『死なない子供、荒川修作』より
住むと身体の潜在能力が引き出され死ななくなるという三鷹天命反転住宅をはじめ、我々の常識を超えた表現を続けたものの2010年に惜しくもこの世を去った前衛美術家・荒川修作。彼の生涯を追ったドキュメンタリー『死なない子供、荒川修作』 がDVDで発売。リリースに合わせた記念イベントが、舞台となった三鷹天命反転住宅をはじめ各所で開催される。渋谷慶一郎を音楽に、浅野忠信をナレーションに迎えた今作を制作した監督・山岡信貴自身も、2006年の11月から三鷹天命反転住宅の住民であり、編集作業もこの住宅内で行われた。
「荒川さんの話って、理解できた、という瞬間があるんです。でも常に動き続けている世界と同じく荒川さんの着地点も必然的に動き続けざるを得ないから、理解できたと思ってしまうことは、実は危ないこと。編集ができた、と思ってコーヒーを飲みにいったときに床の凸凹に躓いて、あれっいう気持ちになったり、そこで『違うぞ』ということを部屋が教えてくれる。そうして立ち止まることができたのは、ここで編集できたから」。
『死なない子供、荒川修作』の山岡信貴監督、作品にも登場する三鷹天命反転住宅にて。
住宅に住んでからの変化を教えてほしいという荒川氏からの要望に応え、手紙を書くような気持ちで、映像で記録を残し始めたのが、今作制作のきっかけだという。2010年の劇場公開後、荒川修作の哲学より、荒川修作という存在自体に衝撃を受けたという感想や、今まで知らなかった人が知ってくれるという反応が多かったそうだ。
「荒川さんを撮っていくなかで、すごく明確な根拠に基づいて『死なない』ということを言ってるんだ、ということが解った。それはともすると宗教的に聞こえたり、あやしげに聞こえる可能性もある。それが、荒川さんの思想のいちばん大事なところを解ってもらえない理由でもあるので、僕がここで体感したことに基づいて映画を作ることで、新たな荒川修作の見え方、切り口を提供できればと思いました」。
宇宙物理学者の佐治晴夫氏のインタビューを加えることで、荒川氏の科学者としての側面を際立たせたり、天命反転住宅で生活する人々と、この住宅で生まれた山岡監督の子供の記録映像を織り交ぜることで、必ずしも荒川賛美だけに終わらせなかった構成については、「それぞれに『死なない』という解釈がまったく違う。でもこの映画は僕の思いを披歴する場ではないので、それぞれに違う荒川解釈を公平に入れれば、荒川さんの言ってることのインパクトが、より明瞭に感じると思ったのです」と語る。
「荒川さんは90年代に建築の方面に進みましたけれど、それ以降はアトリエにさえ足を運ばなかった。何のためにアートをするのか、ものを作るってどういうことなんだろうということを愚直なまでに考え続けていた人。『惰性でやるくらいだったらお前ら死んでしまえ』、と心の底から言っていたんだろうなと思います」。
（インタビュー・文：駒井憲嗣）
▼『死なない子供、荒川修作』予告編
■リリース情報
『死なない子供、荒川修作』
［スタンダード・エディション］
発売中
監督：山岡信貴
音楽：渋谷慶一郎
製作：ABRF
制作：リタピクチャル
出演：荒川修作（コーデノロジスト）、佐治晴夫（宇宙物理学者）、天命反転住宅の居住者
ナレーション：浅野忠信
2010年／日本／80分+特典／カラー／ビスタ／日本語／ステレオ／ドルビーデジタル／片面一層
ULD-609
3,990円（税込）
アップリンク
★作品の購入はジャケット写真をクリックしてください。Amazonにリンクされています。
『死なない子供、荒川修作』
［プレミアム・エディション］
1,000枚限定 発売中
本編ディスク＋特典ディスク
☆初回生産分にはフルカラーブックレット8P封入
特典ディスク収録内容：
『WE-人間を超えていくために』（約70分）
荒川修作公演映像（43分）
荒川修作関係者映像（約70分）
ULD-610
6,090円（税込）
アップリンク
★限定版の購入はDVD『死なない子供、荒川修作』特設ホームページまで
http://www.shinanai-kodomo.com/
DVD発売記念イベント
上映会＆トーク「作った人、撮った人」
日時：2011年11月19日（土）15:00～18:00
会場：三鷹天命反転住宅
トークイベント 五十嵐太郎 X 池上高志 X 渋谷慶一郎 X 山岡信貴
日時：2011年11月23日（水・祝） 開場18:00／開演18:30
会場：青山ブックセンター本店内・カルチャーサロン青山
パフォーマンス＆トーク「マドリン・ギンズまたは荒川修作」
日時：2011年12月3日（土） 開場18:00／開演18:30
会場：青山音楽実験室 新世界（六本木）
http://www.shinanai-kodomo.com/event.html
