DUB CLASHに出演するH-MAN、ロイド・バーンズ、こだま和文、スタイル・スコット、宮崎“DMX”泉、PUSHM(上段左より)
セオドロス・バファルコス監督により1978年に制作された映画『ロッカーズ』は、レゲエ・ミュージックを生んだ国ジャマイカを舞台にした物語で、世界中にレゲエという音楽の認知を高めた映画として知られている。その制作にまつわるエピソードは、今年7月に発売されたバファルコス監督によるフォトエッセイ『ロッカーズ・ダイアリー』に詳しいが、この映画『ロッカーズ』の日本配給からスタートしたのがOVERHEAT。1983年から発行を続けてフリーペーパー「Riddim」(残念ながら先頃ウェブへの転換を発表した)や、MOOMIN、PUSHIMなどのアーティストマネジメント、そしてオーバーヒート・レコーズのレーベル運営を行っているOVERHEATの設立30周年を記念するイベントが開催される。
12月18日に恵比寿LIQUIDROOMで開催される『DUB CLASH』は、ライブバンドによる演奏をエンジニアがその場でダブミックスを行うという、かつてMUTE BEATが行っていた方法論を駆使。ルーツ・ラディクスのスタイル・スコットと松永孝義という強力なリズムセクションに加え、こだま和文、朝本浩文、エマーソン北村という元MUTE BEATのメンバーに加え、松竹谷 清とタツミアキラも加わったバンドTHE DUBWISEに対し、宮崎“DMX”泉とワッキーズのロイド・バーンズとダブミックスを施すという何ともぜいたくな編成でのライブが披露される。さらにPUSHIM、H-MANの参加も決定し、日本を代表するアーティストたちが、日本にレゲエ・カルチャーを浸透させたOVERHEATの功績を祝う。また、会場2階では映画『ロッカーズ』も上映されることになっている。
THE DUBWISE
宮崎“DMX”泉
歌謡曲からクラブのフロアーを揺るがす音作りまで何でもこなすサウンド・エンジニア&DJ。ごく初期のMUTE BEAT時代からダブ・エンジニアとして参加し、全ての作品に参加。解散後は“Dub Wa Crazy”シリーズ、『Dub Master X』(1992年)を皮切りに『Dub Master X II』『Side Job』をリリース。また藤原ヒロシとLuv Master X名義のアルバム『L.M.X』も93年にリリース。リミックス・ワークとしては浜崎あゆみ、倖田來未、Do As Infinity、華原朋美などを手掛ける傍ら、ヤン富田、いとうせいこう、The Blue Hearts、キリンジといったミュージシャンの作品にも参加。
Lloyd “BULLWACKIE” Barnes
1944 年ジャマイカ生まれ。70年代初頭にニューヨークに移住し、サウンド・システムの運営後、70年代半ばよりレコーディングを本格的にスタート。自身のWackie'sレーベルを興し、Horace Andy『Dance Hall Style』、Love Joys『Lovers Rock』など数多くの名盤を産んだ。ジャマイカのダブ・マスター達からダイレクトに影響を受けながらもNY の都会的な空気感も封じ込めた独自の世界を構築している。Wackie'sの評価は年ごとに高まり、現在ではベルリンの Basic Channelより殆どの作品が再発され世界中に流通するほどになる。
Style Scott
ルーツとダンスホールが混じり合っていた70年代末~80年代半ばまでのジャマイカ音楽の最重要リディム、ワン・ドロップ・リズムを発信し、世界中に広めたドラマー。若くしてPrince Far Iのバンドにドラマーとして起用され、78年、UKのAdrian Sherwoodに招かれCreation Rebelの『Starship Africa』のレコーディングに参加。それを機にAdrianが立ち上げたOn-U Soundsから数多くリリースされたレゲエ/ダブ/ニュー・ウェイヴ作品に参加する。さらにAdrianが編成したバンド、Dub Syndicateにも参加。同時期にジャマイカでRoots Radicsのドラマーとして活動する。現在もDub Syndicateでの活動を始め、ドマラーとして世界各国の様々なセッションに参加している。
松永孝義
1980年代はMUTE BEATでベースを担当。寡黙で凛とした佇まいから発せられるしなやかで圧倒的なパフォーマンスは各方面から絶賛される。Tomatos、Ring Links、Lovejoy、Lonesome Stringsといった自身もメンバーであるバンドでの活動の他に、セッション・ミュージシャンとしてUA、bird、ポート・オブ・ノーツ、畠山美由紀、ヤン富田、中島美嘉、小泉今日子、いとうせいこう、高田渡、ピチカート・ファイブなど作品のレコーディングやライヴに参加。2004年には初の自身名義のアルバム『The Main Man』をOverheatよりリリース。
こだま和文
ストイックな佇まいと心臓を鷲掴みにするフレーズ、そして彼にしか出せない音色で多くのファンを掴んで離さない孤高のトランぺッター。中学時代から地元福井のディスコでトランペットを吹いていたが、1973年、高校卒業を機に上京し、セッションマンとして活動をスタート。その後MUTE BEATを結成し、90年に解散するまでに6枚のアルバムを残す。92年、ファースト・ソロ・アルバム『Quiet Reggae』を皮切りに7枚のアルバムと2枚のサウンド・トラック、Kodama & GotaやK.T.U.名義の作品などを残す。文筆家、絵描きとしても活躍し、2010年4月にはこれまで発表されたエッセイをまとめた『空をあおいで』をリリースしている。
タツミアキラ
玄人ウケする艶やかなプレイでフロアを揺らし続けているサックス・プレイヤー。2004年に惜しくも解散したDeterminationsにソプラノ及びアルト・サックス・プレイヤーとして参加。 Determinations解散後は軸足をカリプソやソカにシフトし、 05年にはthe CaSSETTE CON-LOSと共に『King Goes Calypso』を、08年にはTatsumi Akira & the Limes名義で『Soca Driven』をリリース。
朝本浩文
福岡県出身。1986年MUTE BEATに参加し、「After The Rain」「Whisky Bar」など哀感溢れる名曲を生んでいる。脱退後の91年、ジャングルやドラム&ベースに軸足を置くRam Jam Worldを結成。92年ファースト・アルバム『ハウ・ドゥ・ユー・ドゥ?』をリリース後、6枚のアルバムをリリース。プロデューサーとしてはUA「情熱」を始めとする彼女の初期代表曲の多くに関わるなど、多方面で活躍。08年にソロ・ユニットDr.Echo-logic名義で『PIANO×DUB』を、 10年には『Cycle Of Birth』をリリース。現在はアイコsun、MC CardzとKAMを結成し活動中。
エマーソン北村
ジャッキー・ミットゥ的な人懐っこさを秘め、様々なセッションで活躍するキーボーディスト。1987年よりじゃがたらにキーボーディストとして参加し後期作品やライヴに参加。1988年、朝本浩文脱退を機にMUTE BEATにも加入し『March』のレコーディングに参加。93年には忌野清志郎 & the 2・3'sのメンバーになる。ソロ名義としては90年に7インチ・シングル「Shine A Light」「Dancing Groove」を、93年にはミニ・アルバム『カリフォルニア・ソウル』をリリース。更に2003年には3枚の7インチを3ヶ月連続リリース。その他ソロ名義で様々なコンピ盤にも作品を提供している。
松竹谷 清
ブルース・フィーリングたっぷりの黒い声とザクザクしながらも琴線に触れるようなフレーズを多く生み出すギターで、80年代半ばから90年代初頭に人気を博したTomatosのリーダー。1982年、松竹谷清 with ジューク名義で『Real Live!』をリリース。83年にTomatos結成。87年にファースト・ミニ・アルバム『Rock-A-Blue Beat』のリリースを皮切りにシングル「Rock Your Baby」(1990年)、『Step by Step』(1991年)、『Strollin' With Tomatos』(1992年)、『Party Down』(1993年)をリリース。その他、Good Baites名義でピアニカ前田、Roland Alphonsoと共に作品をリリース。ギタリストとしてはThe Fools、MUTE BEAT、Nahki等と共に作品を残している。
The K + Friends
Dry & Heavy、V.I.P. Band、Reggae Disco Rockersなど日本を代表するレゲエ・バンドに参加しルーツ、DUBからダンスホールまで幅広く活躍するレゲエ・ギタリスト。現在はLikkle Maiとのプロダクション“MK MuziK”とレーベル“MK Starliner”を中心に良質な作品を制作。デュオ編成のLikkle Mai & The Kでは、アコースティック・ギター1本でベースからパーカッションまでを独自のスタイルで演奏、注目を集めている。
FEAT
PUSHIM
大阪で生まれ育ち、95年から地元大阪のダンスホール・レゲエシーンを拠点に活動を始め、当時まだ成長過程であった日本のレゲエ・シーンで、あっという間にその人気と共に名を広めてゆく。99年6月デビューマキシシングル「BRAND NEW DAY」、2000年3月に1stアルバム『Say Greeting』をリリース。以降、6枚のオリジナルアルバムと多数の客演やコンピレーションに参加。ライブ・パフォーマンスも絶大な評価を受けており、ほとんどのレゲエ野外ビッグ・イベントではトリをつとめる。またトップ・プロデューサーDJ PREMIERとの競演、ジャマイカでの世界最大のレゲエ・フェス「SUN FES 2003」への参加、大御所シンガーLUCIANOとの競演など、海外においても高い評価を受けている。
H-MAN
ジャパニーズ・レゲエ・シーンの黎明期である90年代初頭より横浜、湘南を中心に活動を始めキャリア15年以上。現場の叩き上げから現在の地位を築いた大ベテランDJ。ジャマイカとは違った日本人ならではのスタイルを確立。日本語にこだわりぬいたユーモア溢れるリリックと、その場にいる全ての観客を引き込むライブパフォーマンスは唯一無二の存在感を持つ。最新作は今までにレコーディングした100曲以上の音源から、DJ KENNYがセレクト&ノンストップ・ミックス『レゲエ馬鹿百科 Mixed by DJ KENNY』(2010年)。
ACOUSTIC LIVE
MOOMIN with YOTA & KENTA Acoustic Live
日本のダンスホール・シーンを牽引し続けるNo.1シンガーMoominがStoned RockersのギターYotaとパーカッションKentaを従え、'09年からコンスタントに行なっているライブ・スタイル。フェスやダンスの合間を縫って全国のライブハウス、レストラン、ジャズバーなどで約30本以上のライブを行ない、すでにブルーノートやビルボードでのライブも経験。
DJ
佐川修
レゲエに出会い83 年~80年代末のダンスホール隆盛期のKingstonに数度に渡り長期滞在。クラブ・ジャマイカやTaxi HiFiでのセレクターや執筆で日本にレゲエを定着させた影の大功労者。Riddim誌での長期連載「キングストン秘宝館」は当時のレゲエ野郎のバイブル。
高津直由
Bull The Dougsを経て今も影響力のあるDeterminationsを結成しメンバーとしてパーカッション、ヴォーカルを担当するも突然の解散。そのSKAに執着する精神、音楽に対する姿勢は時に熱すぎるほど。今回は彼の音楽のバックボーンを知ることになる選曲が楽しみ。
OVERHEAT MUSIC 30th Anniversary Party DUB CLASH
2010年12月18日(土)恵比寿LIQUIDROOM
The DUBWISE:Style Scott/松永孝義/こだま和文/朝本浩文/エマーソン北村/松竹谷清/タツミアキラ/The K + Friends
Live DUB Mix by:宮崎“DMX”泉/Lloyd “BULLWACKIE” Barnes
MOOMIN Acoustic Live
DJ:佐川修/高津直由
2F:映画『Rockers』上映
開場/開演:17:00
前売:¥5,500(税込/ドリンク別)
ぴあ(コード:121-793)/LAWSON(コード:77399)/e+
OVERHEAT/LIQUIDROOM
レコード店(Dub Store Record Mart/ROCKERS ISLAND 東京店/DISK UNION)
問い合わせ先:オーバーヒート 03-3406-8970
LIQUIDROOM 03-5464-0800
主催:OVERHEAT MUSIC, INC.
企画・制作:OVERHEAT MUSIC, INC.
後援:Riddim
協力:LIQUIDROOM
協賛:STUSSY
『ロッカーズ・ダイアリー』
音楽への情熱と好奇心に満ち溢れたギリシャ人の青年、セオドロス・バファルコスが、未知の国ジャマイカにおいて伝説のレゲエ映画『ロッカーズ』を完成させるまでの日々を綴った青春の記録
セオドロス・バファルコス 著・写真
浅尾敦則 訳
定価:¥2,993
仕様:菊判変形/ハードカバー/272ページ
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