骰子の眼

cinema

東京都 新宿区

2011-06-03 22:20


[CINEMA]「過剰の極みを尽くした演出に大いに気持ち悪がり、大いに笑ってほしい」『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』クロスレビュー
『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』より

捕鯨船とホエール・ウォッチングの船がひとつの港に同居する国、アイスランド。日本やノルウェーとともに捕鯨国として知られるアイスランド初のホラー映画として製作された今作は、アイスランド出身でホラー映画のクラシック『悪魔のいけにえ』のレザーフェイス役のガンナー・ハンセンをはじめ、裕木奈江やイギリス人俳優テレンス・アンダーソンやミランダ・ヘネシーなど世界各国からスタッフやキャストが集結している。これまでアイスランド国内でヨーテボリ、エジンバラ、トロントの各映画祭に入選を果たす作品を発表してきたジュリアス・ケンプ監督は、多くが船上を舞台にする今作の人間模様を、アメリカのスプラッター映画とは異なる、独特のひんやりとした質感でフィルムにおさめている。

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『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』より

お約束ともいえる血しぶき描写の間にある、捕鯨船一家や観光客それぞれのキャラクターの多様さは、ホラーのセオリーをずらしていくどこかシニカルな視点や描写とともに今作の特徴である。誰もが心の底に暗い側面を持っている登場人物たちが繰り広げる惨状は、決してハリウッドのそれのあっけらかんとした印象とはかけ離れているが、北欧の自然の奥にある〈病んだ感じ〉を絶妙に捉えることに成功している。

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『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』より

ホラー映画としての完成度や衝撃に関しては今作に勝る作品はいくつでもあるだろう、しかし、経済破綻や捕鯨問題など決して明るい話題だけではないこの国の文化の側面をこうしたかたちで垣間見られるだけでも、貴重な体験だと言えるのではないだろうか。もちろん、デヴィッド・リンチ監督作『インランド・エンパイア』の演技により抜擢された裕木奈江の活躍ぶりは、最後まで目が離せない。

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『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』より

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連載:裕木奈江のレイキャヴィク・フィルム・メイキング・ジャーニー




『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』
6月4日(土)より銀座シネパトス新宿K's cinemaほか全国順次公開

初日舞台挨拶決定!

裕木奈江さん、そして緊急来日したプロデューサーのイングヴァール・ソルダソン、監督のジュリアス・ケンプが登壇いたします。
会場では裕木奈江さんのサイン付きパンフレットを各劇場100部限定で販売いたします。
銀座シネパトス
11:30の回上映後 13:30の回上映前 登壇
新宿K's cinema
20:00の回上映前 登壇

監督:ジュリアス・ケンプ
脚本:シオン・シガードソン(『ダンサー・イン・ザ・ダーク』サウンドトラック作詞家)
プロデューサー:イングヴァール・ソルダソン、ジュリアス・ケンプ
音楽:ヒルマー・ウーン・ヒルマソン
出演:ピーラ・ヴィターラ、裕木奈江、テレンス・アンダーソン、ミランダ・ヘネシー、ガンナー・ハンセン、他
2009年/アイスランド/90分/英語
配給:アップリンク
公式HP
公式twitter

▼『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』予告編



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