骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2013-05-24 20:00


男女間の友情は成り立つ?「もちろん!でも長く付き合った人と友情を築くのは難しい」

自らの体験を元に主演・脚本を手がけた『セレステ∞ジェシー』ラシダ・ジョーンズのシナリオ術
 男女間の友情は成り立つ?「もちろん!でも長く付き合った人と友情を築くのは難しい」
映画『セレステ∞ジェシー』のラシダ・ジョーンズ photo:OKAMURA MASAHIR

デヴィッド・フィンチャー監督の『ソーシャル・ネットワーク』(2010年)や『デス・オブ・ア・ダイナスティ / HIP HOPは死なないぜ!』(2005年)などに出演する女優ラシダ・ジョーンズが自らの体験を元にシナリオを手がけ、主演も果たした『セレステ∞ジェシー』が25日より公開。学生時代の恋愛からそのまま結婚、息はぴったりなのに、それぞれが進む道とキャリアの違いから、離婚を前提に別居している男女を描いている。現在、注目の脚本家として脚光を浴びる彼女が、シナリオの作り方を語った。

大人になるに従って向いている方向が変わり、別れていくカップルを描く

── なぜこの脚本を書こうとしたのですか?

私やウィル(・マコーマック/共同脚本)というよりも周囲のカップルが、大人になるに従って向いている方向が変わり、お互いに一緒にいるのも違うんじゃないかとなって別れていくというケースが多かったので、そういうことをホンにしてみようかなと思いました。それに、書くことでイマジネーションをどこまで広げられるかということに興味もあったの。

webdice_セレステ∞ジェシー:サブ4
映画『セレステ∞ジェシー』より (C)C & J Forever, LLC All rights reserved.

── この映画を作るにあたって参考にした作品はありますか?

別れた相手と友達でいられるかというテーマだから、友情と恋愛をテーマにした『恋人たちの予感』や、ウディ・アレンの『アニー・ホール』などは参考にしました。『アニー・ホール』は私の大好きな映画なの。

── この作品ではセレステをどのようなキャラクターとして描きたかったのですか?

ロマンチック・コメディが好きなんだけど、ロマンチック・コメディでいつも気になるのはキャリアも上手くいっていて、欠点は男がいないという女性を描いていることが多いということ。成功しているから、それが邪魔をしているのだと決めつけている描き方が多いの。でもそんなことはなくて、恋人がいないのは女性自身に欠点があるからなのに、そこを描いていないのよ。セレステは仕事面では上手くいっている反面、人間関係が上手くいっていない。見た人に「なんなのこの女」って思わせるような描き方をしたかったの。それに、映画で描かれる別れのシーンは美しいけど、実生活で誰かと別れた時って、女性はメイクもファッションもボロボロになるし、スナック菓子のドカ食いとかしちゃうでしょ? そのリアルさを描きたかった。

webdice_セレステ∞ジェシー:サブ3
映画『セレステ∞ジェシー』より (C)C & J Forever, LLC All rights reserved.

中二病のように精神的に成長しきれていない男性も多い

── 脚本を執筆するにあたり、セレステ役は最初から自分と決めて書いたのですか?

そう、最初は私とウィルが演じるつもりであて書きをしていたけれど、ウィルが精神的に大人になったのでジェシーの役はアンディ・サムバーグがいいだろうっていうことになったの。ウィルはいくつか制作のオファーを貰っていたけれど、キャスティングを自由にできない条件のものがあったので、そういう作品は断ってキャスティングを自由にやらせてほしいという条件がOKなところを探したの。

── 例えば失恋のように、人生ままならないと思うような経験はあなたにもありましたか? それをセレステのキャラクターに反映させましたか?

これはアメリカ的なのかもしれないけれど、20代や30代の女性たちが「セレステと同じ体験をしました」「失恋してずっと泣いていました」「自分の人生を再考しないといけないと思いました」などと言っていました。私の体験をベースに演じたところもあります。私は別れが苦手だから、失恋したら他人の目を気にしなくなったりということも自分が経験したことなんです。

webdice_セレステ∞ジェシー:サブ2
映画『セレステ∞ジェシー』より (C)C & J Forever, LLC All rights reserved.

── ジェシーは現代の男性像を象徴しているように思えますが?

女性がどんどんどんどん変化して進化していく中で、男性は改めて男性性を見直す機会がなかったと思うの。感受性の強い男性も多くなってきたし。男女のパワーバランス的にそうなっているということもあるのでは? 確かに男らしいと思う男性は減ってきているかもしれないわね。中二病(※日本に来てこの言葉を知り、言いえて妙だと気に入る)のように子供である時期が長くて精神的に成長しきれていない男性も多いと思う。

── 自分が書いた脚本ということもありセレステのことを全て判って役者としてはやりやすかったのではないですか?

私はメソッド系の役者ではないので、今まで演じてきた女性のキャラクターは似ていて、頼りがいがあったり、まともで良い恋人、良い妻などでした。今回は強烈で上から目線のキャラクター、そういう役は初めてだったけれど、自分が書いているのだから演じることは難しくなかったです。でも演じた時より脚本を書いていたときの方が私はセレステに似ていたの。撮影が近づくにつれてセレステは何でひとつの方向しか見ていないのかな? と距離ができてきて、そのうちに彼女がかわいそうに見えてきたの。セレステもあんなに突き落とされるとは思っていなかったんじゃない?

例えば、ジェシーとリップクリームやベビーコーンを使ってふざけるシーンはウィルとファーマーズマーケットに行った時によくふざけてやっていたの(笑)最初は脚本に入れていなかったんだけど、下品すぎず、かわいらくて二人の関係性がよく分かるやり取りだと思ったから、盛り込んだの。私とウィルの共通のユーモアはちょっと下品。この人とは下ネタは苦手、というのは友人にはなれないか、相手に恋心があるからじゃない? 友達になるならそういう感覚もシェアできないとね。

webdice_セレステ∞ジェシー:サブ1
映画『セレステ∞ジェシー』より (C)C & J Forever, LLC All rights reserved.

── あなたは男女間の友情は成り立つと思いますか?

もちろん! 親友になれる。現代において男女だと白黒つけることもないし、実際私とウィルもいい関係だしね!でも長く付き合った人と友情を築くのはとても難しいことかもしれない……。

── セレステは自分らしく生きている女性ですが、あなたにとって自分らしさとは何ですか?

20代の時は他人に見られることばかりが気になっていたけど、年を重ねるごとに自分らしさがクリアになってきたと思います。段々と自分の得意不得意が分かってくるの。だから、得意なことをどんどん伸ばして、不得意なことは、できなくてもあまり執着しないようにすればいいんじゃないかなぁと思うの。そして、いつでも自分に誠実であればそれでいいと思う。

(公式インタビューより)



ラシダ・ジョーンズ プロフィール

1976年、カリフォルニア州・ロサンゼルス出身。父親はミュージシャンのクインシー・ジョーンズ、母親は女優のペギー・リプトン。ハーバード大を卒業後、97年テレビミニシリーズ「The Last Don」で女優デビュー。テレビシリーズ『ボストン・ハブリック』(00)、『ジ・オフィス』(05~)等への出演で注目を集める。女優のほか、ミュージシャンやモデルとしても活躍し、雑誌ピープル誌では「世界で最も美しい女性」部門に3回、Harper's Bazaar誌では「アメリカのベスト・ドレッサー」部門に選出される等ハリウッドセレブとしても絶大な人気を誇る。映画の出演作には、デヴィッド・フィンチャー監督の『ソーシャル・ネットワーク』(10)、『ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して』(10)、『ザ・マペッツ』(11)などコメディからドラマまでこなす多才ぶりを発揮している。
本作は、彼女の執筆パートナーであるウィル・マコーマックと共同で書いたもので、二人はバラエティー誌に”注目の脚本家”としてリストアップされ、2013年もインディペンデント・スピリット・アワードでは第一回脚本賞、ブラックリールアワードでは、主演女優賞・脚本賞にノミネートされるなど、ハリウッドで脚本家としての地位も確立している。




webdice_セレステ∞ジェシー:サブ5
映画『セレステ∞ジェシー』より (C)C & J Forever, LLC All rights reserved.

映画『セレステ∞ジェシー』
5月25日(土)、渋谷シネクイントほか全国ロードショー

セレステとジェシーは学生時代に恋に落ち、そのまま結婚。好きな音楽も、食べ物の好みも、ノリもぴったりなセレステとジェシー。いつも一緒で、ふざけて笑い合う2人は、誰もが羨むパーフェクトな関係。ただひとつ、離婚を前提に別居していることを除いては──。
メディア・コンサルティング会社を経営し、忙しくも充実した日々を送るセレステ。一方、夫のジェシーは、気ままな生活でヒマを持て余す売れないアーティスト。学生時代から変わらぬ彼と、着実にキャリアを重ねる彼女。そんな関係は、30代に突入しても相変わらず。ついにセレステは離婚を決意する。

監督:リー・トランド・クリーガー
脚本:ラシダ・ジョーンズ、ウィル・マコーマック
出演:ラシダ・ジョーンズ、アンディ・サムバーグ、イライジャ・ウッド、エマ・ロバーツ
2012年/アメリカ/92分/カラー/シネマスコープ/ドルビーSRD
(C)C & J Forever, LLC All rights reserved.

公式サイト:http://celeste-and-jesse.com/
公式twitter:https://twitter.com/C_and_J_movie

▼『セレステ∞ジェシー』予告編


キーワード:

ラシダ・ジョーンズ


レビュー(0)


コメント(0)