骰子の眼

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東京都 渋谷区

2014-04-21 23:30


グウェンが言う「時は運なり」それが、この作品全体を貫いている概念

映画『アメイジング・スパイダーマン2』マーク・ウェブ監督インタビュー
グウェンが言う「時は運なり」それが、この作品全体を貫いている概念
(C)2013 CTMG. All Rights Reserved.

言わずと知れたMarvel作品「スパイダーマン」。『(500)日のサマー』のマーク・ウェブ監督によるアメイジング・シリーズ2作目『アメイジング・スパイダーマン2』が4月25日より日本公開となる。
今回の敵は、ジェイミー・フォックス演じる高圧電流を操りすべてを破壊するエレクトロ。そして、ついに登場する旧友ハリー・オズボーン。演じるのは『クロニクル』で注目を集めたデイン・デハーン。
高圧電流を操る敵、その名も"エレクトロ"が電力使い放題の街ニューヨークを舞台に大暴れする本作。見所はなんと言っても光と音楽の戦闘シーンだ。音楽には『レインマン』『ライオン・キング』を手掛けたハンス・ジマーの声掛けにより、ファレル・ウィリアムス、ジョニー・マー(ザ・スミス)、マイケル・アインジガー(インキュバス)、ジャンキーXLら、6名からなる"ザ・マグニフィセント・シックス"が参加している。ミュージックビデオ出身で、音楽にはひときわ思い入れの強い、マーク・ウェブ監督のインタビューを掲載する。




本作ではかなり深いかたちで成長を試されることになる

──キャラクターたちは1作目からどのように進化しましたか。

前作では主人公のピーター・パーカー(アンドリュー・ガーフィールド)がスパイダーマンになる方法を学んでいたが、2作目の本作冒頭では彼はスパイダーマンであることのエキスパートになっている。彼は世界最高のクライム・ファイターで、スパイダーマンとしての活動を心から楽しんでいるんだ。

ヒロインのグウェン・ステイシー(エマ・ストーン)は、高校を卒業しピーター・パーカーともスパイダーマンとも関係なく、自分自身の人生を決めようとしている。キャラクターたちは、みな進化したよ。それぞれが自分自身が成長するためにチャレンジしていると思うし、本作ではかなり深いかたちで成長を試されることになる。

映画『アメイジング・スパイダーマン2』008
マーク・ウェブ監督と『スパイダーマン』原作者スタン・リー(もちろん今作もカメオ出演!)

──アンドリュー・ガーフィールドとエマ・ストーンが、具体的にどのような資質をピーターとグウェンにもたらしていますか。

アンドリュー・ガーフィールドは物事をとても深く感じる力を持っていて、感じたことをスクリーン上に信憑性をもって伝えることができる人だと思う。そういう人は滅多にいない。その上、彼は信じられないくらい身のこなしが軽い。そして、とても率直で協力的だ。さらに彼には、スパイダーマンの基本的な要素であるユーモアがある。トリックスター原型を彼は喜んで取り入れ、見事に形にしてくれたと思う。

エマ・ストーンは今まで僕が出会った人の中でダントツにチャーミングな人だ。陽気で美しくてユーモアがある。そして深い感情を表現できる俳優になった。彼女の素晴らしいところは、少しでも嘘っぽく感じられるジョークは無理に押し通さない点だ。彼女のユーモアとバイタリティは本物で、彼女のようにウィットと魅力と美しさを併せ持った人はなかなかいない。彼女を獲得できたことはとても幸運なことだった。

──アンドリュー・ガーフィールドとエマ・ストーンの相性は前作同様、ぴったりでしたか?

完ぺきだよ。あの2人をスクリーンに出せば、放っておいてもうまくやってくれる。2人のおかげで魔法がおきたと思っている。キャスティングの際は個々の俳優だけを見て選ぶのではなく、俳優間の相性やフィーリングはとても重要だ。本作はそれが大変うまくいったと思う。世界中が彼らに恋しているからね。

映画『アメイジング・スパイダーマン2』001
ピーター・パーカー(アンドリュー・ガーフィールド)とグウェン・ステイシー(エマ・ストーン)

愛する人たちと過ごす時間を大切にしなければいけない、というのが本作のテーマになっている

──続編の場合、何らかの形で1作目を上回るのではないかという期待がついてまわりますが、『アメイジング・スパイダーマン2』では、その期待にどのように応えようとしたのですか。

今回は、スパイダーマンの茶目っ気のある面を本格的にとり入れ、楽しい大作にしたいと思った。冒頭から20分間、アクセル全開の超スピーディで鮮やかなアクションが続く。あのシークエンスでは一切手加減せずやりたいことはすべてやりたいと思った。

しかし、大切なのは自分自身を凌ごうとすることではなく、僕ら、そして観客が共感できるような作品の核となる主題を見つけることなんだ。本作の場合、それは"時間"だ。最初のショットで映し出されるのは時を刻む時計だ。愛する人たちと過ごす時間を大切にしなければいけない、というのが本作のテーマになっている。昔から文学や映画で探究されてきたものだが、深い共鳴を呼ぶテーマだ。本作の冒頭でグウェンが卒業式でスピーチをする。その中で彼女は、「時は運なり」と言う。それが、この作品全体を貫いている概念なんだ。

──ストーリー作りに際しては、どのような形で脚本家と仕事を進めていくのですか。

まず話し合ったのは、悪役について、ピーター・パーカーの状況について、そして本作で答えてゆきたい疑問についてだ。だが、極めて重要なのはテーマについて話し合うことだ。主題は何だ。この映画の核は何だ。いろいろなアイデアが湧き出てくる泉はどんなものにするか。そしてそのどこに時間を組み込むべきか。

次にスペクタクル大作にすることを考える。この映画を見る人たちにワクワクしてもらいたい、スリルを味わったり、スパイダーマンのスピード感や興奮、願いがかなった高揚感を感じたりしてもらいたい。だがそれと同時に、そこにハートがなければいけない。ライターたちは見事なコラボレーションで、僕らがまだ見たことのないスパイダーマンの側面を深く探求するストーリーを見事に作りあげてくれる。

映画『アメイジング・スパイダーマン2』002
作品のキーワードは"時間"

長年ミュージック・ビデオを作っていたから、映像と音楽の間には何か切り離せないものを感じる

──音楽と、ハンス・ジマーとファレル・ウィリアムスの参加について聞かせてください。

今回の作品には現代的な雰囲気の音楽が欲しかった。象徴的かつ古典的であると同時に、ニューヨークの街中でラジオから流れているようなサウンドも欲しかった。そうした要素をすべて繋ぎ合わせる人が必要で、それにはハンス・ジマーが最適だと考えた。彼との初めての打ち合わせの際、いろいろなテーマや概念や参考にすべきものについて話し合った。僕が、真に優れたポップミュージックにしたいと言ったら、彼が、「うってつけの人物がいる」と言ってファレルを引き入れたんだ。

その後ハンスは英国で、僕が大好きなザ・スミスのジョニー・マーとランチをした。そして二人で、リズムやギターのリフについてアイデアを交わし、僕が以前ミュージック・ビデオを作ったインキュバスのマイク・アインジガーや、ユーリズミックスのデイヴ・スチュワートについて話した。そしてハンスがそうした人たちを集めて、自然な形で出来上がったのが、信じられないほどすごい才能が結集したスーパー・グループだった。その彼らがこの映画の音楽のテクスチャーとパレットを作ってくれた。そしてその雰囲気やコード進行や色彩を、ハンスが非常にユニークなスコアにまとめている。象徴的で親しみやすい、けれどユニークなスコアにね。

──音楽にはかなり興味があるようですが、ご自身でも何か楽器を演奏なさるんですか。

彼らに比べたら僕は卵でしかないよ。子どもの頃にピアノを習っていて、高校ではオーケストラでファゴットを演奏していた。でも彼らに交じってピアノを弾くこともあるよ。ハンスが弾き方を見せてくれたり、ジョニー・マーがいくつかコードを教えてくれたりした。

──ミュージック・ビデオを監督した経験が、映画作りに対する姿勢に影響を及ぼしていますか。

長年ミュージック・ビデオを作っていたから、映像と音楽の間には何か切り離せないものを感じる。その二つがとても密接につながっているので、どちらか一方のことだけを考えるということはできないんだ。だからアクション・シークエンスあるいは感情を描くシークエンスについて考えるとき、音楽を聴きながらパレットやフィーリングやセンセーションを作りあげてゆくことが多い。役者たちだけでなく、スタッフ全員とのコミュニケーションにも役立つ。それが僕の仕事のやり方なんだ。


ピーター・パーカーと、彼が対決する悪役とは必ずどこか似たところがある

──エレクトロについて、そして彼がスパイダーマンの敵役として最適な理由についてお話しください。

電気を操れて、コンセントの中に姿を消すことができるキャラクターには、とても映画的な要素がある。すごく怖くてとても美しい何かがあるんだ。エレクトロの核となっているのはマックス・ディロンでマックス・ディロンは世間から無視されてきた男だ。まともに愛されたことが一度もない彼は、怒りを抱くようになる。そしてその怒りと、周りの人々からけなされる経験とが合わさることで、非常に危険なものが表出し、そこでエレクトロが生まれるんだ。

ピーター・パーカーと、彼が対決する悪役とは必ずどこか似たところがある。類似点があるんだ。ピーター・パーカーははみ出し者だが、マックス・ディロンもそうだ。ディロンには精神異常的な部分があり、そのために彼は極めて邪悪になるが、我々が彼を理解し、ある程度のシンパシーを抱けるようにすることがとても重要だった。ジェイミー・フォックスはその見事な演技で、マックスを概念としてだけではなく、本物の人間として明示することに一役買った。そのおかげで観客はマックスの行為の裏にある理由を理解することができる。

そして、あのキャラクター極めて面白い変遷をたどる。最初、ディロンは自分を救ってくれたスパイダーマンが、自分の名前を知っていたことで大喜びする。ヒーローが自分のことを知っていた、と彼はスパイダーマン最大のファンになる。だが終盤には、スパイダーマン最大の敵となり、極めて危険な戦いを仕掛ける。あのキャラクターでその変遷を描くことができてものすごく楽しかった。

映画『アメイジング・スパイダーマン2』005
オズコープ社の電気技師マックス・ディロン(ジェイミー・フォックス)
映画『アメイジング・スパイダーマン2』004
一時は死んだと思われたが、高圧電流を操るエレクトロとなって街で暴れ出す

──前作では敵は一人でしたが、今回は複数登場すると聞いています。

そう。本作では、ポール・ジアマッティがライノになるアレクセイ・シチェビッチを、そしてジェイミー・フォックスが主たる悪役であるエレクトロを演じている。でも多くの顏を持つ邪悪な力が一つあるとすれば、それはオズコープだ。スパイダーマンの世界におけるダークなものは、すべてオズコープという邪悪な帝国から生まれるんだ。

──今回は、今まで私たちが見てきたのとは違うハリー・オズボーンになる、とデイン・デハーンが言っていました。

そうなんだ。今回のハリー・オズボーンは素晴らしい。非常に切れ者で、オズコープ帝国の後継者候補だ。抜け目のないやり手だが、ピーター・パーカーとは父がいない者同士という絆がある。二人とも、ある意味両親に捨てられた。そのことが強い絆になっているんだ。

映画『アメイジング・スパイダーマン2』006
スパイダーマンとハリー・オズボーン(デイン・デハーン)

ニューヨーク市はもとよりニューヨーク州でこれまでに撮影された映画の中で一番の大作

──本作の大半はニューヨークでロケ撮影されましたが、そのことは作品にどのような影響を与えていますか。

ニューヨークでの撮影は実に楽しいよ。ニューヨークの人たちは極めて無関心なんだ。映画スターを見ても、街中をスーパーヒーローが走っていても、まったく心を動かさない。仕事に行くことしか考えていない。でもそうした彼らの姿勢にインスパイアされた。また、ニューヨークには再現しようのない、素晴らしいコミュニティの雰囲気があって、それが本作では映像を通して伝わってくる。スタジオのバックロットにニューヨークの街を作ることもできるが、それでは何かが足りない。この作品は、ニューヨーク市はもとよりニューヨーク州でこれまでに撮影された映画の中で一番の大作だ。ニューヨークで撮影することの利点は大きい。よりリアルな感じが得られるからだ。建物のディテールや、バックを行き交う人々の態度が見られて、現実の世界を歩いている気分になる。実際にそうだからね。

映画『アメイジング・スパイダーマン2』003
最大規模で行われたニューヨーク・ロケ

──1作目のようなHDデジタルではなく、35㎜フィルムで撮影したのはなぜですか。

そう、今回は35㎜アナモルフィック・フィルムで撮った。撮影監督のダン・ミンゲルと話し合って決めた。僕はフィルムが大好きなんだ。処女作の『(500)日のサマー』もフィルムで撮った。前作はデジタルで撮ったけれど、あの作品で目指していたものを達成するにはそれでよかった。ただ、僕はフィルムが好きだ。映像を投影したときの感じがいいし、人間の肌を美しく見せてくれる。そして光の扱い方もとてもいいんだ。フィルム、特にアナモルフィック・フィルムには、スクリーン上の映像に素晴らしいクオリティを与えてくれる。フィルムで撮影していると、何かとても大事なものを見ているという気持ちになるんだ。

──アンドリュー・ガーフィールドが、ポストプロダクションにも関わっていると言っていましたが、俳優が関わるのは珍しいですね。

彼が2ヶ月に一度くらい来て、それぞれのシーンや、それぞれのシーンの魅力を最大限に引き出すにはどうしたらいいか、といったことを話すんだ。彼は素晴らしいコラボレーターで、僕は彼の意見をとても尊重している。彼は役者としてだけではなく、すべてのプロセスにおいて素晴らしいコラボレーターとなってくれている。

映画『アメイジング・スパイダーマン2』007
アンドリュー・ガーフィールドとマーク・ウェブ監督

──日本のファンは今作のどういうところに魅力を感じると思いますか?

大規模なアクションも楽しんでもらえると思うけど、やっぱり細やかな心情を描いているところだと思う。それがあるから、私自身もスパイダーマンが大好きなんだ。それに、彼はめちゃくちゃ強いからね。楽しんでもらえると思うよ。

──このシリーズにおける今後の作品について何かヒントはいただけますか。

オズコープが関わってくるだろうね。今はそれしか言えない。




映画『アメイジング・スパイダーマン2』
2014年4月25日(金)より、TOHOシネマズ日劇ほか3D&2D全国ロードショー!

監督:マーク・ウェブ
出演:アンドリュー・ガーフィールド、エマ・ストーン、ジェイミー・フォックス、デイン・デハーン、ポール・ジアマッティ、サリー・フィールド

公式サイト:http://www.amazing-spiderman.jp/
公式Facebookページ: https://www.facebook.com/AmazingSpiderman.JP
(C)2013 CTMG. All Rights Reserved.
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

▼映画『アメイジング・スパイダーマン2』予告編


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