『名前のない少年、脚のない少女』より
思春期の少年少女の日々を描いたエズミール・フィーリョ監督作『名前のない少年、脚のない少女』。その中で、主人公の少年が感じる“喪失と共に生きる”心情を静かにトレースしていくように流れる音楽を手がけたのが、ブラジル南部、映画の舞台の程近くの町に住むミュージシャン、ネロ・ヨハンである。映画で使用されている曲も含め、現在彼の楽曲は、全てネット上でフリー・ダウンロードできる。夢と現実、生と死。「境界」というのがこの映画のテーマだとしたら、ネロ・ヨハンの音楽もそのひとつと言えるだろう。
さらに3月11日に発生した東日本大震災を受けて、彼がメッセージを寄せてくれた。
日本のみなさん。
地震と津波が起こって以来、まだショックを受けているし恐怖を感じています。
遠く離れたここからでは、あなたたちにとってどんなに恐ろしいことだったか、想像もつきません。
僕たちの祈りと"気"は、今頃そちらへ届いていることでしょう。
僕たちが知っているような、強く美しいあなたたちでいてください。
できることは何でもするので、まかせてください。
僕の愛と友情を、あなたたちの心にダイレクトに向けています。
──ネロ・ヨハン
hey people there in Japan.
i'm still shocked and scared since the earthquake and tsunami.
laying here so far away we can't even imagine how terrible it all could be for you guys.
all of our prayers and good vibes over you now.
keep on being the strong and beautiful people we know.
count on me for anything i can do.
by know my love and friendship set directly to your hearts.
all the best, nelo.
彼らはその翼を広げて
とまどう僕らの上をさまよう
暗いまなざしで 闇のかけらを振りまきながら
撃ち落としたいなら
撃たせればいい
死へとダイブする鳥たち
うまく飛べるよう祈ってる
その羽も飛び方も好きじゃないけど
成功を祈ってる
うまく飛べるように
死へとダイブする鳥たち
飛べ 死へとダイブする鳥たち
僕と友達がずっと見てるから
飛べ 死へとダイブする鳥たち
死へとダイブする鳥たち
死へとダイブする鳥たち
僕と友達がずっと見てるから
死へとダイブする鳥たち
ow that, winged rats
they prowl above our dizzy heads
spreading good diseases with paranoia eyes
let people shoot'em, let people shoot'em
pigeon suicide squad
we hope you'll end successfully dead
never really liked birds or feather or flights
we wish you success, we wish you success
pigeon suicide squad
three cheers for pigeon suicide squad
me and my friends
want to see you all dead
three cheers for pigeon suicide squad
──"Pigeon Suicide Squad"
▼『名前のない少年、脚のない少女』挿入曲「Pigeon Suicide Squad」
すべては愛、共感、そして熱意
『名前のない少年、脚のない少女』のサウンドトラックを担当したネロ・ヨハン
──音楽を始めたきっかけを教えてください。
初めてのアコースティック・ギターを持った11歳のときに音楽を始めました。そして練習していくうちに、自分で曲を書くようになりました。いつも自分の曲を、自分の言葉で、また自分の方法で歌いたいと思っていました。
──あなたのホームページでは、すべての曲をダウンロードできるようになっています。このようなスタイルで楽曲を発表している理由は?
アートにおける自由を信じているからです。他の言い方をすれば、これまで僕は、制作者とその他の人々の間に何も境界がないのがアートだと考えていたということです。だから始めから、みんなの手の届くところに自分の作品を置いておきたいと思っていました。ですがCDや他のメディアには、音楽を広げる力があるので何の反対もしません。
──どのように楽曲制作を行っていますか?また、その際に気をつけていることは?
すべて自分で作るということです。すべての楽器を自分で演奏し、自宅のパソコンでそれをつなげます。このやり方は、いくつかのバンドを経て2001年から始めました。すべてのプロセスを自分のコントロール下で行いたかったし、たくさんの曲を作っていました。多くの人を巻き込んでやってたら、なしえなかったことなんです。そしてもちろん、これはとても個人的な作業だということもある。僕にとって大切なことは、作った音楽が自分に正直であること。予想もしないようなちょっとしたノイズや変な音が入っていたりするのは、そのせいなんです。音楽がフレッシュで誠実になりますからね。
──『名前のない少年、脚のない少女』に参加することになったきっかけは?
僕とジュリアン役のイズマエル(・カネッペレ)は長年の友達だったので、エズミールのことも知っていました。それで彼に音楽を作ってくれないかと頼まれたんです。数ヵ月後には、このプロジェクトに自分の音楽がぴったりなんじゃないかと思い始めた。すごくエキサイティングな行程でした。音楽、映画、写真、そして言葉。それらすべてが、映画の制作に関わった人たちの手によって何かひとつのものを生み出し始めたのです。
『名前のない少年、脚のない少女』より
──映画に使われている楽曲は、映画のために作ったのですか?
いいえ、ここ10年でレコーディングした数々の曲の中から選びました。ぴったりな曲がみつかれば、ストーリーと語り合うようにその曲をレコーディングしなおしました。
──どうやって曲を選んだのですか?また、そのように映画用の楽曲をまとめることは、それまでの音楽制作と比べてどのような部分が難しかったですか?
ある意味それらの曲は映画のために「生まれ変わる」ことが必要でした。言葉やいろいろな部分が変化しました。ストーリーの流れに合わせて、みんなで曲を選びました。すでに素材はたくさんあったので、もうあまりすることはなかったのですが、いくつかのテーマやアレンジは調整が必要でした。
──出来上がった映画を観ての感想は?
美しく、力強く、深みがあると思いました。頬をひっぱたかれたような感覚でもありました。僕はそれが好きですけどね!
──この映画を観る日本の観客にメッセージをお願いします。
日本の皆さんと知り合えて、とてもうれしく思っています。ここからとても遠い場所ですからね。そんな遠い場所で映画をみてくれて、僕の音楽を聴いてくれて、感情を共有できるのはすばらしいことです。これでお互いが、より強く結びつき、理解し、愛しあえたらいいなと思います。すべては愛、共感、そして熱意なのです。そして今がその時であり、永遠にその時です。
(インタビュー・文:露無栄 構成:駒井憲嗣)
▼『名前のない少年、脚のない少女』予告編
ネロ・ヨハン プロフィール
ブラジル最南端の州にあるエストレラ出身。歌手、ソングライター。文化人類学の学位を持つ。14歳の時にヘヴィメタルやオルタナティブロック系バンドに参加し、楽器を始める。2001年から14枚のアルバムを自宅で制作。アコースティックギターをはじめ、ベース、エレキギター、キーボード、メロディカ、マンドリン、ウクレレ、そしてパーカッションなど、様々な楽器を演奏し、自宅で楽曲制作を行っている。
公式ホームページ
ネロ・ヨハンMY SPACE
「アップリンク配給作品の監督とアーティストより日本の皆さんへのメッセージ」 http://www.uplink.co.jp/yourmessage/
『名前のない少年、脚のない少女』
サウンドトラックCDR
音楽:ネロ・ヨハン
パルコシティにて発売中
840円(税込)
パルコシティの購入ページはこちら
パルコシティでは『名前のない少年、脚のない少女』前売りチケット(特典カレンダー付き)&パンフレットセットも販売中。
映画『名前のない少年、脚のない少女』
2011年3月26日(土)より渋谷シアター・イメージフォーラムほか
全国順次公開
監督・脚本:エズミール・フィーリョ
プロデューサー:サラ・シルヴェイラ、マリア・イオネスク
脚本・出演:イズマエル・カネッペレ
撮影監督:マウロ・ピニェイロJr.
音楽:ネロ・ヨハン
キャスト:エンリケ・ラレー、イズマエル・カネッペレ、トゥアネ・エジェルス、サムエル・ヘジナット、アウレア・バチスタ
ブラジル・フランス/ポルトガル語・ドイツ語/2009年/101分/35mm
配給:アップリンク
公式サイト