映画『わたしたちの宣戦布告』より
女優ヴァレリー・ドンゼッリが、恋人ジェレミー・エルカイムとの間に起こった実話を自ら監督した今作は、息子を襲った回復する可能性がわずか10パーセントという病気、そして世間からの「病人なら病人らしく」という好奇の眼差しに真っ向から闘いを挑む。この恋人の名前がロミオとジュリエットであることにも象徴されているように、「わたしたちふたり」対「世界」というラブストーリーの構造は古くから映画や小説で使い古されている。しかし、今作は「難病もの」という陰鬱でお涙頂戴なイメージを軽々と飛び越える自由さに満ちている。
映画『わたしたちの宣戦布告』より
ふたりはインタビューで、少数精鋭の撮影体制と一眼レフカメラでの撮影による機動力が演出に大きな影響を与えたと語る。しかし同時に、今作がふたりにまつわる事件の単なるドキュメントではなく、しっかりとした脚本と女優としての矜持によりストーリーを組み立てていったことも分かる。できるかぎり現実の状況を取り込みながら、物語を語ることに意識的であったことは、今作を観た後の、新しいものを受け止めたという爽やかな印象に大きく影響していると思う
映画『わたしたちの宣戦布告』より
ローリー・アンダーソンによる80年代の代表曲で、現在も数多くのアーティストがサンプリングする「オー・スーパーマン」の効果的な使い方など、音楽についてもジャンルと年代を超えたセレクトにより、彼らの自由な感覚が発揮されている。サウンドトラック盤は、独立したコンピレーションとしても楽しめる内容となっている。上映館で販売されているので、ぜひ聴いてみてほしい。
映画『わたしたちの宣戦布告』より
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映画『わたしたちの宣戦布告』
2012年9月15日(土)、Bunkamura ル・シネマ、シネ・リーブル梅田ほか全国順次公開
「ロメオとジュリエット」の名をもつふたりは、出会った瞬間に恋に落ちた。
息子アダムが生まれ、幸せな日々が約束されているように見えたが、泣き止まない、歩かないアダムを「普通の子と違う」と感じたふたりは、アダムを病院へ連れて行く。
精密検査の結果、アダムは脳腫瘍と診断された。
小児がんの権威と言われる名医により、緊急手術をすることになるアダム。腫瘍はほぼ切除し、手術自体は成功したものの、腫瘍は悪性だった。
双方の家族には「手術は成功した」とだけ伝え、ふたりは、アダムを支え、闘うことを決意する。
監督:ヴァレリー・ドンゼッリ
出演:ヴァレリー・ドンゼッリ、ジェレミー・エルカイム、セザール・デセック(アダム18ヶ月)、ガブリエル・エルカイム(アダム8歳)
プロデューサー エドゥアール・ヴェイユ
脚本:ヴァレリー・ドンゼッリ、ジェレミー・エルカイム
撮影:セバスチャン・ブュッシュマン
編集:ポーリーヌ・ガイヤール
録音:アンドレ・リゴー
配給・宣伝:アップリンク
2011年/フランス/100分/HD/カラー/シネマスコープ/ドルビーデジタル
公式サイト:http://www.uplink.co.jp/sensenfukoku/
▼『わたしたちの宣戦布告』予告編