骰子の眼

music

東京都 渋谷区

2009-08-26 22:00


「どこかで聴いたことがある〈音楽〉の先には、自然の〈音〉がある」 -インプロビゼーション・デュオkyインタビュー

国境を越えて移動し続けるバンドが語る、フランスのジャズ・シーン、そして即興演奏に対する思い
「どこかで聴いたことがある〈音楽〉の先には、自然の〈音〉がある」 -インプロビゼーション・デュオkyインタビュー

7月に発表したニューアルバム『無口なうたとおしゃべりな音楽』とともに現在ジャパンツアーを敢行中のkyが、8月27日、UPLINK FACTORYに登場する。ジャズとインプロビゼーションをベースに常に意欲的なコラボレーションを続けてきた仲野麻紀とヤン・ピタールのデュオ、今回の公演ではゲストとして勝井祐二やナスノミツル、芳垣安洋らとも共演する即興チェリスト、ユーグ・ヴァンソンを迎え、さらにフランスのジャズ・シーンの顔役ベルナール・ルバのドキュメンタリー映画の上映も行われる。スリリングかつ心地よい演奏に加え、バンドの源泉となるミュージシャンの記録を併せて堪能することで、自らをノマド(遊牧民)と評する彼らのインプロビゼーションに対する哲学をより深くできる内容となるに違いない。


ルーレットで決めるジャムセッションで出会った

── まずは自己紹介をお願いします。

仲野麻紀: kyは2005年からフランス人のミュージシャン2人と日本人の私がトリオで結成して始めたんです。2007年に一回日本に来ているんですが、そのときはこの前来ていたトマ・バラリニというパーカッションと3人で来日しました。彼の既成概念にとらわれないパーカッションと、ヤンさんのバリトンギターやアラブ音楽で必要不可欠な楽器ウード、それからペダルを駆使したサウンドに加えて、メタルクラリネット、あと近年になってボイスも取り入れながら、トリオで音楽活動をしていたんですね。ただ、音楽性の違いもあるし、行動範囲が広くなってきた原因で、現在はヤンさんと私のデュオを基本として活動しています。今回27日UPLINK FACTORYで演奏する際は、チェロのユーグ・ヴァンソンをゲストに迎えて、kyプラスワンになるんです。kyのサウンドの主な特徴としては、インプロビゼーションがありつつも、フランスの作曲家エリック・サティの楽曲を取り入れるというのがいちばんのキーポイントになると思うんです。

── なぜサティだったんですか?

仲野麻紀: それはもう簡単な理由で、私が好きだったというのと、最初に始めたのはインプロビゼーションだけだったんですけれども、あるとき「なんでフランスに来たの?」って聞かれて「ドビュッシーも好きだしラヴェルも好きだし、サティも好きなんだ」っていうところで3人が一致して。私たちはインプロビゼーションだけではなくて楽譜を見ることもするし、コンセルヴァトワールに行っていた関係でアレンジするということが好きだったんです。ですから、エリック・サティの曲はもともとピアノなんだけれども、それにサックスとギターとパーカッションを加えたらどうなるかということで始めました。ご覧になるとお解りになると思うんですけれど、楽譜はふつう縦の線があるんだけれど、サティの楽譜はいちおう白玉とか黒玉はあるんだけれど、時間軸がないんですよ。そこが私たちの刻んだリズムにとらわれないインプロビゼーションの方法と合致したので、この方法で進めていこうと思って、今も現在進行形です(笑)。

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仲野麻紀

── そもそもおふたりはどうして知り合われたんですか?

仲野麻紀: コンセヴァトワールのアレンジ科で一緒だったんですけれど、2年間ずっとやっていて、一度もしゃべらなかったんですよ。ただ最後の卒業発表の時にお互い初めて話して、そのときはフランス語もよくしゃべれないし、ただ単に電話番号を交換しただけだった。その後ヤンさんは3ヵ月強の間エジプトに行って、そこでウードを習ったらしいんです。私もその後日本で日本人のミュージシャンと演奏して、またパリに戻ってきたときに、あるジャムセッションで知り合ったんです。それが面白くて、まず何人でやるか、誰とやるかをルーレットで決めるんです。それを主催しているのがジャン=フランソワ・ポーヴロスさん。灰野敬二さんや吉増剛造さんとよく演奏していて、日本にも来ている方が、NPOみたいにインプロビゼーション・ナイトというのを毎月月末の月曜日に主催しているんですね。そこで、デュオでヤンさんと当たって、ウードとサクソフォンというのがこんなにも合うのかというので、セッションを始めたんです。

── お互い知っていたけれど、そこで初めて一緒に演奏したと。

仲野麻紀: だからお互いどういうアレンジするかというのは聴いていたんですけれど、演奏したのはそこが初めて。それが2004年の暮れですね。2005年になって、トマも加わったんですが、なぜ彼を選んだかというと、パラボラアンテナを最初に楽器として使っていたんですよ。ビジュアル的にも面白いし、なかなか面白い音がするので、その3人で始めました。

── なるほど。フランスでは普段どういう現場で演奏されているんですか?

ヤン・ピタール: ジャズクラブやカフェとかフェスティバル、エスパス・ジャポンのような各国のカルチャーセンターみたいなところでやることが多いですね。

── カフェでやる場合は誰か主催者がいるんですか?

仲野麻紀: もちろんカフェのオーナーがこの日に空いてるからやりませんか?っていう場合もありますけれど、ここでやりたいというときは、私たちで企画をします。いまパリでは入場は無料なんだけれど、シャポー(投げ銭)みたいな感じが増えていますね。

── それは政府がサポートしなくなったから?

仲野麻紀: うん、それも理由に上がりますね。今までだと最低ラインというのが保障されていんだけれど、それがなくなってしまったので。だからノマドというか、メトロで演奏する方もかなり増えてますね。メトロで演奏するのってオーディションが必要なんです。オーディションを受ける方もとても増えています。かなりいいお金になるんですよ。一日一生懸命やれば150ユーロぐらい(20,000円弱)。だから朝7時くらいに場所をとりにいって、お昼ちょっと休憩して、また戻って演奏して、サラリーマンみたいな感じですよ(笑)。

── 吉増剛造さんや灰野敬二さんといった、日本の前衛的な文化が好きな人にとっては象徴的な名前が出てましたけれど、パリをメインに活動されて、どういう人たちとイベントをやったりしているんですか?

仲野麻紀: やっぱり同じコミュニティが多いですね。例えば私だと、サックスというのもありますけれど、ジャズのミュージシャンとか学校時代の仲間と一緒に仕事をすることが多いです。

ヤン・ピタール: 私はどちらかというと民族、ワールドミュージック系の人が多くて、インドとかアフリカ、レバノンとか。

仲野麻紀: ヤンさんのほうが国際色豊かじゃないかと思います。


インプロビゼーションでどれだけ静寂が保てるか

── 今回3回目のツアーということですが。

仲野麻紀: 最初下調べということで2006年にデュオで2週間弱くらいまわったことがあるんですよ。その反応をみながら2007年にトマさんとトリオで来て、『ネッソンシエル』というCDを作ったんです。そのときは全22曲のなかで11曲はエリック・サティで、あとの11曲はインプロビゼーションでした。2008年はフランス人のほかいろいろなミュージシャンをゲストに迎えて作ったのが、去年のCD『Dance de travers』です。今年はまたデュオで作って、トマさんにも2曲入ってもらいました。そのCDが今回のツアータイトルにもなっている『無口なうたとおしゃべりな音楽』。歌というのは無口なわけないですよね。そしておしゃべりな音楽というのには、インプロビゼーションでどれだけ静寂が保てるかというアイロニーもこめているんです。実際今回のアルバムには歌が4、5曲入っています。

── kyの音楽を象徴しているとてもすてきなタイトルですね。

仲野麻紀: これは最初にフランス語でタイトルを決めたので、後で日本語で感覚を訳すのがすごく大変でした。でも日本語って漢字とかカタカナとかひらがなを使ってイマジネーションが膨らみます。

── そうした相反するものに魅力を感じる?

仲野麻紀: はい、今回のUPLINKでのライヴで上映するフィルムに登場するベルナール・ルバという方も、コンサート中にしゃべることってそういうアイロニーばかりで。上映している間に私が訳しながら進めていきますけれど、直接訳してしまうと面白みがなかなか伝わらない。だから、下知識として彼の履歴についてはご入場の皆さんにあらかじめお配りする予定です。そのほうがベルナールさんの意図していることが解るんじゃないかなと思います。

── どんなフィルムなのかもう少し聞かせてください。

仲野麻紀: もともと50数分あるフィルムなんですけれど、今回30数分のショートバージョンということで、主にはベルナールさんが幼少どういう経緯ときっかけでジャズを初めて、そこからどうやってジャズから離れてインプロビゼーションの世界に行って、自分の音楽として消化していったかという流れを語ってるんです。もうひとつキーワードとなるのが、彼自身が主催しているフェスティバルについて。もちろん(政府からの)補助金がないと大変なんだけれど、それが最低ラインでも、情熱と音楽に対する気持ちがあれば成功しうるという内容になっています。若かりし頃の映像も入っていますし、最後の方ではアーチー・シェップとかいろんなアメリカのミュージシャンとベルナールさんが机の上で演奏するシーンも入っています。

── どうして今回のUPLINKでのイベントでこのフィルムを上映しようと考えたのですか?

仲野麻紀: ジャズというと必ずアメリカというイメージがあるんですよね、ニューヨークとかニューオリンズとか。でも、今年になってジャック・シラクが退任するときに最後に新しく作ったケ・ブランリという新しい美術館ができたんです。そこはアフリカや北米やブラジル、そしてアジアからの原始美術のコレクションがメインです。そこの企画で、今年の3月から6月にかけて『ジャズの世紀展』(Le sie`cle du Jazz)という展覧会があったんです。その中で、アメリカだけではジャズは開花しなかったということを、フランス人がフランスを代表して開催して、ものすごい盛況でした。私たちもあらためて、日本人の立場でジャズとフランスの関係とはなにかというのを考えるようになりました。やはりフランスが貢献した力というのはものすごいんですよね。

── そこでフランスのジャズの影響力を再確認されたと。

仲野麻紀: 映画があって、外国の文化を教養するキャパシティがあって、そこにその時代を生きたベルナールさんがいるので、それを日本の人に紹介することによって、フランスのジャズというのがおぼろげだったのが、もっとダイレクトに伝わるんじゃないかと思ったんです。どうしてもフランスのジャズといってもヨーロッパでひとくくりになるんですけれど、ヨーロッパ・ジャズといってもすごくお国柄があって、フランスのジャズってすごく政治的な力と関わりがあるんですよね。ビバップ回帰とか、例えばサンジェルマン・デ・プレには5、6軒軒を並べてバップやスタンダードしかやらないお店というのもあるんだけれど、今回ゲストにお呼びするユーグさんとか私たちがやっているのは、アクチュアルな現在進行形型のインプロビゼーション。それをずっとやってきて、今もやっているベルナールさんと相通じるものがあるんじゃないかと思って選びました。

── kyが活動しているフランスのジャズ/インプロビゼーション・シーンの下敷きにある部分を見せたかったと。

仲野麻紀: そうですね。こういう先駆者がいるから私たちもがんばれるだろうし。もちろん彼もナショナル・コンセヴァトワールを出ているので、ピアノでもビブラフォンでもトップクラスのクラシックの人はすごいんですけれど、そういうものをちゃんとと消化した後に自分のやりたい音楽を貫いているというのは、クラシックとジャズとインプロビゼーションと、いろんな音楽の架け橋になっている方なんじゃないかなと思います。ちょうど去年、昼間賢さんと対談したんですけれど、その方も唯一フランスのジャズについて発信している。『ローカル・ミュージック』という本が出てますよね。そういう方が紹介しているバックには、こういう映像もあるんですということもお伝えできればなと思いました。

── フランスのジャズのシーンというのは伝統的なものと革新的なものを両方大切にする土壌があるんですね。

仲野麻紀: そうですね。大きなフェスティバルでも、色は分かれるんですけれど、JBCジャズ・フェスティバルなどではどちらかというと保守的なミュージシャンを選ぶ場合もあるんだけれど、私の印象ではフランスの3分の2はアヴァンギャルドをメインにしているところがあるんですよね。

様々なペダルや楽器を演奏することで時空旅行ができる

── 実際kyとしては今回4回目の日本で、同じ場所で演奏することもあるんですよね。各地をいろいろ廻ってきて、何か変わってきたところはありますか?

仲野麻紀: 同じ場所を廻ることによって、より密度が増すというのはあります。例えば北海道で先週やっていたんですけれど、ほとんどの人が初めて私たちの音楽を聴くわけですよね。新聞にもフレンチ・ジャズといった形容で載るんですけれど、やっぱりそういう思いで来た人が多いんです。でも実際みなさんがイメージするフレンチな、というのと私たちkyがやる音楽にはちょっとディスタンスがあるんだけれど、最終的にみなさん最後まで聴いていただけて。おじいちゃんやおばあちゃんから、「何をやってるのか解らなかったけれども、音がここ(と、胸をたたく仕草)にきたわ」って言っていただけると、自分たちが動くことによって得られる経験というのは大きいなと思うんです。

── すてきなエピソードですね。

仲野麻紀: 佐渡ではお寺の奉納演奏をやらせていただいたんですけれど、来る方は檀家さんとかジャズのジの字も聞いたことがないような町のおばあちゃんだったりするんです。でも皆さん最後まで聴いてくださってCDを買ってくださって。よくフランスの友達に「ドサ廻りだね」って言われるんだけれど、そうやってエネルギーが伝わるというのは、それでいいんじゃないかと思います。

── 自分たちで企画されて、今回は何ヵ所ですか?

仲野麻紀: やっている最中に「ここでもやってください」っていうのがあるじゃないですか。時間が空いている限り条件が合えばイエスと言いますので、結果的に30はやっています。この間は、林海象さんがプロデュースしたお化け屋敷で演奏したんですよ(笑)。それもなんだかはちゃめちゃでしたけれど、いつものkyとは違った、人を驚かせてやる!って感じで演奏できたので、いい経験でした。

── ライヴをやるときはその場所のヴァイヴに影響されますか?

仲野麻紀: それが100パーセントですね。なんで私たちがいろんなところでやるかというのは、そういう刺激を求めているのもあると思うんですよ。常に同じハコでやるんじゃなくて、土地が変わりますと空気が変わりますし、人のしゃべり方や考え方も変わるので。その空気感というのはとても大事ですね。

── 日本を廻ってみて感じることや手応えはありますか?

ヤン・ピタール: 比較でしか言えないけれど、フランスで演奏するときとの大きな違いとして、日本の人は解らなくても解らないことを受け止めるというようなことを感じて、そこに感動するんです。フランス人の場合は「私は解らない」って帰ってしまうとか、ダメだとかはっきりしているけれど、お年をお召した方が解らなくてもそこにいるっていうのは、それだけですごくエモーションを感じるんです。

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ヤン・ピタール

── そうなんだろうなと思います。ヤンさんはky以外にもいろいろ活動していて、普段は職業音楽家としてテレビのドキュメンタリーの音楽とかいろいろ手がけていらっしゃるんですよね。僕はいちどkyのライヴでヤンさんの演奏を見て、すごく面白いと思ったんです。ウードを使ったり、ジャンルでは限定できないユニークさがある。日本で音楽をやっている人や聴く人の中には、音楽の文脈を追っていってちょっと頭がパンクしてしまう人が少なくないんです。ヤンさんはどのような経緯で今の演奏のスタイルを完成させたんですか?

ヤン・ピタール: 最初はクラシックギターから始めて、そういうクラシックのベースがあったんだけれど、何か違うことを探していたんです。音楽をやるうえで、常に誰かと演奏したいというのもあるけれど、とにかく今までにないようなイメージを求めていました。その後はエレクトロニックなものに触れて。やっぱり思春期ってそういうものが好きですから。私はパリで生まれてブルターニュで育ったんですが、周りに友達もいないし、とにかくひとりでギターをずっといじっていたんです。そうしたらあるとき母に「だったら鯨の音をギターで出してみたら?」って言われたんです。

── 鯨ですか(笑)。

ヤン・ピタール: そのときに「じゃあ出してやろうじゃないか」ってモチベーションが高まって(笑)。それで一時期すごくペダル(ギターのエフェクターのこと)にすごくこだわって、例えば空気の音だとか波の音といったサウンドを出すことに熱中した後に、またコードを触りたくなったんです。そしてエレクトリックギターはもちろん、他の国の弦楽器はなにがあるんだろうと、17歳のときにインドに行ったんです。そこでドタラという楽器に触れて、そこからまた(弦楽器への)愛情が深まりました。私にはひとつの時間軸があって、ここ(現在)で始めたんだけれど、ペダルを使うことによって、今までに聴いたことがない未来へ向けての音を探し始めて、それと同時にドタラやウードという過去の楽器を演奏することによって、ひとりで時空旅行ができる。

── 面白い言い表し方ですね。では現在はkyとしてふたりが最少人数でそこにセッションとして加わっていく、そういうフレキシブルな活動の仕方がいちばんしっくりきているということなんですね。

仲野麻紀: スペースがあるというか、常にそこに誰かが加わってくれるのはウェルカムですね。それがヨーヨーだったりもするんです(笑)。フランスで活躍している日本人ヨーヨー・チャンピオンとの共演のときは、真っ暗ななかで私が演奏して、その中で彼の光るヨーヨーが動くというもので、とても面白かったですよ。

── 今後の展望があれば聞かせてください。

仲野麻紀: もっといろんなところで、いろんな国のミュージシャンと演奏したいですね。来年はトルコを拠点とするんです。5月にトルコのパーカッショニストと演奏をしたので、その録音が今年の12月か来年の1月に控えていています。それが近い未来ですけれど、その他にコラボレーションとして夢枕獏さんの『陰陽師』の音楽を、私たちなりの解釈でできればなと思っています。そういうことをきっかけに、いろんな出会いもあるけれど、私はやっぱり日本人ですから、日本の自然や神秘的な要素を音楽を使って紹介できればなと思っています。ヤンさんとトマさんが「日本の島自体が世界遺産なんじゃないか」と言っていたことには、ちょっとドキッとしましたね。例えばJ-WAVEとかで各国の自然の音、空気音を紹介している方がいらっしゃいますよね。私たちの音楽に「どこかで聴いたことがあるような」っていう思いの回路の先に、自然の音があるといいなと思うんです。

── トルコはアジアとヨーロッパの文化が融合していますし、フランスもすごくアフリカの影響も強いですから、おふたりがやっていることと相通じるものがあるような気がします。

仲野麻紀: 移動しているとますます時間の感覚が薄れてきてしまうんです。実は国境というのはほとんどなくなってきているんじゃないかと思って。政治とか石油とか、そういう意味のためにしかないのでは、と感じています。

── ほんとうにノマドのようですね。

仲野麻紀: それが理想で、やっぱり動けなくなるときってあると思うので、動けるときは動くというのがモットーかな。いろんなところで演奏するので、荷物がすごいんですよ。マイクスタンドもアンプも自分たちで持っていくんです。この間奈良の神野山でやったときには、草の上にマイクスタンドを立てて、どこかから電源を引っ張ってきた。なんにもなくて、でもなんにもないからこそ、そのときやった感動というのは忘れがたいですね。

── 最後になにかメッセージはありますか?

仲野麻紀: やっぱり言葉では説明できないので、実際に聴いてもらいたいですね。

── ヤンさんは日本の実験的な音楽に興味があるんですよね、具体的に共演してみたいアーティストは?

ヤン・ピタール: まず吉田達也さん、なぜならばいちばん最初に発見した日本のミュージシャンだからです。あとは、足立智美さん(笑)。(※昨年の来日時にたまたま足立智美さんのリハーサルをUPLINKで目撃してから好きになった)

── それは近い将来実現しそうですね。吉田さんも古代にすごく惹かれている方だし、3人のセッションとか、めちゃくちゃけたたましいアグレッシヴなkyを観てみたいです。



(インタビュー・文:倉持政晴 / 構成:webDICE編集部)

■ ky(キィ)PROFILE

2005年結成。インプロビゼーション、ジャズの要素に民族楽器を加え、エリック・サティの楽曲をプレイすることをコンセプトにフランスを中心に演奏を開始する。現在は仲野麻紀とヤン・ピタールを中心に活動中。2009年7月にニューアルバム『無口なうたとおしゃべりな音楽』をリリースした。


ky LIVE『無口なうたとおしゃべりな音楽』
2009年8月27日(木)19:00開場 / 19:30開演

出演:ky…仲野麻紀(サックス、クラリネット、ネイ)
Yann Pittard(バリトンギター、ウード)
Hugues Vincent(チェロ)*ゲスト
上映:「Jazz Collection: Bernard Lubat」

会場:アップリンク・ファクトリー
(東京都渋谷区宇多川町37-18トツネビル1F)[地図を表示]
料金:予約2,500円 当日3,000円(予約共に1ドリンク付き)
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ky『無口なうたとおしゃべりな音楽』

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▼ kyの『無口なうたとおしゃべりな音楽』より、試聴できます。プレイヤーをクリックで再生!

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