骰子の眼

cinema

東京都 豊島区

2009-06-06 15:10


インディーズ作家の強い味方『CO2』『水戸短編映像祭』東京で上映会開催!高橋明大監督インタビュー

横浜聡子もここから誕生した!日本映画界から熱い注目を集める二つの映画祭で受賞した作品がシネマ・ロサで上映される。将来活躍する映画監督は誰だ!?
インディーズ作家の強い味方『CO2』『水戸短編映像祭』東京で上映会開催!高橋明大監督インタビュー
(左上より)『ある光』(2009年)、『最後の怪獣』(2007年)、高橋明大監督

大阪を拠点に、コンペ開催と毎年5本の映画企画へ助成・制作支援をしている「CO2(シネアスト・オーガニゼーション・大阪エキシビジョン)」。そして、水戸芸術館で毎年開催されている、短編映像に焦点を当てた「水戸短編映像祭」。

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これまでに、「CO2」は『ウルトラ・ミラクル・ラブストーリー』の横浜聡子、『ガール・スパークス』の石井裕也、「水戸短編映像祭」は『パビリオン山椒魚』の富永昌敬、『くりいむレモン 旅のおわり』の前田弘二など、次代の日本映画を背負って立つ監督を次々に輩出している。 そんな、自主映画作家にとってはPFF(ぴあフィルムフェスティバル)と並ぶ登竜門とも言える二つの映画祭が、奇しくもこの6月、揃って池袋シネマ・ロサで関連作を集めた上映会を開催する。

6月6日(土)より開催されるのは、CO2イチ押しの作品を集めた「CO2 in TOKYO '09」。続いて6月13(土)からは、07年~08年の受賞監督たちの受賞作品を中心とした「水戸短編映像祭セレクション」。若き才能がひしめき合う14日間、ぜひ池袋でその熱気を感じて欲しい。

今回、この二つの上映会の双方で作品上映が行われる監督が一人いる。2007年『最後の怪獣』で、水戸短篇映像祭準グランプリを受賞、翌年同作で第4回CO2オープン・コンペ部門最優秀賞を受賞した高橋明大(あきひろ)監督だ。「CO2 in TOKYO '09」ではCO2の助成制度で撮った『ある光』が12日(金)に、「水戸短編映像祭セレクション」では『最後の怪獣』が14日(日)に、それぞれ上映される。高橋明大監督に話を訊いた。



まずは、各映画祭に出品したきっかけを聞いてみた。
「自主制作で『最後の怪獣』という作品をつくって、まず水戸短編映像祭に出品したら幸運にも賞を戴くことが出来て。それで他にもいろいろ送ってみようと思ったんです。CO2は助成制度があるので、次に繋げられるのがいいなと思い、送ってみたところ、最終審査委員の矢崎仁司監督が強く推してくださったこともあって、今度はグランプリを戴きました。グランプリを獲ると、次の年の助成を受ける権利が戴けるんです。一応企画は提出するんですけど、無審査で」


↑高橋明大監督『最後の怪獣』(2007年/65分)
怪獣になって町を破壊する夢を見る男が、取り戻そうとしたものはなにか…?真夜中にエコーする、愛と憎しみと歓喜の歌。

そして、高橋監督が提出したのが『ある光』という作品の企画書。
「無審査だというのに甘えてしまって、とにかく思いのたけを書き殴りました。あまり、親切な、分かりやすいものではなかったです。だから後で審査員の方に、“あれ、コンペだったら通ってたか分からないよ"なんて言われてしまいまして(笑)」

『ある光』は、昨年起きた秋葉原通り魔事件を創作の動機のひとつとしている。
「皆が、できれば明るく過ごしたいよねと言いながら、これまでなるべく目をそらして見ないふりをしてきたもの、それが向こうから突然襲ってきたような気がしたんです。そして、その頃もう一つ考えていたことが、例えばいくつかのアメリカ映画が、どんなに荒唐無稽な設定であれ、何らかの形で9.11以降という現実をその画面に反映させているように見える一方で、最近の多くの邦画が、現実とは関係の無いフィクションそのものの論理にしかのっとっていないようにふと思えてしまって。だから、こうやって助成を受けて、作りたいものがつくれるということになった時、こんな映画があってもいいだろう、“いや、いろいろなことが現に起こっているじゃないか”という、現在を思いっきり反映した作品があってもいいだろうと」


↑高橋明大監督『ある光』(2009年/95分)
ひとりの女の死を、各々の主観で捉えるしかない男たち。どこまでも客観的な光が、生き残った彼らの身体を照らすとき、希望は同時多発する。

とは言え、この作品はただリアリズムを追求しただけの社会派作品ではない。ラストにはちょっと意外な展開が待っている。
「『最後の怪獣』もそうなんですけど、現実と切り結ぶものをつくりたい一方で、でもやっぱり映画は、なにかを問題だと喧伝するためのものではないから。いかがわしくても、突拍子がなくても、肝心なのは形容し難いものがあるかどうかだと思うので」

ちなみに高橋監督、映画配給会社アップリンクが主宰している「デジタル・ムービー・ワークショップ」の元受講生でもあった。
「『最後の怪獣』を、ワークショップの参加者全員に見てもらったんですよ。その後に皆に感想を言ってもらって。ワークショップには色んな方が参加しているから、そこでもらえる意見は、全然知らない角度からとんできたりして面白かったですね」

高橋明大監督

最後に、“インディーズ映画の上映会なんて、本当に面白いの?”と思っている方に、監督から一言。
「手堅くはないかもしれないけど、自分の想像がつかないもの、自分のニーズの外にあるものに触れられる。そういう可能性があるというのは、こういう上映会のいいところだと思います。巷にはあまり無い何か妙なものとか、すごく切実なもの、予想以上に血の通ったものが見られるかもしれません。もちろん、ただそれだけではお客さんは満足しないぞということも踏まえつつ、僕は映画を創っていますので、ぜひ一度、観に来ていただきたいと思います」



■高橋明大(たかはし・あきひろ)PROFILE

2002年、日本大学芸術学部映画学科卒。05年、自主制作の短編『Love me more』が黒澤明記念SFC04-05の最終選考にノミネート、翌年には「Toronto Japanese Short Film Festival 2006」に招待される。また、日産とBS日テレのオムニバス企画、『WINGROAD MOVIES』中の一篇『ロード・トゥー・アウェイゲーム』のシナリオを担当。07年、第11回水戸短編映像祭にて準グランプリを受賞した『最後の怪獣』が、翌08年の「第4回CO2オープン・コンペ部門」において最優秀賞を受賞。助成の権利を得て今年完成させた新作『ある光』で、「第5回CO2企画制作部門シネアスト大阪市長賞(最高賞)」を受賞する。
ブログ「世界 状況 けものみち」


『映画を作る映画祭=CO2』in東京'09襲来
2009年6月6日(土)~6月12日(金)

ユニークなインディーズ監督とその作品を世に送り続け、関西で驚異的な観客動員を誇るCO2(シネアスト・オーガニゼーション・大阪エキシビジョン)が、昨年に続いて今年も個性溢れる長編作品+イチオシの作品を一挙上映!

★毎晩終映後、上映作監督とゲストによるトークショー開催!詳細はコチラから
劇場:シネマ・ロサ(東京都豊島区西池袋1-37-12)
CO2公式サイト


『水戸短編映像祭セレクション』
2009年6月13日(土)~6月19日(金)

才能あふれる若きクリエイターたちに光をあて、映画界への一歩を歩んでもらうため活動を続け、今年で13回目を迎える水戸短編映像祭が東京上映開催!今回の特集では、第11回(07年)と第12回(08年)の受賞監督たちの受賞作品ならびにその前後に制作された諸作を上映します。

★舞台挨拶トークショーほかイベント開催!詳細はコチラから
劇場:シネマ・ロサ(東京都豊島区西池袋1-37-12)
水戸短編映像祭公式サイト


「アップリンク・デジタル・ムービーワークショップ」説明会実施中

映像制作の核となる企画力、アイデア力、実行力を育みながら映画・映像制作を行うワークショップ。現在、7月1日スタートの第22期参加者を募集中!!
★詳しくはコチラから

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