骰子の眼

2010-08-07 13:22


経営者のみならずNPOやボランティアまで影響を与えたドラッカーの映像作品決定版『これを見ればドラッカーが60分で分かるDVD』

あらゆる書店でコーナーが設けられ、ベストセラー・ランキングでも名前を見ない日はないほど空前のブームとなっている経営学者ピーター・ドラッカー。マネジメントという概念を発明し、グーグルやユニクロなどの「超」優良企業が、彼の理論を忠実に実践することで成功を収めることで、かつてない注目を集めている。
8月6日に発売された『これを見ればドラッカーが60分で分かるDVD』はドラッカーに関する唯一の映像作品である。ドラッカリアン(ドラッカーのファン)にとっては2005年に死去したドラッカーの、貴重な動く姿を観られるというだけでも垂涎ものだが、そのタイトルの通り彼の半生そして思想を分かりやすく解説する、ドラッカーの“知の軌跡”をたどる60分間のドキュメンタリーとなっている。忙しくて本を読む時間のないドラッカー初心者から、ドラッカーについてもっとよく知りたい人にまで観ていただきたい内容となっている。
また今作では、これまでの彼についての論考であまり語られることのなかった、NPOへの積極的なサポートについても詳しく紹介されており、彼の大企業への失望、そして非営利法人へ注目していった過程も描かれている。

若く成功した専門的職業人の10人中9人が根無し草的存在です(ドラッカー)

ドラッカー理論の強みは使命(ミッション)を日々の活動に関連づけることです。NPOが相手でもこれは一貫しています。1970~80年代 アメリカ企業は窮地に陥りました。外国企業の進出とエネルギー危機に足をすくわれ、人員整理などを行います。働き手の生活の基盤は企業から離れました。

ジャック・ビーティー(ドラッカー伝記著者):1980年代に道を踏み外した企業にドラッカーは見切りをつけました。
ドラッカー:非常に多くの経営者が血迷い決算を取り繕うために愚劣な行為に走りました。過去10~15年の不祥事はすべてそれが原因です。次の四半期を乗り切るため粉飾を始めたのです。愚かなことです。懸念を?もちろん。マネジメントの堕落です。
ジャック・ビーティー:エンロン事件のずっと前から彼は企業の裏切りを指摘していました。私腹を肥やすための不正行為に大きく失望しました。

ドラッカーは働き手の安住の地を探求します。たどりついたのは学校や病院、教会などの非営利組織でした。

ジャック・ビーティー:ガールスカウトや地域団体などのボランティア活動にも注目しました。トクビル(19世紀フランスの政治思想家。いち早くアメリカ民主主義を論じた)の視点に立ち返り、アメリカにおけるその意義を再認識しました。草の根の活動です。
ドラッカー:特定の非営利組織でボランティアはしていません。しかしコンサルティングの半分以上を非営利組織相手に無料で行います。

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ドラッカーが協力を続けるのはアメリカ心臓協会、アメリカ赤十字社、ガールスカウトなどです。1990年には『非営利組織の経営』を書きました。

ナン・ストーン(ハーバード・ビジネス・レビュー誌 元編集長):ドラッカーの思考の興味深い点は、着想を純化し明確にする能力です。複雑な理論でなく本質的要素に絞るから、忙しい経営者の指針として重宝されるのです。非営利組織にマネジメント論を応用する時もまったく同じように理論を単純化しました。要点は顧客とその価値を明確にすることと、目標を決め計画を立て実行することです。
ジャック・ビーティー:非営利組織の問題の核心を突き善意と意欲だけでなく、着実な成果を求めたのです。そしてボランティアを大事にしました。
ドラッカー:ご存知の方もいますが私は言い続けています。ガールスカウトはNPOの鏡です。今朝の新聞の取材でそう言うと記者が驚いてました。

ヘッセルバインはガールスカウト再建の立役者です。現在は財団の会長として、ドラッカーと二人三脚で非営利組織を支援しています。

フランシス・ヘッセルバイン(リーダー・トゥ・リーダー・インスティチュート理事長):彼の言うように、非営利組織は、人びとの生活を変えます。アメリカの社会セクターともいうべき非営利組織は160万にも及びます。それらすべてが、この使命を共有しているのです。使命が組織を動かす原動力となっています。だからマネジメントを徹底すべきなのです。企業や政府よりマネジメントで劣れば目標は達成できないでしょう。目的は生活を変えることです。

教育学者のクロスはマイノリティー学生の、教育機会の拡大に取り組んでいます。ドラッカーが頼りです。

ドロレス・クロス(シカゴ州立大学 元学長):シカゴ州立大学の学長職に就くことを強く勧められました。州内のアフリカ系アメリカ人学生の3分の1が学ぶ大学だからです。彼らは私と同じように学問に集中しにくい都市部の出身です。学内で十分理解を得てから企業社会に協力を求め学生の指導者を探すよう助言を受けました。まず明確な目標を設定しそのうえで手を尽くして、組織内の理解を得るよう求められました。しかも その目的と展望が学生たちの現実から離れてはならないのです。

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ドラッカーは巨大教会にも注目しました。ここ10年で多くの信者を獲得しています。

ドラッカー:巨大教会が社会現象になったのはコミュニティーを形成したからです。若く成功した専門的職業人の10人中9人が根無し草的存在です。農場や労働階級の出身で成功を収めた人びとです。巨大教会はコミュニティがない彼らのニーズを満たしているのです。

カリフォルニア州のサドルバック教会は、1980年の設立以来急成長しています。毎週末、1万7,000人が教会に集まり、信者の数は5万3000人を超えます。

リック・ウォーレン(サドルバック教会 牧師):私たちはあらゆるニーズに応じます。社会、精神、経済、物質、あらゆる面で神の御心に従い、人びとのニーズに応えます。教会は地域のために存在します。だから目標は“目的主導の教会”です。ドラッカーに従えば目的の明確化が容易になります。なぜ存在するかが分からなければ、存在の意味がない。
ジャック・ビーティー:ドラッカーはこうした組織を見つけ出し、なぜ彼らが重要な存在かを彼らに説明するのです。彼の社会分析に従って、コミュニティーのありかを追求します。今や人生を豊かにするのは、企業ではなく巨大教会だと言います。
リック・ウォーレン:私たちはそのためにたくさんのグループを設けています。週末に教会に集う多くの人のために、ブースが設けられます。約200のさまざまなグループがあらゆるニーズに対応すべく活動しています。離婚の相談にも乗ります。子どもの教育に関する悩み、刑務所にいる家族について、ダウン症候群の子ども……あらゆる悩みごとの受け皿があって、訪れる人に情報を提供しています。すべては使命に基づきます。生活を変えることが教会の使命だからです。

1989年、ハーバード・ビジネス・レビュー誌にドラッカーの論文『非営利法人のマネジメント』が掲載されました。

ナン・ストーン:論文の要旨は明快です。ボランティアが働く非営利組織が、いかに動機付けをし人をまとめているか。活動は自由意志に基づきいつでも抜け出せます。企業の最大の資源は人です。彼らもいつでも自由に辞められます。だから学ぶべきなのです」。

ドラッカーは社会セクターの活動を通じて、個を尊重するコミュニティを見つけました。

フランシス・ヘッセルバイン:ドラッカーは個としての人間を、そのコミュニティーをとても大切にしました。人が最大の資産であるとの共通認識は、彼がもたらしました。誰もがそれを納得するに至ったのです。

(以上、『これを見ればドラッカーが60分で分かるDVD』より)

『ピーター・ドラッカー 知の旅』を監訳して
上田惇生(ドラッカー翻訳家)

ピーター・ドラッカーは、マネジメントを発明した現代社会最高の哲人です。ドラッカーに学んで超優良企業に育った企業は、グーグルやユニクロなど枚挙にいとまがありません。しかも、人を大切にするドラッカー経営は、日本人の心にぴったりです。
この作品は、生地ウィーンでの若き日々からの知の軌跡をたどるものです。ドラッカーの問題意識、世界観、方法論を、ドラッカー本人とドラッカーの教え子たちの肉声によって知ることができます。
ドラッカーの優しさも直接体験できますし、マネジメントが金儲けの道具ではなく、世の中を良くするための誇り高い仕事であることも実感させられます。今日の大転換期にあって世の中をどう見るか、どう経営し、どう仕事をするか、どう生きるかにご関心のある方にとっては必見の作品と言うべきでしょう。
さすがにCBSニュースで活躍した一流ディレクターの作品であると納得しました。手元において何度でも見たくなります。そしてその都度発見のある映像作品です。ドラッカー人気沸騰の今日、ついに日本版が制作されたことを喜んでいます。





『これを見ればドラッカーが60分で分かるDVD』
発売中

ULD-566
2,940円(税込)
UPLINK

監督:ケン・ウィッティ
2002年/アメリカ/60分/カラー/ドルビー/英語/ステレオ

★ご購入はこちら
公式サイト
http://www.webdice.jp/drucker/
公式ツイッター
https://twitter.com/drucker_dvd

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