骰子の眼

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東京都 渋谷区

2014-04-04 23:57


アブデラティフ・ケシシュ監督が主人公に女優アデル・エグザルコプロスの名前をつけた理由

監督そしてふたりの女優がカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した『アデル、ブルーは熱い色』
アブデラティフ・ケシシュ監督が主人公に女優アデル・エグザルコプロスの名前をつけた理由
映画『アデル、ブルーは熱い色』より © 2013- WILD BUNCH - QUAT’S SOUS FILMS – FRANCE 2 CINEMA – SCOPE PICTURES – RTBF (Télévision belge) - VERTIGO FILMS

昨年の第66回カンヌ国際映画祭でアブデラティフ・ケシシュ監督、そして主演のアデル・エグザルコプロスとレア・セドゥがパルムドールを受賞した『アデル、ブルーは熱い色』が4月5日(土)よりロードショー。公開にあたり、ケシシュ監督がインタビューに答えた。

このふたりだったらそういう激しい愛を体現することが出来る

フランスのジュリー・マロによるコミック『ブルーは熱い色』を原作に、高校生アデルと画家を志す美学生エマのふたりの女性の愛と人生を描く今作。監督はこの原作に一目惚れしたという。

「まず興味を持ったのは、絵でした。素晴らしいイラストだなと思いました。そしてテーマとしても、このふたりの女性が出逢った激しい愛というものにも興味を持ちましたし、ふたりが信号を待っている間にすれ違う、偶然と運命的な出会いというものにも興味がありました。偶然の運命の出会いがアデルの人生を、まるきり変えてしまう、そういうところにも興味がありました。もう一つは、失恋をすることによって、アデルがいろんな困難を乗り越えていく成長物語のような部分です」

アデル原作
ジュリー・マロによる映画『アデル、ブルーは熱い色』の原作表紙

この物語を映画化するにあたって、監督は主人公の名前を、主演のアデル・エグザルコプロスに変更した。

「主人公のアデルはとても官能的で生きることに貪欲で、そして寛容であるというところが、あまりにもアデル・エグザルコプロスと共通項があったので、主人公にアデルという名前を付けました。コミックでは主人公は、クレモンティーヌという名前で呼ばれているのですが、全くアデルとは別の性格です。エマに対する興味について罪悪感をもっていて、自分はどういう人間なのかと反省したり、こんな風に惹かれてはいけないと、とても否定的な考えを持っています。しかし、私の映画でのアデルの方は、もっとアバンチュールに対して自由でオープンで、彼女自身が突き進んでいくことに何のためらいもないのです。ですから、どちらかというと彼女の方が先にエマを挑発してキスをして、誘惑します」

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映画『アデル、ブルーは熱い色』のアブデラティフ・ケシシュ監督 photo:Masato Seto

アデルが恋するエマにレア・セドゥを起用した理由については次のように説明する。

「エマという人物は、知的で文化的な教養も高いブルジョアの階級、それをレア・セドゥだったら体現出来るだろうと思いました。ふたりの間に惹かれ合うという信憑性というか、説得力があるかというところで、このふたりだったらそういう激しい愛を体現することが出来ると確信したのです」

アデル、ブルーは熱い色 サブ1
映画『アデル、ブルーは熱い色』より アデル役のアデル・エグザルコプロス © 2013- WILD BUNCH - QUAT’S SOUS FILMS – FRANCE 2 CINEMA – SCOPE PICTURES – RTBF (Télévision belge) - VERTIGO FILMS
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映画『アデル、ブルーは熱い色』より エマ役のレア・セドゥ © 2013- WILD BUNCH - QUAT’S SOUS FILMS – FRANCE 2 CINEMA – SCOPE PICTURES – RTBF (Télévision belge) - VERTIGO FILMS

台本や台詞は綿密に作られているものの、実際の撮影現場でのリズムを大切にし、現実の生活と同じように直感を大切にして臨む、と監督は語る。

「アデルは失恋の大きな痛手を経たことによって、自分の中にあった力というものに気づき、また新たな飛躍をしていく、そしてもっと建設的なやり方でその経験を活かしていく、決して、破壊的なところがないのです。まるでその経験を未来へのスーツケースを手にしたように活かしていくのです」

アデルはとても英雄的な人物

ケシシュ監督の特徴と言えるクロース・アップと切り返しを多用した登場人物への親密な視点、そして演技していることを意識させないリアルな演出スタイルは今作でも発揮されている。2台のカメラで800時間にわたる撮影のなかで、例えばふたりが、デモが行われている路上でシュプレヒコールをあげるシーンは、実際のデモに参加し、周囲の人々の協力を得て撮影されたという。

アデル、ブルーは熱い色 サブ2
映画『アデル、ブルーは熱い色』より © 2013- WILD BUNCH - QUAT’S SOUS FILMS – FRANCE 2 CINEMA – SCOPE PICTURES – RTBF (Télévision belge) - VERTIGO FILMS

また、アデルが高校生、そしてエマがアートを専攻しているふたりと周囲の人々との会話のなかには、「危険な関係」 「マリアンヌの生涯」といったフランス文学や、グスタフ・クリムトやエゴン・シーレといった画家などへの言及も随所に盛り込まれている。そうした美術や文学と生活の関わりが、生々しくありながら美しい構図で切り取られている。そして『クスクス粒の秘密』に続く、官能的な食事のシーン──今回はトマトソースのスパゲティ──もぜひ堪能してもらいたい。

「これまでの私の作品に比べて、美学的なものの側面をこの映画に与えたかったのです。芸術や絵画、美しさというものを、全てのカットでとは言いませんが、かなりのカットでより高いレベルで表現したいと思いました。まるでひとつのカットがひとつの絵画のように思えるほどのレベルです。だからこそ今回私は色や光の当て方や、そういうものの調和をとることにかなり力を注ぎました」

運命的な出会いの後、アデルは教師になり、画家になったエマのモデルをつとめながら続ける共同生活を経て、ふたりの関係がどのように変化していくのかをカメラは追う。異なる性格、異なる階級に属するふたりの関係性を、ケシシュ監督は彼女たちの生活に寄り添うように描いている。

「情熱的な恋愛を生きながら、仕事を全うしている人物を描くということは非常に興味深いと思ったのです。自分の心が深く傷ついていても、自分の義務というものを全うしている、そういうところではやはり人間にとって勇気が必要なのです。失恋の悲しみはとても深いものがありますからね。彼女は真正面から立ち向かって、義務をやってのける、そういう意味ではアデルはとても英雄的な人物だなと思います。かなりの勇気を持って、果敢にそれに直面していくわけですから。自分の仕事を全うするために」

(オフィシャル・インタビューより)



アブデラティフ・ケシシュ プロフィール

1960年12月7日チュニジアで生まれ、6歳の時に南仏ニースに移住。アンティーブの国立演劇学校で学び、コート・ダジュール周辺の舞台で活躍。映画俳優としてアンドレ・テシネの『イノセンツ』(87)に出演。その後、監督を目指してさまざまな脚本を手がけるが、なかなか製作資金を得られなかったところ、『ヴォルテールのせい』の企画がプロデューサーの目にとまり、2000年に監督デビュー。ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞。その後『身をかわして』(04)が、05年のセザール賞最優秀作品賞、最優秀監督賞、脚本賞、新人女優賞の4部門を獲得。長編第3作『クスクス粒の秘密』(07)でヴェネチア国際映画祭の審査委員特別賞、国際映画批評家連盟賞などを受賞。さらにセザール賞でも再び最優秀作品賞、監督賞、脚本賞、新人女優賞の4部門で受賞。10年には、初の時代劇となる『黒いヴィーナス』を再度ヴェネチア国際映画祭に出品。13年、ジュリー・マロのコミック『Le bleu est une couleur chaude / Blue is the warmest color』を映画化した『アデル、ブルーは熱い色』を第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品。満場一致で最高賞パルムドールに輝く。主演女優ふたりにもパルムドールが授与されるという史上初の快挙を成し遂げた。




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映画『アデル、ブルーは熱い色』より © 2013- WILD BUNCH - QUAT’S SOUS FILMS – FRANCE 2 CINEMA – SCOPE PICTURES – RTBF (Télévision belge) - VERTIGO FILMS

映画『アデル、ブルーは熱い色』
2014年4月5(土)より新宿バルト9、Bunkamura ル・シネマ、
ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー

運命の相手は、ひと目でわかる──それは本当だった。高校生のアデルは、道ですれ違ったブルーの髪の女に、一瞬で心を奪われる。夢に見るほど彼女を追い求めていたその時、偶然バーでの再会を果たす。彼女の名はエマ、画家を志す美学生。アデルはエマのミステリアスな雰囲気と、豊かな知性と感性に魅了される。やがて初めて知った愛の歓びに、身も心も一途にのめり込んで行くアデル。数年後、教師になる夢を叶えたアデルは、画家になったエマのモデルをつとめながら彼女と暮らし、幸せな日々を送っていた。ところが、エマが絵の披露かねて友人たちを招いたパーティの後、急に彼女の態度が変わってしまう。淋しさに耐えかねたアデルは、愚かな行動に出てしまうのだが──。

監督・脚本:アブデラティフ・ケシシュ
原作:ジュリー・マロ「ブルーは熱い色」(DU BOOKS)
出演:レア・セドゥ、アデル・エグザルコプロス、サリム・ケシゥシュ、モナ・ヴァルラヴェンほか
撮影監督:ソフィアン・エル=ファニ
音響:ジェローム・シュヌヴォワ
編集:アルベルティーヌ・ラステラ、カミーユ・トゥブキ、ジャン=マリー・ランジェレ、ガリア・ラクロワ
製作:アルカトラス・フィルム、オリヴィエ・テリ・ラピニ、ローランス・クレルク
製作総指揮:クァス・フィルム、アブデラティフ・ケシシュ、ワイルドバンチ、ヴァンサン・マラヴァル、ブライム・シウア
原題:LA VIE D'ADELE CHAPITRES 1 ET 2/2013年/フランス/フランス語/179分/ヴィスタ/R18+
日本語字幕:松岡葉子
後援:フランス大使館、アンステチュ・フランセ日本
協力:ユニフランス・フィルムズ

公式サイト:http://adele-blue.com
公式Facebook:https://www.facebook.com/adelebluemovie
公式Twitter:https://twitter.com/adelebluemovie


▼映画『アデル、ブルーは熱い色』予告編


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