骰子の眼

cinema

東京都 渋谷区

2009-09-08 14:34


モーリー・ロバートソンのウイグル旅行記Vol.1:「アーティストとして状況を楽しむうちに、だんだんと当事者になっていく」【動画付き】

アップリンクで緊急公開が決まった映画『ウイグルからきた少年』の公開に向け、モーリー・ロバートソン氏の連載をリスタート
モーリー・ロバートソンのウイグル旅行記Vol.1:「アーティストとして状況を楽しむうちに、だんだんと当事者になっていく」【動画付き】
ウイグルの子供達の表情は、くったくがない。

2009年7月に起きた暴動事件がまだ記憶に新しい、ウイグル自治区。アップリンクでは10月3日から映画『ウイグルからきた少年』 を緊急公開します!公開に向け、「チベットを知る」 を連載していた、i-morleyでお馴染みの人気DJ、モーリー・ロバートソン氏が今度はウイグルについてレポート。氏が約3週間滞在したウイグルで、人々の生活・文化や、中国政府による対応など、日本ではなかなか知ることがない貴重な情報を、動画と写真を使ってお届け。

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ウイグルへの旅立ち

ウイグルへの旅は、2007年2月にチベットに行った際のバックアッププランのひとつだったという。2009年に暴動が起きたため監視が厳しくなったが、当時、ウイグルへのルートには中国政府による監視に隙があった。

当初は、「政治に対するコミットメントはなかった。アーティストとして状況を楽しむことはあっても、傍観者でいよう」と決めていたというモーリー氏。「ウイグル族は民族衣装を着ているのか?それともジャージ?マクドナルドはあるのか?スターバックスは?ウイグル語はしゃべらなくなっているというのは本当か?ヒップホップはあるのか?」など、とても素朴な疑問が湧いた。そして「行って自分の目で確かめるしかない」と。日本は、マクドナルドやスターバックスが入ってくることで文化が変わってきた。中国にいても国営放送では放送されないウイグルではどうだろう。自ら体験して、自分なりの結論を導き出したい!という優等生的な思いを胸に、旅と危険が大好きなモーリー氏は旅立った。

ウイグルを訪れるのは、3度目。しかし10年以上前に訪れた1度目や、その後の2度目のウイグル訪問は「ついで」であり、目的地ではなかった。今回は、これまでとは違うより地元に詳しいガイドとともに、きめ細かい旅になった。

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グローバリズムに突然出くわす上海。でもスターバックスはどんな都市にも、本当によく似合う。

-15度のウルムチ、賑わうバザールへ

2007年3月。上海を経由し、新疆ウイグル自治区にある都市、ウルムチへ。ウイグルでは2月が最も寒い季節。「カメラを持つ手の指がちぎれそうなほど寒い」という到着時の気温は、-15度。2~3月は、一番寒い季節だ。

翌日は、人々で賑わうウルムチのバザールへ。

「ウイグル料理は本当においしい」と絶賛する、モーリー氏。主食である羊の肉(頭も料理する)や、「世界で一番おいしい麺」「ラーメンの元祖」とも言われる「ラフマン」、「ポロ」という羊の肉を野菜・米をパエリアのように炊き込んだもの、ウイグル族とともに回族によるムスリム料理=イスラム料理は、中国で「清真料理」と呼ばれ中国人からの人気も高い。イスラム料理は、中華料理とは全く違いあっさりとしており、「日本にウイグル料理屋があれば毎日行く」というほどモーリー氏も大好物。

少年が器用にも頭に乗せて売り歩いているのは、乾いていて固い、ナンのようなもの。バザールにはたくさんの売り子を見ることができる。ウイグル料理として忘れてはならないのは、「ランポン」というところてんのような食べ物。酢醤油のようなタレで食べる、非常に和風な舌ざわりだ。寒天でできている、皆大好きな庶民的な食べ物で低価格で手に入る。

Picnik コラージュ
左上)ウルムチのバザールで売られるザクロ・ジュース。こことイランにしか無いクオリティーの飲み物。
左下)ウルムチのバザールに並ぶ羊の剥製。埃っぽく、雪も真っ黒になったウルムチで、このバザールだけがこぎれいな場所なので、なんだか妙な気分にもなる。
右上)ドライフルーツやナッツは新疆でふんだんに採れる。量り売りで毎日、大量に品物が動いている。
右下)カシュガルのレストランで注文したラフマン。これこそがラーメンの元祖かもしれない。

「ラビアのデパート」

活気があってウイグルらしさが温存されている、バザール。人々が集い、語り、笑い合う、団らんの場であると同時に祈りの場でもある。ウイグルの中でもウルムチのバザールは、漢族が入っている痕跡があまりないのが特徴。ただ売られているもののうち、生鮮食料品などを除いた加工品は、ほとんどが中国産。経済圏は中国に入ってしまっている。露店のバザールはウイグルらしいが、綺麗に整備されたバザールは、中国政府が観光用に再開発し作ったもの。

そしてここにも中国政府の監視の眼が。人々が団らんや祈りのために集まることに対して恐れがある中国政府が、こんな憩いの場でも眼を光らせている。

そんなデパートのひとつを、世界ウイグル会議の議長であるラビア・カーディル氏が経営していたことがあり、地元では今も「ラビアのデパート」と呼ばれることも。ラビアはチベットでいうダライ・ラマのような存在で、容易に口にすることができない名前だ。

これから全8回に渡り、秘境・ウイグルの最新情報を織り交ぜながら、ウイグル人の笑顔と、アパルトヘイトよりひどい現実に迫りたい。

(インタビュー・文・構成:世木亜矢子)

モーリー・ロバートソン氏プロフィール

「i-morley」の創始者、ミュージシャン、ラジオDJ、ジャーナリスト、作家。1991年以来、J-WAVE(81.3FM)などでラジオ・パーソナリティーとして活躍し、伝説的な深夜番組「Across The View」を司会。自由気ままに語り継ぐポッドキャスト「i-morley」はかつての深夜ラジオに心酔した人から初めて耳にするティーンエイジャーまで、広くリスナーの心をつかみ、52万人を越えるオーディエンスを獲得するに至る。2007年には、チベット・ラサでの取材を写真や映像でレポートする企画「チベトロニカ」の総指揮を務める。

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『ウイグルからきた少年』
2009年10月3日(土)より渋谷アップリンク他、全国順次ロードショー

監督・脚本・編集:佐野伸寿
出演:ラスール・ウルミリャロフ、カエサル・ドイセハノフ、アナスタシア・ビルツォーバ、ダルジャン・オミルバエフ他
2008年/日本・ロシア・カザフスタン/65分
配給:アップリンク
公式サイト


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