骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2010-06-23 22:50


「阪神大震災から遠く離れた韓国の方にも何かを感じてもらった」記憶と旅をテーマに俊英・板倉善之監督が臨んだ『にくめ、ハレルヤ!』

CO2企画制作部門から誕生した渾身作、『関西ゼロ年代映画祭』に続き6/26(土)より渋谷アップリンクXでロードショー
「阪神大震災から遠く離れた韓国の方にも何かを感じてもらった」記憶と旅をテーマに俊英・板倉善之監督が臨んだ『にくめ、ハレルヤ!』
『にくめ、ハレルヤ!』より

阪神淡路大震災を映画の中で一つの重要なテーマにした『にくめ、ハレルヤ!』を韓国の映画祭で上映された際の感想を話す板倉善之監督が印象深い。

「韓国人の方に、この映画の主人公を見ていると私自身を見ているようでした。という感想を頂きました。震災から遠く離れた韓国の方にも何か感じてもらった事が大変うれしく、また自信を持てました。今回は東京です。震災のこと以外にも観客の皆さんと何か共有できるものがあるのではないかと期待しています」。

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『にくめ、ハレルヤ!』をてがけた板倉善之監督

『屋根の上の赤い女』(岡太地監督)、『青空ポンチ』(柴田剛監督)などでは俳優としての才能を存分に発揮している彼だが、前夜祭として開催されている総計20本近くの特集『関西ゼロ年代映画祭』の選出は、監督としてではなく俳優の視点からも選ばれているのかもしれない。

「それぞれの映画が撮られたこと自体に『あいつがやってるなら俺もなんかやらなきゃ』みたいな対抗心を掻き立てられた映画ばかりです。特に映画を撮ってる方、これから撮ろうとする方々には刺激を与えてくれると思います。いろんな人があらゆる所で映画を撮っているというある種の“ごった煮感”のようなものを感じて頂けるとうれしいです」。

(インタビュー・文:鎌田英嗣)


板倉善之 プロフィール

1981年、大阪生まれ。大阪芸術大学芸術計画学科入学時より、映像インスタレーション作品の制作を開始。『CURTAIN』等の作品をクラブイベント等にて発表。2回生時、映像制作を専門的に学ぶため、同大学映像学科へ転学科。映画制作に強い興味と欲求が芽生え、同大学の卒業制作として16mm長編映画『日の底で』を完成。その後、第2回CO2企画制作部門の助成監督の一人に選ばれ、『にくめ、ハレルヤ!』を完成。また『屋根の上の赤い女』、『青空ポンチ』などの作品に出演者として参加。現在、大学時結成した「思考ノ喇叭社(らっぱしゃ)」を活動母体に映画活動を続ける。


『にくめ、ハレルヤ!』
6月26日(土)よりロードショー

会場:渋谷アップリンクX
日時:2010年6月26日(土)~7月23日(金) 17:00/21:00、7月24日(土)~ 21:00
料金:当日一般1,500円 / 学生1,300円(平日学割¥1,000)/ シニア¥1,000
特別鑑賞券(1,300円)劇場窓口にて好評発売中

出演:苧坂淳、藤本七海、長綾美、デカルコ・マリィ、渡辺大介、絵沢萠子(特別出演)
監督・脚本・編集:板倉善之
撮影:高木風太
録音:松野泉
音楽:桝井孝則
製作:思考ノ喇叭社
配給・宣伝:カプリコンフィルム
2006年/76分

解説
10年前、阪神大震災で両親を亡くし、祖母とともに叔父の家に引取られた青年・裕人。しだいに震災の記憶もうすれ、平穏にくらしてきた裕人だったが、ある日、認知症が進行してきた祖母の口から、瓦礫の街の記憶、そこに<サキ>という妹がいたことが語られる。
祖母の話した<サキ>という名前だけの妹は、裕人を再び震災と直面させることになる。
そんなおり、街中で裕人と似た境遇の少女・沙樹と出会う。沙樹は自分の妹<サキ>ではないのか…。祖母の暗示のままに少女・沙樹を連れ出すと、二人の逃避行が始まった。
この映画は、大阪市の映像文化事業・第二回CO2(シネアスト・オーガニゼーション・エキシビジョン大阪)の企画制作部門において制作された。
1995年1月17日に起きた阪神大震災が重要なテーマの一つとなっており、物語の設定は制作された当時と同様、震災から10年後が舞台となっている。 CO2の企画選考会において阪神大震災をテーマとして扱うことが論議を呼んだが、震災の面影を探し求めるように浮遊するカメラワークは、それとせめぎ合うように街の音を録音する裕人が、少女・沙樹に妄執していく姿を生々しく捉え、選考委員の1人であった黒沢清監督より高い評価を得る。その後、国内外の映画祭に参加し各地でも好評を博した。

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