(左)三木聡監督『インスタント沼』 (C)2009「インスタント沼」フィルムパートナーズ、(右)ディアーヌ・キュリス監督『サガン ―悲しみよこんにちは―』 (C) 2008 ALEXANDRE FILMS / E. George (C) 2008 ALEXANDRE FILMS / C. Schousboe
人間は考える葦なのだ!!!と考えすぎても何も始まらず、考えが足らんので、行動あるのみなのだ!!!と、出たとこ勝負!!!とそんな場合に、同時に日本映画『インスタント沼』(三木聡監督作)とフランス映画『サガン ―悲しみよこんにちは―』(ディアーヌ・キュリス監督)に出会っちゃいますた。これは大変なのだ!!!
『インスタント沼』は、貧乏な雑誌編集者ハナメ(麻生久美子)の作ってる雑誌が廃刊になったり、とにかく立て続けに不幸が起り、まさに行動すれば起ってしまう「歩くハルマゲドン」であるが、そんな自分に嫌気がさし、身辺整理をするのです。映画が始まった瞬間から、非常にナンセンスなオモロイだけのカットが「無駄」に積み上げられ、生きてるカッパもちらっと出てくるぞ。テンポが凄いのでした。ツッコム暇がないのだ!です。そして、オモロイ…。そしてハナメはある手紙を見つけ…、なんと!!親父さんがちがうのです!!と書いてるのだ!!もーピカソもビックリな内容!!見えないものが見えるハナメのオカン(松坂慶子)もぶっ倒れ意識不明になっちゃったり、あー麻生さんのポニーテールはかわゆい!とトキメイて閃いたりしたら、ハナメは手紙に書いてあるオトン?の住所の所に向かうでした。
『インスタント沼』 (C)2009「インスタント沼」フィルムパートナーズ
で、その頃、サガン(シルヴィー・テステュー)は、第二次世界大戦が終わってホッとした頃、18歳にして『悲しみよ こんにちは』を出版するのです。しょっぱな、老けメイクの閉じた瞳のサガンが映るのです。で、ビックリした後、18歳のあの頃にもどるのです。とにかくテーマの音楽が暗い!!そして美しい!!そして、シルヴィー・テステューは38歳で18歳のサガン役もやってしまうところが、良いのです。サガンの人生を120分で描くので、とにかく無駄がない、そしてテンポが良いのです。あっという間に、大金持ちになって、結婚して、子供生まれて、離婚してと、ハヤッ!!と、ツッコムのである。
で、その頃ハナメは、オトン?(風間杜夫)のやってる骨董屋で、パンクスのガス(加瀬亮)に出会うのである。これで、安心!!なのだ!!相方(ツッコミ)が見つかるのだ!!にしても麻生さんと加瀬さんの反応がとっても自然なのです。ちゅうか、この二人でないとこの映画無理なのだ!!とくにガス役は、ツッコミ役なので、間が大変である。オトン?は電球という役名だ!!
電球のところに、飯山和歌子(相田翔子)が訪れて、はーー、アイドルの理想がそこにあるのです!!電球のおっさんの「人生うまくいかない時は、蛇口をひねれ」という金言によりハナメの人生はV字回復な勢いになるのです。
その頃サガンは衝動的に、そして、自由に生きすぎて借金と麻薬の日々ですねん。一人で街をタバコふかして歩くサガンは孤独すぎて胸に沁みるです。独りでいれないからより孤独になるサガン。時間と説明を省略してゆくカットの流れは、もっと無駄があってもよいのになーと思うくらいしっかり計算し構築されているのです。
『サガン ―悲しみよこんにちは―』 (C) 2008 ALEXANDRE FILMS / E. George (C) 2008 ALEXANDRE FILMS / C. Schousboe
その頃ハナメは、電球のおっさんに100万円で古い蔵の鍵を、めちゃ宝があるから買ってくれと頼まれ、買ってしまうのです。でガスと一緒にいって、なんと!!!!!(中略)なのだ!!以下次号につづかないです。で、サガンは、全てをなくしてしまう…。
家政婦との最後の見つめ合いは、心にささるのです。閉ざされた瞳が、消え行く瞳の光が、安心になるのです。けどサガンの書いた小説、戯曲は今も在るのです。生き方が作品だけだったのでなく本当に文才と、少しユーモアがあると思ったのです。サガンの映画でこんなに心が動くという事は、さぞかし実物のサガンはものすごい魅力だったのだなーと思うのでした。もし、実物に会えば、目が合った瞬間にあなたの沼で休みたいと誰もが思うはずである。
その頃ハナメは、ガスと一緒に古い蔵を探しに行って色々あって、ハナメは泣いたり、ガスは疲れて石の上で昼寝したり、ただただナンセンスでオモロイだけでなく、あ!!!!イモ蒸し料理して書いてたら、忘れて焦げた!!!で、無駄なようでいて、実は三木監督が全て計算し、意味があるのです。エンドロールの最後の最後まで、気がきいてるのだ!!!
結論、意味がないと不安だけど、全てには、価値があるとおもうのです。笑いの涙か、悲しみの涙で、心が洗えるどちらも好きな作品なのでした。
【両作品を書くための無駄なキーワード】
『インスタント沼』
赤塚不二夫大先生の漫画、ギャラクシー銀河(漫画)、ザビエル(髪型)、初期の鈴木志郎康、ゲルニカ(絵)、キキ・スミス(ポスト・ヒューマンの頃)、ムジナ(漫画)、夢野久作全集11、少年探偵団、ナイル(デスメタル)、プロレススーパースター列伝(漫画)、「神は妄想である」ドーキンス、ミッシェル.ゴークラン、アニマ、アニムス、ポーグス、熊楠…天保山登りたい。
『サガン-悲しみよこんにちは』
泥棒日記、シモーニュ・ウ゛ィーユ、メデリン(メデジン)、「好き?好き?大好き?」のR.D.レイン精神医学の本、グレン・グールド、ガルシア・ロルカの詩による合唱曲「墓碑名」、フランソワーズ・ヒガン(ギャグ)
(文:松本章)
【過去の映画コラム】
第1回 変態群像劇『バサラ人間』(2009.3.25)
第2回 『buy a suit スーツを買う』『ニセ札』(2009.4.10)
『サスペリア・テルザ 最後の魔女』(209.5.1)
『インスタント沼』
2009年5月23日(土)テアトル新宿、渋谷HUMAXシネマほか全国ロードショー
近年、海外でも続々と特集上映が組まれている注目の三木聡監督のオリジナル最新映画『インスタント沼』がついに登場。この魔可不思議なタイトルに隠された意味は物語を見ないと分からない。想像を上回る仕掛けが随所に巧みに散りばめられており、お洒落で、笑えて、心動かされる映画になった。三木聡が隅々まで磨きあげた最高傑作!
脚本・監督:三木聡
出演:麻生久美子、風間杜夫、加瀬亮、松坂慶子、他
2009年/日本/120分
共同配給:アンプラグド/角川映画
公式サイト
『サガン ―悲しみよこんにちは―』
2009年6月6日(土)Bunkamuraル・シネマ、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー
18歳で文壇に華々しいデビューを飾り、生涯を通して自由人であった小説家の人生を追う人間ドラマ。破天荒な言動で世間を騒がせつつも、実は孤独で繊細な彼女の真の姿に迫る。まるでサガンの生き写しのような主人公を演じるのは『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』のシルヴィー・テステュー。その親友を『ランジェ公爵夫人』のジャンヌ・バリバールが演じている。華やかな社交生活の裏に隠された、彼女の人間的魅力のとりこになる作品。
監督・脚本: ディアーヌ・キュリス
出演:シルヴィー・テステュー、ピエール・パルマード、ジャンヌ・バリバール、アリエル・ドンバール、他
2008年/フランス/122分
配給:ショウゲート
公式サイト
■松本章(まつもと・あきら)PROFILE
1973年生まれ、伊勢男子、現在西成在住。熊切和嘉監督全作品、山下敦弘初期作品の映画音楽をプロデュース。最近は、熊切和嘉監督『ノン子36歳(家事手伝い)』(全国上映中)、内藤隆嗣監督『不灯港』(7月上旬公開予定)、山﨑裕監督『トルソ』の音楽を手掛けた。特技は、直感。なりたいのは、音楽の、あつかいにくい新人?でした。
マイスペース
ブログ・新今昔日記第二巻