左:映画『立候補』より (C) 2013 word&sentence 右:『選挙2』より (C) 2013 Laboratory X,Inc
アベノミクスがマスコミの世界で盛り上がってるがあまり熱狂できない捻くれてる私は、このままムード(気分)で一方向に進んでくととんでもない事になるかもなーと悶々と落ち込んでいる時に映画『立候補』(藤岡利充監督作・マック赤坂・羽柴秀吉・外山恒一ほか)を鑑賞したのです。
内容は2011年は秋、大坂府知事選にマック赤坂(以下マック)は立候補する。2012年の東京都知事選にも立候補していたユニークな候補者で、「スマイル!!」というメッセージ(ギャグ?)は、心には残るが真面目にやってるのか?目立ちたいから?もしかして趣味?供託金300万円はもったいなくないのか?圧倒的に負ける感じがするのです。マックの息子さんは、父親の選挙活動・スマイルセラピーについて苦虫を噛み潰したかのように語り、笑ってはいけないけど、爆笑してしまったのです。
映画『立候補』より (C) 2013 word&sentence
四面楚歌のマックを守るのは、マックの秘書櫻井だけで、櫻井はマックの貿易会社の社員募集で応募し、正社員となり秘書になる。櫻井は家族があり世知辛い事情もあるけれど、マックの選挙活動において、秘書、SP、一人何役もこなす。対する維新の会は、組織力、支援者など圧倒的なのです。
映画『立候補』より (C) 2013 word&sentence
なんかヘンテコなマックの孤軍奮闘する様に感情移入してしまう私がいたのです。ドキュメント映画なのですが、丁寧に泡沫と言われる候補者を追い掛け、SP、警察、公安に制止されるがギリギリまで粘って撮影し、まるで劇映画を観ているような「奇跡的」な瞬間があるのです。特にラストの秋葉原は名場面で、鳥肌がたったのです。ひたむきな思いは大切で、敢えて大多数に挑むマック陣営の姿は、美しいのでした。ユニークで爆笑できラストに爆発し心が動きまくる奇跡的な真実がある傑作なのです。
スマイル!とチャレンジ精神は大切だ!!と決意した時に都議選が終わり、昨年の衆院選のように一方向な結果に「???」が出てる時に観察映画『選挙2』(想田和弘監督作)を鑑賞したのです。
映画『立候補』と異なるドキュメントの手法で説明的なモノ(ナレーション・BGMなど)は排除して、予定調和を撮らないかなりストイックなドキュメントの手法なのです。
内容は2011年4月主夫・ライター山内和彦(以下山さん)は、完全無所属で、川崎市議会選挙に出馬する。スローガンは「脱原発」で、小さな子供を育てる普通の主夫として「怒り」で立候補する。組織も資金もない山さんは、所謂ドブ板選挙活動、街頭演説、タスキ、握手なども封印して戦う。
映画『選挙2』より (C) 2013 Laboratory X,Inc.
かなり淡々としたストイックな手法で、山さんの原発に対する怒りと政治に対する怒りは理解ができるのですが、街頭演説もないので、山さんに余裕があるように見えて(山さんのキャラクターかもしれないが)なかなか『選挙2』の世界に入り込めず山さんに対する「?」が増えていく。2011年の4月と言えば、大震災と福島原発事故で、放射能の問題は非常にデリケートで、嘘っぱちなのが明るみになってた頃なのです。真実が何か分らない不安と怒りが交錯していた時だったなーと、あの時の空気をリアルに思い出したのです。選挙も自粛ムードで、選挙カーも無音で走るだけという不思議な事実が映っている。
山さんは2005年補欠選の小泉自民党の落下傘候補で出馬し、組織力を使った徹底的なドブ板選挙で当選し川崎市議員となる。07年の統一地方選挙では、自民党に公認されず不出馬、浪人し主夫となっていた。以前の選挙で戦った議員は自粛ムードの中、できるだけ普通の選挙戦をしている。どの候補も市民は無関心そうで、マスク姿が多いのは、放射能のせいなの?、淡々とした日常と震災直後の危機の非日常が交錯している。公園で元気に遊ぶ子供達の笑顔の希望にほっとするのです。
映画『選挙2』より (C) 2013 Laboratory X,Inc.
以前共に戦った自民党先輩議員の街頭演説に想田監督はカメラをむけると、議員が怒りだし、撮影を拒否しいちゃもんをつけだす。肖像権と表現の自由、権力の問題が突きけられる。これは、もしスラップ訴訟(組織と資金力のある方が、個人を訴える)になったら大変な事だとハラハラして観たのです。『選挙2』を観て何故か「?」を感じたので、前作『選挙』を鑑賞したのです。『選挙2』とは全く違い、山さんも若い、それ故に情熱も感じる。『選挙2』と違い自民党公認の落下傘候補の新人の世知辛さと組織力とドブ板選挙の苦労と逆に滑稽さが写し出されていたのです。『選挙』から『選挙2』の山さんは、選挙のアプローチは正反対ですが、それは色々経験して良い意味で変わった(成長)したのだなーと感じたのです。分かりやすい答えやメッセージはないが、『選挙』と『選挙2』の投げかける「日本の政治と選挙システム」の多くの問題提起は、非常に重要である。当たり前に思っていた事、思い込みに対する自らへ「?」を感じて、多いに考えさせられたのです。個人的には、山さんが国政に出て『選挙3』ができたらなーと夢をみるのでした。
結論、参院選挙前に鑑賞して、感じて、考えて選挙にいってほしい両作品。このような作品が生まれるのは本当に良い事だと思うのです。マイノリティーだからこそ見える真実も感じとってほしいのでした。まー兎も角、一方向に熱狂するのと騙され利用されるのは勘弁な!!脱グローバルバカ!!
【映画『立候補』『選挙2』を観て思い出したキーワード】
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■松本章(まつもとあきら、音楽・ふーてんき)プロフィール
1973年生まれ、大阪芸術大学映像学科卒。本名松本章、伊勢男子、とあるバンドを脱退し現在高円寺当りに在住。ふーてんきの音楽担当。熊切和嘉監督作品、山下敦弘初期作品の映画音楽をプロデュース。熊切和嘉監督『ノン子36歳(家事手伝い)』、内藤隆嗣監督『不灯港』、山崎裕監督『トルソ』、今泉力哉監督『こっぴどい猫』、内藤隆嗣監督『狼の生活』、吉田浩太監督『オチキ』などの音楽を手掛けた。
Twitterは @akiraise
blogは http://ameblo.jp/akira-toumei/
映画『立候補』
ポレポレ東中野にて上映中
2011年11月、大阪府知事・市長選挙。橋下徹が仕掛けたことにより注目を浴びる中で立候補した、マック赤坂、高橋正明、中村勝、岸田修といった泡沫候補たち。そして、泡沫候補として知られる外山恒一や羽柴誠三秀吉。彼らはほぼ敗戦濃厚な選挙に、懲りもせずになぜ立候補するのか。その真相に迫る。
出演:マック赤坂・羽柴誠三秀吉・外山恒一ほか
監督:藤岡利充
製作&撮影:木野内哲也
音楽:田戸達英(主題曲)・岩崎太整・佐藤ひろのすけ
CW:初海淳
AD:原耕一・トラウト
宣伝:ポレポレ東中野
宣伝配給:明るい立候補推進委員会
(C)2013 word&sentence
(2013年/日本/DV/100分/ステレオ)
公式サイト:http://ritsukouho.com/
映画『選挙2』
シアター・イメージフォーラムほかロードショー上映中
舞台は、2011年4月の川崎市議会選挙。震災で実施が危ぶまれた、あの統一地方選挙だ。映画『選挙』(07年)では自民党の落下傘候補だった「山さん」こと山内和彦が、完全無所属で出馬した。スローガンは「脱原発」。自粛ムードと原発「安全」報道の中、候補者たちは原発問題を積極的に取り上げようとしない。小さな息子のいる山さんはその状況に怒りを感じ、急遽、立候補を決意したのだ。かつて小泉自民党の組織力と徹底的なドブ板戦で初当選した山さん。しかし、今度は違う。組織なし、カネなし、看板なし。準備もなし。選挙カーや事務所を使わず、タスキや握手も封印する豹変ぶりだ。ないないづくしの山さんに、果たして勝ち目は?
監督・製作・撮影・編集:想田和弘
製作補佐:柏木規与子
出演:山内和彦 他
配給・宣伝:東風
(2013年/日本・アメリカ/149分)
公式サイト:http://senkyo2.com/