:日本科学未来館 7階 イノベーションホールほか
料金:2,500円(税込)
※入場日時指定制、整理番号付(VRコンテンツ以外は当日に限り終日鑑賞可)
※入場券はチケットぴあ(http://w.pia.jp/t/bjork/)にて販売
※展示の中心となるVRコンテンツは13歳以上が対象です
※未就学児の入場はできません
※小学生以上は入場券が必要となります
※企画展、常設展、ドームシアター(いずれも午後5時まで)の鑑賞には別途料金がかかります
※アーティストの出演はありません
公式サイト