映写機とフィルムにより自らの手で全国各地の公民館やホールで映画を上映し続ける渡辺文樹監督の新作『金正日(キム ジョンイル)』の神奈川県での上映が決定。また12月には東京・高円寺にて『第2回渡辺文樹映画祭』と題してこれまでの作品を一挙上映するイベントも行われる。
演出はもちろん脚本、編集、そして出演までを一人で手がける独自のスタンスで日本でのタブーを果敢に題材に取り上げ、会場付近に手貼りするポスターでのみその上映会場や日程が知らされるという上映スタイルで知られる渡辺作品。11月17日(木)川崎市民プラザ、18日(金)横浜市開港記念会館、12月1日(日)~7日(土)高円寺の油野美術館東京分室で上映される新作の『金正日』について監督は「この映画は独立映画というより、まさに、プライベート映画である。文字通り、一人に人間が主演し、演出し、キャメラを回し大赤字を引き起こす。またデジタル映像で、チャカチャカ撮り、安直なプライベートものが映画として提出される昨今、フィルムの世界こだわる作品は、貴重ではないか。原動力は怒りだ」と形容している。「金正日は、二〇〇三年九月に糖尿病悪化で死んでいた!!」というコピーの通り、朝鮮南北問題そして拉致被害者問題を描いている作品だという。
『第2回渡辺文樹映画祭』ではその『金正日』や近作に加え、1987年のデビュー作『家庭教師』や福島県で起きた中学生の自殺事件を題材にした『ザザンボ』(1992年)など旧作も上映。また毎日18時からの『金正日』上映前の17時から、監督によるシンポジウムも予定されている。
このポスターが目印。渡辺文樹監督最新作『金正日』
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■渡辺文樹プロフィール
映画監督。福島県いわき市出身。学生時代から自主映画を製作、大学卒業後も家庭教師をしながら映画を製作する。1987年、『家庭教師』にて監督デビュー。
主な作品には、カンヌ国際映画祭出品、日本映画監督協会新人賞を受賞した『島国根性』(1990年)、松竹が出資・公開予定だったが、登場人物が実名だったため「人権侵害の疑いがある」として福島県法務局が調査に乗り出す騒ぎになり公開を拒否された『ザザンボ』(1992年)、各地で「金返せ」コールが起こった『罵詈雑言〈バリゾーゴン〉』(1996年)、天皇暗殺計画の話であったため、上映会の度に右翼の街宣車が押し掛け裁判にも発展した『腹腹時計〈ハラハラトケー〉』(1999年)、日本航空123便墜落事故の陰謀説(撃墜説)が題材となった『御巣鷹山』(2005年)、満洲国とモンゴル人民共和国の国境紛争をテーマにした『ノモンハン』(2008年)、天皇家の血脈について迫った『天皇伝説』(2008年)、『三島由紀夫』『赤報隊』という2部構成により戦後の裏歴史を描く『政治と暴力』(2010年)。
『金正日』
脚本・編集・監督:渡辺文樹
出演:渡辺文樹、堀田不同、堀田スミエ、金正夫、金恵松、金敬英、李敦錫、堀田フィルム
日本/カラー/150分
渡辺文樹上映展
2011年11月17日(木)
神奈川県・川崎市民プラザ[神奈川県川崎市高津区新作1-19-1][地図を表示]
『三島由紀夫』14:00
『赤報隊』15:40
『金正日』18:00
料金:各作品999円(当日券のみ)
2011年11月18日(金)
神奈川県・横浜市開港記念会館[神奈川県横浜市中区本町1-6][地図を表示]
『金正日』18:30
料金:999円(当日券のみ)
第2回渡辺文樹映画祭
2011年12月1日(木)~12月7日(水)
東京都・油野美術館東京分室
[東京都杉並区高円寺南4-24-4 橋本ビル202 03-6304-9698][地図を表示]
※毎日17:00~18:00監督によるシンポジウムを予定。
12月1日(木)
『三島由紀夫』13:00
『赤報隊』15:00
『金正日』18:00
12月2日(金)
『罵詈雑言』12:30
『腹腹時計』14:00
『金正日』18:00
12月3日(土)
『天皇伝説』12:30
『ザザンボ』14:30
『金正日』18:00
12月4日(日)
『腹腹時計』13:00
『御巣鷹山』15:00
『金正日』18:00
12月5日(月)
『島国根性』12:30
『ノモンハン』15:00
『金正日』18:00
12月6日(火)
『家庭教師』12:30
『罵詈雑言』14:30
『金正日』18:00
12月7日(水)
『三島由紀夫』13:00
『赤報隊』15:00
『金正日』18:00
料金:各作品1,000円(当日券のみ)