骰子の眼

cinema

2014-09-30 00:00


世界一のイケメン、マイケル・ファスベンダーがまさかの被り物!?

『FRANK ─フランク─』主演のマイケル・ファスベンダーにインタビュー
世界一のイケメン、マイケル・ファスベンダーがまさかの被り物!?
『FRANK ─フランク─』より ©2013 EP Frank Limited, Channel Four Television Corporation and the British Film Institute

決して被り物を脱がない風変りな男フランクをめぐる物語を手がけたのは、前3作『アダムとポール』(2004)、『ジョジーの修理工場』(2007)、『What Richard Did』(2012)がいずれも国際映画祭で高い評価を受けているアイルランド人監督レニー・アブラハムソン。

本作の脚本家でありジャーナリストのジョン・ロンソン(グラント・ヘスロヴ監督の2009年製作のコメディー映画『ヤギと男と男と壁と』の原作者でもある)が、1980年代後半の3年間、イギリスのミュージシャン兼コメディアンだったクリス・シーヴィー(2010没)扮する人気キャラクター“フランク・サイドボトム”が率いていたバンド「Oh Blimey Big Band」にキーボード奏者として在籍していた実体験に基づいている。

「Oh Blimey Big Band」は、ローファイな演奏にのせてシーヴィーが歌謡曲(カイリー・ミノーグ『ラッキー・ラヴ』、マドンナ『マテリアル・ガール』、ポリス『見つめていたい』など)を鼻声で歌うカバー・バンドで、当時のライブ映像を観ると大変にチャーミングなバンドだったことがわかる。(ロンソンが執筆したこの記事によると、「Oh Blimey Big Band」はNME誌にも絶賛され、500人のライブ会場も満席にするほどの人気だったが、後年シーヴィーの意向で、ヘタウマではなく巧いバンドに方向転換したせいで人気が急落したそうである。)

劇中のバンド、ソロンフォルブスの設定はポップソングのカバー・バンドではなく、まさにSXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)に招聘されそうな、前衛的すぎずメインストリームでもない音楽性を持つインディ・バンドだ。本作の魅力はなんといってもこのソロンフォルブスのバンドとしてのリアリティの高さにある。

ドラマー役のカーラ・アザール(本業がプロのドラマー)と、ギタリスト役フランソワ・シヴィル(本業が俳優&ミュージシャン)の2人以外、つまりキーボーディスト役のドーナル・グリーソンとテルミン奏者役のマギー・ギレンホールは楽器経験が無かったため練習を経て挑み、劇中の演奏シーンはすべて生で録音されたとのことだが、音楽担当のスティーヴン・レニックスによる出色のオリジナル楽曲もさることながら、メンバー各々のキャラクターの妙味が一体となって放たれる生き生きとしたバンドの存在感に、アブラハムソン監督の卓抜な手腕がうかがえる。

ボーカルのフランクについては、クリス・シーヴィーによる“フランク・サイドボトム"のキャラクターをベースにしつつ、「ダニエル・ジョンストンやキャプテン・ビーフハートなどのアウトサイダー・ミュージシャンをモデルに構想を練った」そうだが、マイケル・ファスベンダーの確かな歌唱力と彼が醸すカリズマ性は、ソロンフォルブスが劇中だけの架空バンドであり、ライブを見ることは叶わないという事実が残念至極に思えてしまうほどだ。以下に、マイケル・ファスベンダーが本作に出演するに至った経緯や、被り物での撮影について語るインタビューを掲載する。

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撮影中のフランク役マイケル・ファスベンダー(左)、ジョン役ドーナル・グリーソン(中央)、レニー・アブラハムソン監督(右) ©2013 EP Frank Limited, Channel Four Television Corporation and the British Film Institute

──この作品に惹かれたところ

脚本だね。すごく面白くて、声を出して笑ったよ。どのシーンでも次に何が起こるか分からなくて、興味をかき立てられた。コメディの中にも現実の厳しさを描いた瞬間があって、とてもオリジナリティにあふれた作品だ。僕好みの笑いなんだ。体を張ったコメディもくだらなくて面白い。それに僕はコメディ映画に出たいと心から思っていたから、この映画はまさに僕の望み通りの作品だ。

──監督のレニー・アブラハムソンとの仕事について

僕は彼の監督した『ジョジーの修理工場』と『What Richard Did』が大好きなんだ。作品に対する彼の感覚は本物だよ。レニーはとても厳しくて、自分自身に課題を課すし、自分がどんな映画を撮りたいのかをちゃんと知っている。だけど、他の人のアイデアにもきちんと耳を傾けるから、遊び心を忘れずに日々新しいものを取り入れることができたんだ。

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『FRANK ─フランク─』より ©2013 EP Frank Limited, Channel Four Television Corporation and the British Film Institute

──フランクや、他のメンバーについて

とても純粋で、それゆえ傷つきやすい。フランクには周囲の人々や社会と渡り合う能力がないし、不安や精神障害に悩んでいる。でも、彼はすばらしいミュージシャンで、音楽は彼の自己表現の手段なんだ。ちょっと変わったジェームス・ブラウンみたいな人だね。フランクは創造力の源で、周りのメンバーは自由奔放な彼の世話係だ。マギー・ギレンホール演じるクララとフランクは、看護師と患者のような共依存の関係だね。ジョンの登場によって、クララとフランクの関係が揺らいでしまう。ジョンは、フランクのことを魅力的でミステリアスで、とても自由な人物だと感じる。ジョンはミュージシャンとしての自分を必死で模索する中で、フランクという何にでも挑戦する自由なパフォーマーに出会い、彼に尊敬の念を抱く。ある意味、ジョンはフランクを所有したいと思っていて、そこからクララとの対決が始まるんだ。

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『FRANK ─フランク─』より ©2013 EP Frank Limited, Channel Four Television Corporation and the British Film Institute

──被り物での出演について

全編を通してマスクをかぶって演技できることに魅力を感じた。初めは少し違和感があったよ。マスクをかぶると、かなり視野が狭まって、周りがよく見えないからね。だけど、最終的にはとても楽しかった。マスクをかぶると自由な気持ちになれるし、力が湧いてくるんだ。マスクをかぶると弱くなるような気がするけど、マスクは力を与えてくれる。マスクをかぶると、いたずら心が湧いてくるね(笑)。演劇学校で演じた仮面即興喜劇のことを思い出したよ。あの仮面劇も自由を感じさせてくれた。映画の主人公がマスクで顔を隠すというアイデアが気に入って、なぜ15年間もマスクで顔を隠したい人がいるんだろうって興味をもった。ヘアメイクが必要ないから、撮影が始まる5分以上前に現場に行く必要もない。マスクをかぶって、ふらっと現場に行くだけでよかったんだ。

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『FRANK ─フランク─』より ©2013 EP Frank Limited, Channel Four Television Corporation and the British Film Institute

──マスクで演技の仕方がいままでと変わったか

演技への取り組み方を改めて考えさせられたと思うよ。表情がない分、ささいな体の動きが普段より効果的だと分かった。フランクはとても内気で社交性がないから行動は限られているけれど、もう1人の自分を演じている時の彼は、危険だし自信に満ちている。あらゆるシーンで、彼の男性的な面と女性的な面を演じられたのがよかったね。でも、マスクに違和感があることが多かったから、僕らはマスクをかぶったりいじったりした。でも、マスクをつけた状態にすぐに慣れ、マスクは僕の一部になったよ!

──バンドの音楽について

作曲はスティーヴンの肩にかかっていたけど、レニーがたくさんの歌詞を書いたんだ。2人の音楽は本当にすばらしいよ。オフビートで奇抜なサウンドに仕上がっている上に、美しさや誠実さも合わせ持っている。彼らが作った音楽を引っ提げて、コンサートツアーに出かけたら、さぞかし楽しいだろうって冗談を言ってたよ!

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『FRANK ─フランク─』より ©2013 EP Frank Limited, Channel Four Television Corporation and the British Film Institute

(オフィシャル・インタビューより)

マイケル・ファスベンダー(Michael Fasbender)プロフィール

1977年ドイツ生まれ、アイルランド育ち。ロンドンの演劇学校を卒業後、スティーヴン・スピルバーグとトム・ハンクスが共同製作したTVシリーズ「バンド・オブ・ブラザーズ」へ出演し脚光を浴びる。ザック・スナイダー監督『300<スリーハンドレッド>』(07)でスクリーン・デビュー。スティーヴ・マックィーン監督『HUNGER/ハンガー』(08)で英国インディペンデント映画賞ほか数々の賞を受賞。アンドレア・アーノルド監督作『フィッシュ・タンク』(09)でシカゴ国際映画祭助演男優賞とロンドン映画批評家協会賞を受賞。再びスティーヴ・マックィーン監督とタッグを組んだ『SHAME-シェイム-』(11)でヴェネチア国際映画祭男優賞、アイルランド映画テレビ賞男優賞を受賞、ゴールデン・グローブ賞男優賞、英国アカデミー賞男優賞にノミネート。『それでも夜は明ける』(13)では米アカデミー賞助演男優賞、ゴールデン・グローブ賞男優賞、英国アカデミー賞男優賞にノミネート。米サイトTC Candlerが2014年1月に発表した「世界で最も美しい顔100人」男性部門1位に輝いた。




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『FRANK ─フランク─』より ©2013 EP Frank Limited, Channel Four Television Corporation and the British Film Institute

『FRANK ─フランク─』 2014年10月4日(土)より
ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

巨大な張りぼてのマスクを被り、人前では絶対に素顔を見せない、正体不明のカリスマ・ミュージシャン、フランク。彼が率いるアヴァンギャルドでイカれたインディー・バンド「ソロンフォルブス」に加入した、ロックスターに憧れる田舎青年ジョンは、とんでもなくエキセントリックで、でも驚くほどクリエイティヴなフランクの才能に心酔していく。「あのマスクの中にいったいどんな秘密が?」。やがてインターネットにアップした動画がセンセーションを巻き起こし、アメリカで開催される音楽祭からオファーを受ける彼ら。だが、バンドを意のままに操り、みんなに認めさせたいジョンと、大勢の前で演奏することを拒むクララたちメンバーの亀裂は深まり、遂に情緒不安定になったフランクは暴走して…。音楽を通じて誰かとのつながりを求める人々の、可笑しくてほろ苦い物語。  

監督:レニー・アブラハムソン
製作:エド・ギニー、スティービー・リー、デイビッド・ベロン
共同脚本:ジョン・ロンスン、ピーター・ストローハン
編集:ネイサン・ヌージェント
音楽:スティーヴン・レニックス
美術:リチャード・ブロク
撮影:ジェイムズ・マザー
衣装:スージー・ハーマン
出演:マイケル・ファスベンダー、ドーナル・グリーソン、マギー・ギレンホール、スクート・マクネイリー、カーラ・アザール、フランソワ・シヴィル
配給:アース・スター エンターテイメント
(2014年/イギリス=アイルランド/英語/95分/カラー/スコープサイズ)

映画公式サイトfrank-movie.jp
映画公式Twitter@FrankMovieJP
映画公式Facebookwww.facebook.com/frankmovie.jp


▼映画『FRANK ─フランク─』予告編

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