(C)Jun Ishikawa
演出・美術・照明・音響のほぼ全ての要素を、庭劇団ペニノ主宰・タニノクロウ自身が担い、自宅マンションを公演ごとに改造したアトリエはこぶねでの公演や新宿の高層ビル群に囲まれた空き地に奥行50mにもなる巨大テントを設置しての野外公演など、タニノクロウの理想は公演ごとに「劇場を作る」ところにある。つまり、劇場のブラックボックスに合わせて作品をつくるという形態ではない「非劇場」での公演活動を積極的に行う。また、せりふのない生活音だけで成立させた「Mrs.p.p.overeem」やジャズの生演奏と混乱する手術シーンを並行させ、恐怖と笑いを巻き起こした「アンダーグラウンド」など、既存の「演劇」を軽々と突き破る「非定型」の作品づくりも庭劇団ペニノの特徴だ。今回の公演では、にしすがも創造舎の通常の客席パターンを全て取り払い、タニノのイメージ世界を具現化するための空間作りを一から行う。体育館という広大な空間を手に入れたタニノクロウの非凡な脳内世界を、全身で体感できる絶好の機会となっている。
(C)Jun Ishikawa
会場のにしすがも創造舎は、西巣鴨の廃校を転用した文化芸術創造の拠点。今回の公演の舞台は、体育館に設置された巨大な2階建てのマンション。一見病院のような無駄がなくシンプルで美しい……つまり“白い”内装のマンションの、1Fにある各部屋には10~50代の男女がそれぞれ訳アリな背景を抱え、ベットの上に佇んでいる。2Fのベランダ付きの部屋には、4人の若い男女。そのうち一人の男が、「パンチラ」について熱弁をふるう。それに合わせ、マンション内のあちこちで、パンチラが“起こる”。テレビのザッピング音を合図に、各部屋で繰り広げられる物語。そしてエンドロールのように鳴り響く、シナトラの曲。出演者の舞台挨拶もなしに唐突に終了。まさに、映像作品を観ているよう。タニノクロウの下着に対する愛情がたっぷり詰まった作品だ。
たくさんの言葉が語られる、言葉が主役の作品です。
上演時間は1時間30分ほどのささやかな作品ですが、
最後まで、おすまし頂ければと思います。
タニノクロウ
(C)Jun Ishikawa
■庭劇団ペニノ カンパニープロフィール
作・演出のタニノクロウを中心に2000年、昭和大学医学部演劇部を母体として発足。「庭」という一つの抽象的イメージのもと奔放に広がる様々な表現形態を提示する集団として設立。劇団員は、代表のタニノクロウの他には構成を担当する3名のスタッフのみで、俳優・技術スタッフは所属していない。これまでに17 回の公演を重ね、大阪・精華演劇祭への参加、台湾・古嶺街小劇場の招きで台湾公演も行っている。また今秋には、ベルリン・HAU(ヘッベル)劇場の招聘も決定している。
※カンパニー公式サイトはこちら
フェスティバル/トーキョー2009秋
庭劇団ペニノ(タニノクロウ)「太陽と下着の見える町」
日時:2009年12月5日(土)~13日(日)
※日によって、14:00~/17:00~/19:30~のいずれかの開催
会場:にしすがも創造舎(東京都豊島区西巣鴨4-9-1)[地図を表示]
作:演出:タニノクロウ
出演:久保井研、山田伊久磨、五十嵐操、内田慈、笹野鈴々音、佐野陽一、森準人、間瀬英正、坂倉奈津子、大久保宏章、寺田ゆい、高橋ちづ他
料金:一般3,500円 学生3,000円 高校生以下1,000円
※フェスティバル/トーキョー2009秋公式サイトはこちら