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それは、不可解な殺人事件だった。ニューヨークの郵便局で、局員が窓口に切手を買いに来た男を、顔を見るなり射殺したのだ。前科も病歴も借金もない真面目一筋の彼の部屋から、行方不明になっていた歴史的に極めて重要なイタリアの彫像が発見される。2人の間に、いったい何があったのか─? 謎を解く鍵は、1944年のトスカーナにあった。
時は、第2次世界大戦の真っ只中。若き郵便局員は、黒人だけの部隊“バッファロー・ソルジャー”の一員として、ナチスとの激しい戦いに身を投じていた。ある日、黒人兵の1人が現地の子供を救出したために、共に行動していた4人が部隊からはぐれ、トスカーナの村に辿り着く。まさかそこに予想もしない激烈な運命と、ある〈奇跡〉が待っているとも知らずに……。
1986年の監督デビュー以来20余年、様々な角度からアメリカ黒人社会を描き続けてきたスパイク・リー監督が、最新作で取り上げたのは、第2次世界大戦時に実在した黒人だけの部隊、第92歩兵師団“バッファロー・ソルジャー”。彼らが送り込まれた最前線、イタリアのトスカーナには、封印された残酷な史実があった。1944年8月12日、ナチスが罪のない大勢のイタリア市民を殺害した“セントアンナの大虐殺”(注)だ。
戦場を舞台にした初めての作品となる本作で、スパイク・リー監督の視点に、明らかな変化が見られる。そこに描かれるのは、黒人と白人の対立関係ではなく、戦争を支持する者と、しない者の対立。人の命が奪われることに涙する者たちの想いが、一つになる姿だ。
折しも、アメリカ史上初の黒人大統領が誕生した。バラク・オバマもまた、黒人と白人の真の共存を唱えている。彼の熱い支持者として知られるスパイク・リー監督は、様々なインタヴューに応じているが、その中で「こういう時代に生きているのは素晴らしいことだ」と語っている。変わりゆくアメリカと共に歩む、スパイク・リー監督の新たなる第1歩が、本作なのである。
(注)イタリアのサンタンナ・ディ・スタッツェーマ市で起きた事件。アメリカでは“セントアンナの大虐殺”で知られ、“サンタンナ”を“セントアンナ”と発音している。本作品においても、アメリカのシーンで“セントアンナ”と発音されていることから、タイトルでは“セントアンナ”を採用。
『セントアンナの奇跡』
2009年7月25日(土) TOHOシネマズ シャンテ、テアトルタイムズスクエア他にて全国ロードショー
監督:スパイク・リー
出演:デレク・ルーク、マイケル・イーリー、ラズ・アロンソ、オマー・ベンソン・ミラー、他
2008年/アメリカ・イタリア/160分
配給:ショウゲート
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