骰子の眼

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2016-06-07 14:15


死の概念も心を持ったAIによって変わる『エクス・マキナ』ガーランド監督

エヴァ役のアリシアは『ロイヤル・アフェア』でマッツ・ミケルセン相手に存在感を示していたので抜擢した
死の概念も心を持ったAIによって変わる『エクス・マキナ』ガーランド監督
映画『エクス・マキナ』アレックス・ガーランド監督(左)とエヴァ役のアリシア・ヴィキャンデル(右) © Universal Pictures

『ザ・ビーチ』『私を離さないで』の脚本を手がけたアレックス・ガーランドの初監督作品で、女性の姿をした人工知能とプログラマーの関係を描き、第88回アカデミー賞で視覚効果賞を受賞した映画『エクス・マキナ』が6月11日(土)より公開。webDICEでは、欧米での公開時のプロモーション展開や反応などをまとめた記事に続いて、アレックス・ガーランド監督のインタビューを掲載する。

脳や心とは何か、AIを描く

──本作の構想を思いついたのはどのくらい前ですか?

『ザ・ビーチ』以来、どの作品より長い間構想を温めてきた。『ザ・ビーチ』は私の旅の経験を描いた。これはコンピューター、特にAIへの興味に加え、意識に対する関心がベースになってる。AIの問題の多くは、意識と関わりがあるから、脳や心とは何かを追究してるんだ。本もたくさん読んだし、幸い同じテーマに精通してる友人も数人いた。読書や彼らとの会話を通じて、ストーリーが見え始めたんだ。『ジャッジ・ドレッド』の制作準備をしていた頃だ。突然物語の形で構想が頭に浮かんだ。多少の変更はあっても、話の核は変わっていない。だから10年になる。

映画『エクス・マキナ』アレックス・ガーランド監督
映画『エクス・マキナ』アレックス・ガーランド監督 © Universal Pictures

──10年ですか。では『ジャッジ・ドレッド』を中断して、この話を書き上げたのですか?

その通りだよ。脚本に限らず何でもそうだが、私が創作する時はまずA4の紙1~2枚にキーポイントを書き出すんだ。それを一番下に置いて上から徐々に書き始めていく。盛り込んだアイデアを消しながら最後まで書き進め、脚本を完成させる。時間はかからなかった。作家にとって基本となるのはストーリーだ。自分にとって意味のある物語はとても貴重だし必要なものなんだ。だから『ジャッジ・ドレッド』を中断し、この話を仕上げるのに集中した。

映画『エクス・マキナ』より © Universal Pictures
映画『エクス・マキナ』より © Universal Pictures

映画制作では、監督がいちばん重要だと思ったことはない

──執筆中に自分で監督しようと思いましたか?それが合理的だと私には思えたのですが。

軽く見ていると取ってほしくないんだが、長年映画制作に携わってきて、監督が特に重要だと思ったことはない。どの役割についても特別視はしてないんだ。それぞれの役割は重要だがピラミッド構造ではない。私自身そういう現場で、多く仕事をしてきたものでね。映画作りには多くの制作者が関わる。美術監督、撮影監督、プロデューサー、脚本家、監督、そして俳優。制作の各段階で、それぞれが最も重要な役目を負い常に流動的だ。外からはピラミッド状に見えても、少なくとも私の経験では違う。だから、監督することが大きなステップとは思っていない。約15年間映画制作に関わってきた。今度は別の監督と仕事をするかもしれない。だからと言って自分の仕事をその人に委ねたとは思わない。

映画『エクス・マキナ』より © Universal Pictures
映画『エクス・マキナ』より © Universal Pictures

──現場では非常に穏やかだったと聞きました。

そうだね。何度も一緒に仕事をしてきたクルーが多かったし、主演のドーナル・グリーソン(ガーランドが製作総指揮と脚本を手がけた『私を離さないで』[2010年]に出演)も含めて気心が知れた仲だった。過去の作品ではかなり難しい思いもしたが、今回は明確な決め事をして制作に入った。和気あいあいとした制作現場にすること、それが絶対条件だったんだ。現場で穏やかでいられたのは、優秀なスタッフといたからだ。素晴らしく優秀な人材ばかりだったんだ。だから彼らには信頼して仕事を任せられた。

撮影監督のロブ・ハーディとは初めて組んだが、彼の役割は作品の中で非常に重要だ。監督の仕事で嫌なのは、暗に誰かの仕事を奪うように感じることだ。ある映画の予告編を見た時、誰が撮影したのかすぐ分かった。予告編を見た人は、監督のことを話題にするが、実は彼らが反応しているのは撮影監督に対してなんだ。このように、私は違う角度から見てる。

重要なのはスターかどうかではなく、演者の力量だ

──キャストについてですが、主要人物はプログラマーのケイレブ、ブルーブック社の社長のネイサン、そして女性型ロボット「エヴァ」の3人ですね。なので、特に俳優の重要性が高いと思います。エヴァ役のアリシア・ヴィキャンデルは最初から候補でしたか?

『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』の演技で彼女に注目してた。若手ながらも名優マッツ・ミケルセン相手に、存在感を示し作品を支配していた。悪い意味ではなく、彼女から目が離せなかった。他の作品同様、この映画にも不安要素があり、私の一番の不安はキャスティングだった。映画の予算は1500万ドルだが、資金を確保できるかは俳優が関わってくる。私としてはスターを使いたくなかった。その理由は実力や協力姿勢に疑問があるからじゃない。この作品の制作方法や脚本の内容、シーンの長さや複雑な演技のためだ。重要なのは演者の力量だ。スターであれスター候補であれ、真の役者が必要だった。素晴らしいカリスマ性があったとしても、演じ切れなければこの作品は成り立たない。だから演技派でなければダメだし、その点についてはプロデューサーや出資者に心から感謝している。スターを使わなければ金は出さないと言わなかった。私の意見に賛同してくれたんだ。私たちが選んだ主役の3人は、無名というわけでなく業界では高く評価されてる。使いたがる監督も多い。オスカー・アイザックは、皆が認める名優だ。だが名前で金を集められるほどじゃない。

映画『エクス・マキナ』より © Universal Pictures
映画『エクス・マキナ』より、オスカー・アイザック(左)とドーナル・グリーソン(右) © Universal Pictures

エヴァが異質な存在であることを表現するアリシア・ヴィキャンデルの演技力

──エヴァについて聞かせてください。人間性を持つ機械という難しい役ですよね。アリシアと話し合いながら、一緒にエヴァを作り上げたのですか?

いや、私が書いた脚本を読んでもらい、ふたりで話をした。それだけで彼女はすべて理解した。ある場面に関する彼女の考えに私は言ったんだ。「考えて理解したのか本能的に感じたのか」「いずれにせよ素晴らしい」とね。動きについてもちゃんと分かってた。彼女は肉体を独特なやり方でコントロールできる。優れた俳優にしかできないことだ。バレエの訓練も役立っただろう。アリシアは優秀なバレリーナでもあったからね。それが下地となって特別な才能を身に着けたんだ。それはさりげない機械のしぐさだ。よくやりがちなカクカクした動きではなく、エヴァが異質な存在であることを表現した。見る者を引き込みながらもギリギリのところにとどめる。見事だった。

映画『エクス・マキナ』より © Universal Pictures
映画『エクス・マキナ』より、アリシア・ヴィキャンデル © Universal Pictures

──最後に、AIは人間に近づいていると思いますか?

AIは既に様々な形で存在してる。だけど君が言うのは自我という点でだね?今はまだ分からない。この映画の制作中に、この分野で最先端にいる人たちとも知り合った。私の個人的な意見だが、AIが人間に追いつくことは、将来的にいずれ起こると思ってる。起こらないという説を唱える学者もいるけどね。それがいつかは別の問題だ。ガンの治療と同じように、1つ解決しても別の問題が現れる。でもそれも進歩の過程だ。私が生きている間に実現しなくても、子供たちの時代には恐らく、そしてすべてを変えるだろう。人間の存在のパラダイムは基本的に、20万年前のホモ・サピエンスからの連続だ。それが変わる。人間が逃れられない死さえもね。我々は年をとるが、その概念も心を持つ別の物によって変わるだろう。

(オフィシャル・インタビューより)



【関連記事】

欧米でカルトヒットのAI映画『エクス・マキナ』の知っておきたい総ての事(2016-05-24)
http://www.webdice.jp/dice/detail/5120/




アレックス・ガーランド(Alex Garland) プロフィール

1970年、イギリス出身。ダニー・ボイルとのコラボレーションで知られ、『ザ・ビーチ』(99/原作)、『28日後...』(02/脚本)、『サンシャイン2057』(07/脚本)、『28週後...』(07/製作総指揮)など、マルチに活躍している。主な作品は、『テッセラクト』(03/原作)、『わたしを離さないで』(10/製作総指揮、脚本)、『ジャッジ・ドレッド』(12/製作、脚本)、『ビッグゲーム 大統領と少年ハンター』(14/製作総指揮)など。




映画『エクス・マキナ』ポスター

映画『エクス・マキナ』
6月11日(土)より、シネクイント他にて全国ロードショー

検索エンジンで有名な世界最大のインターネット会社「ブルーブック」でプログラマーとして働くケイレブは、巨万の富を築きながらも普段は滅多に姿を現さない社長のネイサンが所有する山間の別荘に1週間滞在するチャンスを得る。しかし、人里離れたその地に到着したケイレブを待っていたのは、美しい女性型ロボット「エヴァ」に搭載された世界初の実用レベルとなる人工知能のテストに協力するという、興味深くも不可思議な実験だった……。

監督・脚本:アレックス・ガーランド
製作:アンドリュー・マクドナルド、アロン・ライヒ
製作総指揮:スコット・ルーディン、イーライ・ブッシュ
出演:ドーナル・グリーソン、アリシア・ヴィキャンデル、オスカー・アイザック、ソノヤ・ミズノ
撮影:ロブ・ハーディ
美術:マーク・ディグビー
衣装:サミー・シェルドン・ディファー
編集:マーク・デイ
音楽:ベン・サリスベリー、ジェフ・バロウ
原題:Ex Machina
2015年/イギリス/108分
ユニバーサル映画
配給協力:パルコ
© Universal Pictures

公式サイト:http://exmachina-movie.jp


▼映画『エクス・マキナ』予告編

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