インタビューに答えたBMXバンディッツのダグラス・T・スチュワート
11月3日、4日の2日間、渋谷アップリンクにてグラスゴーの伝説的バンド、BMXバンディッツの歴史を辿るドキュメンタリー映画『SERIOUS DRUGS』が上映される。これは10月にバンドのリーダー、ダグラス・T・スチュワートが、ノーマン・ブレイク(ティーンエイジ・ファンクラブ)、ユージン・ケリー(ヴァセリンズ)の3人編成で来日公演を行ったのに伴い開催されるイベントで、3日の上映では、スライドショーを交えたジャパン・ツアーのレポートとともに、彼らを敬愛する日本のミュージシャンによるミニライブも行われる。来日したダグラスにこのドキュメンタリーについて、そして日本について聞いた。
カート・コバーンもファンであることを公言
「僕たちは若くて、分別がなくて、そして恋してる。人生の途中だ」(ダグラス・T・スチュワート/BMXバンディッツ)
かつてニルヴァーナのカート・コバーンはニューヨークのラジオ番組で「もしニルヴァーナでなはく他のバンドに入れるなら、それはBMXバンディッツだ」と発言し、ファンであることを公言した。
スコットランド最大の都市グラスゴー。最大とはいえ、人口は約60万人。東京が900万人、ロンドンが810万人なのだから、なんとも可愛らしい規模の街だ。日本の人口数だけでいえば最少の鳥取県が58万人なのでほぼ同規模といったところか。まあ、間違いなく日本でたとえるなら「地方」である。
そんな可愛らしい規模の街に全世界規模で大きな影響を与えるロックシーンがある。音も場所もメインストリームの枠から外れてしまっているサバービア(郊外)から、ジーザス・アンド・メリーチェーン、ティーンエイジ・ファンクラブ、ヴァセリンズ、モグワイ、フランツ・フェルディナンドなど個性的で魅力的なミュージシャンを数多く輩出し続けている。そんなサバービアミュージックシティ・グラスゴーの系譜を語るうえで外せないバンド、それがBMXバンディッツである。
BMXバンディッツ 映画『SERIOUS DRUGS』より
そんな彼らの代表曲であり、リーダー、ダグラス・T・スチュワート(以下ダグラス)の自伝的作品『SERIOUS DRUGS』。そのタイトルを冠したBMXバンディッツのドキュメンタリー映画が11月3日からアップリンク・ファクトリーで2日間だけ上映される。
「いつの日かバンディッツの映画を撮りたい」
「監督のジム・バーンズ(以下ジム)とは5年前くらいにモノレール(パステルズのスティーブン・パステルが名付け親のグラスゴーにある複合レコードショップ)で出会ったんだ」。
10月18日夕方6時の渋谷O-nest。その夜行われるライブのリハを終えたばかりのダグラスはとても穏やかで口調で監督との出会いについて静かに語りはじめた。大きな体、印象的な優しい眼差し、そこに居るだけでまるでマイナスイオンを放つようなその独特な佇まいは森の精霊のようにすら感じた。
来日公演を行ったBMXバンディッツのダグラス(左)、ユージン・ケリー(右) 渋谷O-nestのライヴより
「僕がお店に入ると、ある男性が歩み寄って来て僕にこう話しかけてきた。『僕はBMXバンディッツの大ファンなんです。実は何年か前に少しうつっぽくなって辛い時期があったんです。だけどその頃ずっとBMXバンディッツを部屋で聞き、あなたの歌詞やメロディーに励まされて自分でも不思議なんだけど少しづつよくなっていったんです』」。
ダグラス自身うつに悩まされながら音楽活動を続けていたという過去があった。他人事とは思えなかった。
「そして彼はこう続けたんだ『だから、僕はいつの日かバンディッツのドキュメンタリー映画を撮るのが夢なんです。世界のどこかにいる僕みたいな人たちに観てもらいたいし、何よりそれがバンディッツにできる僕からのプレゼントなんです』」。
ダグラスはその言葉を聞いて心底感動したという。自身がうつに悩まされ、そのつらさが痛いほどわかるのに、ほかの誰でもない自ら作った曲が、うつに悩まされていた一人の男を救ったという事実に。
「僕はすっかり感激してしまい、もちろんいいよってその場ですぐOKしたんだ。たった何分前かに初めてあったばかりの男にだよ。すぐに撮っておくれよって。そこから映画は動きはじめたんだ」。
音楽がこの世を救うなんてことはもはや盲信でしかないかもしれない。だが多くの仲間に支えられてうつから立ち直ったダグラスと、BMXバンディッツの曲で、うつから立ち直ったジムがダグラスと出会い映画を完成させたという事実は、音楽の持つ不思議な力を信じるに値する素晴らしいエピソードだ。
映画『SERIOUS DRUGS』より
23年たっても聴きたいというファンがいてくれることが嬉しい
映画の劇中でダグラスはこんなことを言っている。
「ネガティブなものをポジティブに変えられる何かがあればいいと思うし、BMXバンディッツにはそれを伝える力がある」。
今年10月にBMXバンディッツのリーダー・ダグラス、ノーマン・ブレイク/ティーンエイジ・ファンクラブ(以下ノーマン)、ユージン・ケリー/ヴァセリンズ(以下ユージン)の3人編成で来日公演が行われた。この組み合わせでのライブは世界初、つまり日本だけのスペシャルツアーだった。
企画発案者はダグラスと今回のツアーにゲスト・キーボーディストとして帯同したはしもとさゆり(miette-one)。日本のプロモーターであるSWEET DREAMS PRESSの福田氏が奔走し実現に至った。
「日本に初めて来た91年はユージンがいた。だけどノーマンはいなかった。BMXバンディッツで3人が在籍してた時期もあったけど3人で日本に来るのは初めてなんだ。初来日から23年。そんなに年月がたったのかと考えちゃうけど、23年経っても日本に来られることはすごく嬉しいことだし、23年たっても聴きたいというファンがいてくれることはもっと嬉しいことなんだ。日本が大好きだというのはいろんなミュージシャンがよく言ってて、在り来たりですごく恥ずかしいけど、でも本当に心から日本が大好きだよ」。
(インタビュー・文:石井雅之)
渋谷O-nestの来日公演より、ノーマン(右)、ダグラス(中央)、ユージン(右)
ダグラス(BMXバンディッツ)来日記念企画
映画『SERIOUS DRUGS』上映会&来日ツアーレポ&ミニライブ
2013年11月3日(日)渋谷アップリンク・ファクトリー
BMXバンディッツのドキュメンタリー映画『SERIOUS DRUGS』&スライドショー付きジャパンツアーレポート&スペシャルミニライブを行ないます。
劇場で彼らのドキュメンタリー映画が上映される最初で最後のチャンスになるかも知れません。グラスゴー音楽ファン必見!是非お見逃しなく。
18:00開場 18:30上映
料金:1,500円(別途ドリンク代)
ゲスト:
タカタタイスケ(PLECTRUM)
コマツヒロホ
さや&植野(tenniscoats)
ご予約は下記より
http://www.uplink.co.jp/event/2013/18437
※11月4日(月・祝)は映画上映のみとなります。
映画『SERIOUS DRUGS』
監督:ジム・バーンズ
(2012/カラー/92分)
映画『SERIOUS DRUGS』より
これは偉大で愛すべきやつらについての最高に愛しい映画だ!──アラン・マッギー
バンド結成から25周年を記念して製作。バンディッツの中心人物ダグラス・T・スチュワートの人生、音楽、うつ病との闘い、そして彼が持つ儚さと強さが同居した人間的魅力を探る。
▼『SERIOUS DRUGS』予告編