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『ソウル・パワー』より、ジェームス・ブラウン

すでに吉祥寺バウスシアターで開催された爆音映画祭での特別上映での熱狂が話題となっているが、とにかく劇場で大きなスクリーンと大音量で堪能していただきたい作品だ。ジェフリー･レヴィ＝ヒント監督は、ザイール（現コンゴ民主共和国）で開催された音楽フェスティバル、ザイール'74が実現するまでの顛末と当日のステージの模様を、ナレーションや字幕による時代背景などの解説を極力まで廃し、当時の生々しいフィルムを巧みに構成することにより、映画的なうねりを作り上げようとする。アーティストの生み出すグルーヴを忠実に捉えたカメラワークというライブ映像のセオリーを守りながら、音楽映画のイメージを刷新させることに成功している。

『ソウル・パワー』より、スピナーズ

こうした構成や編集ができるのも、残された素材、そして収録されたアーティストたちのとにかくパワフルなパフォーマンスのすばらしさがあってのこと。タイトル･ロールとも言えるジェームス・ブラウンのシャウトとダンスのキレの良さ、ミリアム・マケバの度肝を抜かれる歌声、ファニア・オール・スターズの情熱的で豊かなリズムの実り。ときおり挿入されるキンシャサの風景は、この街が音楽に溢れていることを如実に物語っている。

『ソウル・パワー』より、セリア・クルースとファニア・オール・スターズ

またこの作品は、音楽とリズムの持つ根源的な喜び、突き動かされ、踊らずにいられない魅力について再確認させる。もちろん自宅のデスクトップ上で完結することのできるテクノロジーは、世界に点在する現代の音楽家たちが持つ脳内のイメージを作品に焼き付けることに関して、処理能力を飛躍的に向上させた。しかし、異なる思想や出自を持つアーティストが同じステージに立つこと、違うシーンで活動するミュージシャンがキンシャサの空の元出会うことを（モハメド・アリとジョージ・フォアマンの試合が延期になるなどのハプニングも含め）成し遂げた功績と意味は、いまあらためて噛みしめるべきだと思う。この映画にはそうした音楽に託される夢、音楽を通して分断された人と人がコミュニケーションをとることができる希望がまだ残されていることの証明でもある。

映画『ソウル・パワー』

シネセゾン渋谷、吉祥寺バウスシアター、新宿K's シネマ、川崎チネチッタほか、
全国順次ロードショー公開中

2010年6月26日（土）～群馬プレビ劇場
2010年7月3日（土）～愛知名古屋シネマテーク
2010年7月10日（土）～大阪シネ・リーブル梅田
2010年8月14日(土)～宮城チネ・ラヴィータ
2010年8月21日（土）～ 沖縄桜坂劇場
この他の全国の上映劇場情報はこちらから

監督：ジェフリー・レヴィ＝ヒント
出演：モハメド・アリ、ジェームス・ブラウン、B.B.キング、ビル・ウィザース、ミリアム・マケバ、他
配給・宣伝：アップリンク
アメリカ / 93分 / 2008年 / カラー / ドルビーSRD / 英語、フランス語、他

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