映画『ミラクルツインズ』より
1972年、日本人の母親とドイツ人の父親のもとに生まれた一卵性双生児姉妹:アナベル・万里子とイサベル・百合子。彼女達は生まれながらにして嚢胞性線維症(Cystic Fibrosis 通称CF)という肺の難病を抱え、毎日苦しい治療を重ねながも、学び、成長し、スタンフォード大学を卒業した。それぞれ遺伝カウンセラー、ソーシャルワーカーとして働いていたある日、ついに肺が機能しなくなり、それぞれ両肺移植を受けることによって、絶望の底から奇跡的な生還を果たした。
そんな彼女達のたぐい稀な人生を綴ったドキュメンタリー『ミラクルツインズ』の指揮をとるのは、 アカデミー賞ノミネートの実績を持つマーク・スモロウィッツ監督。本編は、死に直面したステンツェル姉妹が、移植後、よみがえり、臓器移植のスポークスウーマンとして、またアスリートとして、新たな人生を歩んでいく姿を、実に繊細に、忠実に描写している。
アナベル&イサベル インタビュー
「臓器移植によって移植者とドナーの
どちらも救われることを伝えたい」
── 双子の姉妹がお互いを支え合って成長し、難病を抱えつつも、前向きに毎日を大切に生きる姿に胸を打たれました。なぜ、苦しい現状にとらわれず前に進むことが出来たのですか?
アナベル:これまでの経験から、今いる状況でベストをつくすことを学びました。アメリカには、「人生は10パーセントは自分で作るもので、 90パーセントはそれをどう引き受けるかだ」という格言があります。ネガティブでいては、自分と周囲の人々を苦しめることになってしまいます。病気でも人生を楽しむことはできるし、その経験を成長するチャンスとして使えばいいのです。両親からポジティブに生きる術を教わったと思いますし、もしかすると遺伝なのかもしれません。でも、一番のお手本になったのは、同じCFの仲間たちです。つらいとき、一番いいのは、自分のことをわかってくれて、助けてくれる友達を持つことです。そうすることで友情も深まります。
イサベル:自分の周囲がポジティブな人ばかりだったのが大きいです。どんなに体調が悪くても、友人や家族がそばにいて話を聞いてくれるので、彼らの愛情を感じてポジティブになれるのです。それは希望を持つことです。私は今まで、もっと効果のある薬ができるという希望、移植後にはもっといい人生があるという希望を持って生きてきました。さらには愛する者に囲まれて安らかに死ぬという希望も持っているので、それが人生のバネになるのです。ポジティブでいることは、辛いことを見てみぬふりするのとは違います。落ち込んだり、泣いたり、孤独を感じたりするのは、すべて自然な人間の感情です。ネガティブな感情を経験しなければ、ポジティブになることを学べません。
映画『ミラクルツインズ』より
── 作品の中で日本の臓器移植について触れていますが、今作は日本の私たちが臓器移植の理解を深めるための契機になると思います。
アナベル:メッセージを伝えるうえで心がけている点は、押しつけたり、説得しようとしたり、無理強いしたりしないことです。臓器移植への理解を深めるには、具体的な例を挙げて人々の共感を得ることが一番大切なのです。
私たちの役目は自分の経験を皆さんの前で話して、臓器移植によって人の命を救い、役立つことができると分かってもらうことです。この作品に出てくる人たち、私のドナーの家族やアンナ・モドリンもそうです。自分の経験を語ることで、臓器移植についてよく知らない人たちに伝えたいのです。移植によって “命の贈り物”が受け継がれ、ドナー家族の悲しみも和らげることができるとね。
相手が日本人でもアメリカ人でも、意見を押しつければ反発を買うだけです。臓器提供者として人の命を救うかどうか、決断するのはその人自身です。私たちは、それを考えるきっかけを与えたいと思っています。
イサベル:日本でもアメリカでも、私たちは自分の考えを押しつけるつもりはありません。臓器移植についてどう考えるかは、全く個人的な問題です。そして、死をどう捉えるか、遺体をどうするかも、その人自身が決めることだと思います。
私たちは自分やドナーの経験を通して、臓器移植によって移植者とドナーのどちらも救われるということを伝えたいだけです。臓器移植についてよく知らずに、何となく抵抗を感じている人もいます。だから、もっと多くの人たちに現状を知ってもらい、話し合う機会を作りたい。そのうえで、ドナーになるかどうかを、自分で決断してほしいのです。
映画『ミラクルツインズ』より
── アメリカの医療制度では、低所得者の方、移民の方と多くの方が最低限の医療を受けられず亡くなる人が80,000人いると伺いました。お二人も幼いころから、入退院を繰り返し大変なご負担があったと思います。アメリカの医療制度の現状についてのご意見をお聞かせください。
アナベル:アメリカの医療制度には間違いなく問題があります。高額で、特に低所得者層には手が届きません。アメリカ人のライフスタイルが、彼らの健康問題と直結していることも大きいです。また、告訴を恐れて煩雑な書類手続きなどの無駄がとても多いのです。州の保険制度に未加入の人たちはほとんどがワーキングプア層です。ほとんどのアメリカ人は勤務先の会社で医療保険に加入していますが、会社側は従業員の医療保険を選べます。その選択が最良のものでないことが多く、高額な負担を強いられる場合が多々あります。
医学部の費用も途方もなく高いですし、医療制度全体を変える必要があり、問題が何層にも重なっているのです。
イサベル:確かにアメリカの医療制度は崩壊しています。問題が複雑に絡み合っていますが、政府のセイフティネットは支持します。医療は、たとえば運転免許証やパスポートと同様に、国民全員に与えられるべき権利だと思います。ところが、この国では私企業の傘下に置かれてしまって、利益の追順が目的になっています。それは大きな間違いで、 医療は健康や命を守るためのもので、お金の有無で区別されるべきではありません。民間保険に加入できない人のための公的な保険と、病院の質を上げるためにも病院に償還する民間保険の2種類が必要だと思います。
映画『ミラクルツインズ』より
── アメリカの医療システムが原因で移植を受けることが出来ない方が多くいるということですか?
アナベル:アメリカの低所得者層の人々が臓器移植を受けられない場合には、貧困以外の理由も考えられます。家庭の崩壊、教育の欠如、医療制度を利用するための知識の不足、麻薬やアルコールへの依存などが、移植を受けるのをより難しくしているのです。
日本でもアメリカでも、治療を受ける機会は誰にでも公平に与えられるべきです。アメリカでは、移植を受ける資格があると認められたすべての人のために、医療費の助成制度や基金プログラムがあります。だから、経済的なハンディキャップは、そう大きな問題ではありません。何よりも大切なのは、病気を乗り越えようとする意志です。低所得者層の家族でも、基金プログラムによって臓器移植を受けた人たちもいます。「絶対に生きたい」という強い意志の力によって、移植を受ける機会を勝ち取ったのです。ただ、私には日本の状況はよく分かりません。
イサベル:医療保険の適用を受けられずに苦しむアメリカ人がいると、よくメディアで取り上げられています。でも、貧しい人たちは移植を受けるために、公的医療保険を利用できます。移植施設に入院中の生活費や交通費を払うのが難しければ、基金プログラムや助成制度を利用することもできます。教会との関係が深いコミュニティーなので、同じ教会に所属する人たちのサポートを受けた友人もいます。大切なのは、貧しくても何とか治療費を捻出する方法を見つけ出すことです。
アメリカでは、中所得者層で移植が必要な患者の中にも、医療保険に入っていなかったり、保険金が下りずに苦しんでいる人たちがいます。公的医療保険に加入する資格もないため、高額な医療費の支払いで家を失ったり、貯金を使い果たす場合もあります。
多くの人たちは勤務先で加入する医療保険を利用して、臓器移植を受けることができます。現在では臓器移植は臓器不全の治療として、保険の適用が認められるからです。
映画『ミラクルツインズ』
2012年11月10日(土)より、渋谷アップリンク、第七藝術劇場ほか、全国順次公開
監督・プロデューサー:マーク・スモロウィッツ
プロデューサー: アンドリュー・バーンズ
出演:アナベル・ステンツェル、イサベル・ステンツェル・バーンズ
原題:The Power of Two
配給:アップリンク
協力:社団法人臓器移植ネットワーク
2011年/アメリカ・日本/94分/英語・日本語
(c)Twin Triumph Productions, LLC
公式サイト:http://www.uplink.co.jp/miracletwins/
『ミラクル・ツインズ』特別先行上映
2012年10月6日(土)11:00開演
会場:第七藝術劇場(大阪市淀川区十三本町1-7-27-6F)[阪急:梅田駅より電車で5分/十三駅下車西口より3分]
TEL:06-6302-2073
上映後、アナベル・ステンツェルさん、イサベル・ステンツェル・バーンズさんトークショー
料金:前売1,200円、 第七藝術劇場窓口限定10/5までの販売
※10/6のみお使いいただける専用前売券です
当日一般1,500円、専門・大学生1,300円、中・高・シニア・会員1,000円
http://www.nanagei.com/
大阪先行上映会、東京試写会に各5名様をご招待
公開に先立ち、本作品の先行上映会、試写会を観て400~600字程度のレビューを書いて頂ける方、各5名様をご招待します。応募方法は下記から。ご応募の際、webDICEのアカウントをお持ちでない方は新規登録が必要です。(※当選された場合に必ず試写会に参加でき、レビューを書いてくださる方の応募をお待ちしています)
【大阪】『ミラクル・ツインズ』特別先行上映
日時:2012年10月6日(土)11:00開映
上映後、アナベル・ステンツェルさん、イサベル・ステンツェル・バーンズさんトークショー
会場:第七藝術劇場(大阪市淀川区十三本町1-7-27-6F)
【東京】『ミラクルツインズ』試写会
日時:2012年10月7日(日)18:30開場/19:00開映
会場:四谷区民ホール(新宿区内藤町87番地)
【応募方法】
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■応募締切:2012年10月1日(月)午前9:00
※当選者の方のみ、ご応募いただいたアカウントに10月1日(月)中にメッセージにてご連絡いたします。
▼『ミラクルツインズ』海外版予告編(日本語字幕付き)